電通と博報堂の第1四半期決算をもう少し詳しく検証

2009/08/13 12:30

このエントリーをはてなブックマークに追加
グラフ化イメージ先に【電通と博報堂の第1四半期決算】で[電通(4324)]と【博報堂DYホールディングス(2433)】の2010年3月期(2009年4月-2010年3月)第1四半期決算短信を元にした、おもな財務指標の動向をグラフ化した。両社共決算短信と一緒に各種解説資料も公開しており、そこには各業種別の売上高推移が事細かに記されていた。そこで今回はそれらのデータをグラフ化・数値化することで、日本の二大広告代理店の売上動向を通じて、業種別の企業広告出稿状況を垣間見ることにする。



スポンサードリンク


まずは電通(単体、以下同)の業種別売上高前年同期比・構成比。業種を売上高が大きい順に並べているが、すべての業種でマイナスを示しているのがわかる。つまり電通の区分上では、すべての業種区分で広告出稿が減少したということになる。また前年同期比という観点では、自動車やその関連品、金融・保険の業種の下げが著しい。ただしこれらの業種は全体に占める売上高がさほど(といっても5%を超えているが)大きくないのも特徴。後述するが、むしろ売上高そのものが大きい情報・通信の下げの方が痛手。

電通(単体)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高(前年同期比)と売上高構成比
電通(単体)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高(前年同期比)と売上高構成比

同様のグラフを博報堂(グループ、以下同)でも生成する。博報堂側資料では業種区分がもう少し細かいのだが、電通との比較を容易にするため、同一区分業種以外はすべて「その他」にまとめ、さらに並び方も電通のそれと同じにした。厳密には業種区分に配される企業に違いが生じている可能性があるが、大勢を見る分には問題はない。

博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高(前年同期比)と売上高構成比
博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高(前年同期比)と売上高構成比

電通の業種区分の順番と同じにしているため、グラフが煩雑としているが、電通と同じく自動車・関連品の下げ率が大きい一方、金融・保険の下げ率が小規模にとどまっているのが特徴。また、薬品・医療用品ではプラスを見せている。

せっかく業種を合わせたので、電通・博報堂の業種区分別売上高前年同期比を併記したグラフを生成する。

電通(単体)と博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高前年同期比
電通(単体)と博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高前年同期比

自動車・関連品や情報・通信部門は両社とも大きくその割合を減らしているが、それ以外においてはかなり違いを見せていることが分かる。それぞれの代理店の得意・不得意分野や、クライアントとの相性、クライアント単位の事情が反映された結果だろう。また、薬品・医療用品分野では株式においてもディフェンシブ銘柄として有名なように、景気後退期にも比較的手堅い動きをしていることが見て取れる。

最後に独自の指標値を算出する。それぞれの業種区分における売上高前年同期比の変動分(%)と今期の売上高構成比(%)を乗じ、それに100をかけた「減少による売上高全体に対する影響値」を目安的に作ってみる。単位としては「%」を用いるべきなのだが、少々違和感を覚えるのでそのままの値を記した。要は他の業種との差異の確認、比較ができればよい。

電通(単体)と博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高前年同期比による影響値(前年同期比×売上高構成比×100)
電通(単体)と博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高前年同期比による影響値(前年同期比×売上高構成比×100)

「その他」は具体名を挙げた業種以外全部詰まっているのだから仕方ないとして、電通では「情報・通信」「自動車・関連品」「金融・保険」「飲料・し好品」、博報堂では「自動車・関連品」「飲料・し好品」「情報・通信」が大きな影響を与えていることが確認できる。また、電通と博報堂の体質の違いも見えてきて興味深い。



電通と博報堂は当然別会社であり、付き合いのある・お得意様の企業、得意とする分野も異なる。よって、同じ広告代理店でも業種によって売上高や前年同期比の変動率がまったく異なるのも当然といえる。下記は今回の該当期における両社の業種別売上高構成比の比較だが、それぞれのクライアントや売上高の違いが見えてくる。

電通(単体)と博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高構成比
電通(単体)と博報堂DYHD(グループ)の2010年3月期・第1四半期における業種別売上高構成比

とはいえ、博報堂の薬品・医療用品などの一部例外を除けば、両社ともに昨今業績が大変な業界からの広告出稿・売上が減少している傾向は否めない(たとえば自動車やその関連品)。さらに【民放連曰く「諸君らが愛してくれたテレビの広告費は減った。何故だ!?」】などにもあるように今世紀に入ってから広告の出稿先である4大既存メディアに対する「媒体力」の減少ぶりが、いっそうクローズアップされている以上、景気の低迷と合わせて、今後の見通しは決して明るいとは言えない。

両社とも短信に表記されているように、情勢を冷静に踏まえて必死に改革を推し進め、状況の改善を模索している。その努力が実を結び、数字上に改善がみられるのはいつになるだろうか。その日の到来を心待ちにしたいところだ。



スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2025 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|X(旧Twitter)|FacebookPage|Mail|RSS