「触ってごらん、音が出るよ」なポスター

2009/08/22 17:09

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Saxsofunnyのサウンド広告イメージ実際の現場には行けないけれど、その臨場感を出したいとき、似たような効果音を作り出して場を想像させる手法がある。小豆をザルに入れて左右に大きく振って音を出し、波の音を模すとか、うちわにビーズやボタンを糸で取り付け、左右に震わせて雨の音を真似るのが良い例。今ではデジタルサウンドによる合成ですっかりマイナーなものとなってしまったが、今でも「似た音で特定の情景を頭に思い浮かべさせる」のが有効なイメージ手法であることには違いない。COLORIBUSで紹介されていたブラジルの広告は、それをうまく利用した「なるほど!」と感心させるものだった。



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梱包材の「ぷちぷち」がそのままタイプライターの音に。
梱包材の「ぷちぷち」がそのままタイプライターの音に。

これはブラジルの効果音などを作成する会社【Saxsofunny】が自社の宣伝のために、広告代理店【DM9DDB】に依頼して作ったもの。荷物運搬などでよく使われるビニールの梱包材、いわゆる「ぷちぷち」の上にタイプライターが描かれ、それに触れている人の手が写し出されている。「ぷちぷち」をつぶしていく音と、タイプライターの音が一瞬のうちに頭の中で再生され、イコールで結ばれる。そして下にある社名と「すべてのイメージには音がある」を目にし、「ああ、この会社はリアルな情景を頭に写し出す、素晴らしい音を創り出す会社なのだな」とアピールすることができる。

先の【擬音をそのまま形にしてみたら……】では擬音をそのまま文字列にし、その文字列を情景内に埋め込むことでその場の「音」を頭の中に再生させた。今回のポスターは少々方法・手段が違い、「身近な実音の脳内展開(「ぷちぷち」)」「類似音の再生(タイプライターのタイプ音)」というプロセスを踏ませ、会社の業務内容をアピールしている(もちろん実際にSaxsofunny社がぷちぷちを潰してタイプライターの音を録音しているわけではないが)。

薄いアルミ(左)とトレーシングペーパー(右)。それぞれ雷と炎をイメージする音が頭に浮かぶ
薄いアルミ(左)とトレーシングペーパー(右)。それぞれ雷と炎をイメージする音が頭に浮かぶ

同社では同様に、薄手のアルミを使って雷を、トレーシングペーパーを使って炎の効果音をイメージさせている。それぞれ目を閉じてその情景を思い浮かべれば「ああ、あの音か」と分かるはずだ。

効果音を別の素材で創り出す手法を用い、ある特定の情景を思い浮かべさせ、自社の事業をも説明する。非常に巧みで、なるほどと思わせる広告に違いない。



……と思ってこの広告の素晴らしさに喜んで検索していたら、もっと喜んでしまうような素材を見つけてしまった。


Saxsofunnyの動画。

この広告、静止画……というよりポスターだけでなく、カンヌ国際広告祭にも出典していたようで、その動画が公開されていた。あるいは上記の静止画像は「ポスターを触っている情景を写し出した広告」なのではなく、「広告ポスターを紹介している一場面」で、本当にこれらのポスターが貼られていたのかもしれない。

ともあれこの動画、おそらくはブラジルのテレビででも放送されていたのだろう。効果音を実際に耳にでき、その音がアルミやトレペ、ぷちぷちで創生されていく様子をみると、「なるほどなるほど」と感心してしまう。

日本では効果音の制作プロダクションが広告を打つことはめったにないし(【総務省、実在する具体的事例を挙げてテレビ局の「制作会社いじめ」を指摘・状況改善を要請】にもあるような、金を握っている部門による「モノづくりの現場」に対する金銭的な評価の低さが一因かもしれない)、広告費そのものも削減されていることもあり、ぱっとした広告に出会う機会はずいぶんと少なくなった。ただ、今回の広告のように、素晴らしいアイディアをもちいることで効果的に(コストパフォーマンス的な、という意味も含めて)アピールする手法はいくらでも創造できるはず。そしてそういった「素晴らしいモノ」に対してこそ、賛美・評価・称賛の意味も込めて、相応の報酬で報いるべきではないかと思うのだが、どうだろうか(公正な情報公開と競争システムが働いていれば、高技術を持った職人にはいくらでも高額の依頼が舞い込むはずなのだが……)。



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