【更新】日本のブロードバンド環境の整備ぶり
2009/08/12 07:40
先に【インターネットと携帯電話の普及率を世界の他国と比べてみる】で、2009年7月10日に総務省から発表された[情報通信白書]を元に「日本は他国と比べるとインターネットや携帯電話の普及率がいま一つのようだ」的なデータを掲載したところ、「このデータだけだと『日本はインターネット後進国』のように見えるけど、通信速度や利用料金の比較をしたら、日本はトップに躍り出るはずだ」との意見をいただいた。実際、情報通信白書でも「基盤は整っているが個々への端末普及・利用者の増加・安心という面では立ち遅れている」という趣旨の話が掲載されており、少なくとも国レベルでのインフラではトップ(レベル)にあることは間違いない。そこで今回は、白書などからその様子がうかがえるデータをいくつか抽出してみることにする。
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情報通信白書では各所で総務省発表の「ICT基盤に関する国際比較調査」(2009年)から抽出したとするデータが掲載されているが、該当する資料はウェブ上に公開されていないようで(※もし見つけたら当方までご連絡願いたい)、類似の資料は2008年3月公開の[日本のICTインフラに関する国際比較評価レポート]しかない。そこで次からのグラフは、情報通信白書の掲載データをそのまま再構築する。
まずは情報通信の「基盤」(利用料金・高速性・安全性・モバイル度・普及度・社会基盤性)の総合評価を偏差値化したもの。国際機関などですでに公開されている最新データをそのまま利用した上で偏差値化したものだが、ここでは日本が主要7か国中トップとなっている。
情報通信の「基盤」に関する国際ランキング(偏差値)
続いて基盤に関連する指標別の偏差値を各国ごとにグラフ化したものだが(これは元データがないのでそのまま抽出)、ブロードバンド料金・光ファイバ比率・ブロードバンド速度・パソコンのボット感染度(安全性の高低について。感染台数が少ないほど偏差値が高い)・第三世代携帯電話の比率の点で、トップについている。
情報通信の「基盤」に関する指標別の偏差値
一方、【インターネットと携帯電話の普及率を世界の他国と比べてみる】で指摘されているように、個人個人のインフラ到達割合において重要な各種普及率は低いままにとどまっている。
さらにこれを、各項目についてトップの国と日本の値それぞれについてグラフ化したのが次の図(上は元資料から抽出、下は棒グラフに再構成したもの)。
情報通信の「基盤」に関する指標の1位国と日本の比較(偏差値)
いわゆる「ラストワンマイル」に加え「個人の手元」までの部分が立ち遅れているようすがわかる。
最後にブロードバンドの品質について。これは資料中においてイギリス・オックスフォード大学とスペイン・オビエド大学が共同で2008年9月に発表した「ブロードバンド品質スコア」こと「BQS」のデータが掲載されている。これはダウンロード速度、アップロード速度、遅延時間に関する3つの指標を用い、欧州、北米、OECD加盟国、BRICsなど42か国のブロードバンド品質を評価した結果のもの。詳細データは[こちらに掲載されている]が、ここにおいても日本のブロードバンド品質スコアはずば抜けてトップであることが記されている。
ブロードバンド品質スコアの国際比較
ブロードバンド品質とその普及率のマトリックス図
特に後半の図を見れば分かるように、他国から品質そのものは抜きんでているものの、普及率がそれに伴わずにアンバランスな状態にあることが分かる。
「ブロードバンド品質スコア」の資料では日本について「政府の政策で推し進められた光ファイバーの普及と競争による技術革新で、ブロードバンド環境が高度に推し進められた」とコメントしている。また、情報通信白書でも「日本が世界最高水準の情報通信基盤を誇るという評価でほぼ共通していると考えられる」と言及しており、大まかなインフラの観点では冒頭でふれたように、日本は間違いなく「世界一のポジションにある」と考えてよい。
しかし各住宅までのパイプや
各家庭内の蛇口が十分に
普及していない状態。
打開策は山ほどある。たとえば【携帯電話でのインターネット利用率】などでも触れているように、日本では高齢者のネット関連情報・端末への普及の遅れが指摘されている。これを解決する手立てを強力に推し進めれば(単に端末をばらまくのではなく、教育や啓蒙、法令の整備、利用することがメリットとなるような各種税制優遇措置にサービスの提供などなど)、問題解決の糸口となるに違いない。大規模な雇用も創出されるし、プラスの面が多いようにも見えるのだが、どうだろうか。
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