米経営陣がソーシャルメディアを使う理由・使わない理由
2009/09/11 07:50
ブログやSNS、掲示板、YouTubeなど多数の人が色々な意見やコンテンツを寄せて情報を共有する、CGM(Consumer Generated Media、利用者が内容を創って行くメディアのこと)と「集合知」「ナレッジマネジメント」を混ぜ合わせたようなIT系サービスのことを総称して「ソーシャル・メディア」と呼ぶ。気軽なところではブログや【アメリカの上位企業100社のうち過半数は「ツイッター」を広報メディアとして活用中】などで紹介した【ツイッター(Twitter)】などが名を知られているが、企業そのものあるいは企業の経営陣が活用する事例も増えている。先日【emarket】ではアメリカ企業の経営陣が、それにソーシャル・メディアについてどのような意見・感想を持っているかのレポートを掲載していた。ここにその結果をかいつまんで紹介することにしよう。
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このデータはリサーチ会社の【Russell Herder】と【Ethos Business Law】が2009年8月に発表したもので、フルのレポートは【こちらになる(PDF)】。経営・市場調査・人事担当の管理経営陣438人に問い合わせた結果、と記されている。
まずは、ソーシャルメディアに何を求めているか、期待しているかについて。会社のブランドイメージ確立は良くある話だが、それと共に対外関係強化にも期待を寄せているようだ。また、自社のイメージを展開していくこと、あるいは直接的に求人活動にとってプラスとなるような効用も期待をしている。
米企業経営陣がソーシャルメディアに見出だすもの(2009年7月)
一方で、実際にソーシャルメディアを利用している経営陣は、ブランドイメージの構築を頭に入れている。
米企業経営陣がソーシャルメディアを利用する理由(2009年7月)
相互提供による情報共有がソーシャルメディアの最大の特徴ではあるのだが、ブランド構築という半ば「企業側の事情」が色濃くにじみ出ている目的がもっとも大きいあたりが興味深い。
もちろんすべての企業がソーシャルメディアを用いているわけではない。使っていない企業に対し、「なぜ使わないのか」その理由を複数回答で尋ねたところ、もっとも多い回答は「あまりよく知らない・分からないから」で過半数に達していた。
米企業経営陣がソーシャルメディアを利用する理由(2009年7月)(使っていない企業限定)
「セキュリティ上の問題」「生産性低下」はソーシャルメディアだけでなくインターネット関連のサービスでは避けて通れない問題。事実上これらのリスクをゼロにすることは不可能だが、色々な手だてを講じてその確率を下げ、得られる便益と天秤にかけて「ゴーサイン」を出させるだけのパフォーマンスを確保することは十分に可能だ。
気になるのが「あまり良く知らないから」。これらはいいかえれば「啓蒙不足」に他ならない。インターネットにしても携帯電話にしても、どんなに便利で面白いツールであるかは知っていても、具体的に自分にとってどのような効用が得られるのか、どんなことが出来るのかが分からないと、興味関心は沸かない。どんなに高性能な電子レンジが登場しても、その機能で「自分はどのような調理法が使えるのか、どんな料理が作れるのか、これまでの自分の食生活にどれほどの快適さ・広がりを提供してくれるのか」が分からなければ、深い興味を持たないのと同じことである。
今件はあくまでもアメリカの経営陣の話だが、日本でも状況はさほど変わらないだろう。ソーシャルメディアの導入を頑なに拒む経営陣がいたとしても、ソーシャルメディアを普及する協会や宗教があるわけではないので、そのような立ち位置の人たち・団体からの「布教」を期待するわけにはいかない。現場や中間管理職の人たちでソーシャルメディアの導入を目指している一方、経営陣が及び腰だった場合、「ソーシャルメディアがどんなものなのか」よりも「何が出来、何が出来なくて、どんなメリット・デメリットがあるのか」具体的な内容を啓蒙する必要がある。
何しろソーシャルメディアも道具のひとつにすぎない。経営陣から見れば、立て看板、自社営業用車両や社員食堂の導入と同レベルの話でもあるからだ。
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