「見ろ、人がノミのようだ!」な広告
2009/09/06 09:21
「見ろ、人がゴミのようだ!」は『天空の城ラピュタ』の名ゼリフの一つ。「ゴミ」かどうかは別として、遠目に人々が行き交う有様を見ると、顕微鏡越しに活性化する細胞内部を見ているような、不思議な感覚を得るのは確かなお話。その感覚は色々なものに例えることができるが、その一つを上手に利用したのが、犬猫用のお薬「フロントライン」の広告だ(Coloribus.com)。
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犬猫用ノミ取り薬「フロントライン」の広告
大型商業ビルには良くある構造の、ビル内部の吹き抜け型広場。そのど真ん中に巨大な(225メートル四方)、かゆくてたまらなそうにしている犬の写真とメッセージを添えた広告を床に貼りつける。床そのものを歩いている人にとっては大きすぎて「何か描いてあるな」「犬の絵かな」くらいにしか見えないが、広場周囲を取り囲む通路や階段など上部から眺めると、2枚目の写真で分かるように「かゆがっている犬自身や周囲を、無数のノミ(に見える人間たち)が行き来している」のように見える。
メッセージは「あなたの愛らしいワンちゃんから、彼らノミたちを取ってあげましょう……フロントライン」。せかせかと動くノミ(に見える人間)とかゆくてたまらなそうな犬の姿を見ているうちに、ノミが一杯でかわいそうな愛犬が連想され、「フロントラインでノミをとってあげようかな……」と犬の飼い主に動機づけをさせるわけだ。
床そのものを歩いている人(左)はほとんど気がつかないが、上から見ると(右)歩いている人たちが広告を演出しているパーツとなっているのが分かる。
この広告が興味深いのは、見る視点を変えないとメッセージが伝わらないこと、そして何より広告の上を歩いている人が、無意識のうちに広告の演出の一部として参加させられていることだ。下で「床に何か描いてあるな」と思った人がエスカレーターなどを用いて上に上がり、下を眺めると「ああ、なるほど!」と意味が分かり、自分自身も今さっきまで「ノミ」の一つだったことが理解できる。
挙動のリアルさと「自分がそこに居たこと」の実体験が思い起こされ、より深い印象を受けることができる。あるいは一匹一匹の「ノミ」にとっては、寄生している動物のことなど気にも留めないという、本物の「ノミ」の心境まで理解するかもしれない。
場所、そして広告の内容が限定されることから、応用しにくい事例ではある。しかし「参加型広告」として素晴らしい発想の広告には違いない。
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