太陽光発電機器導入住宅はまだ3.0%、借家に限れば0.5%のみ(2014年)(最新)
2014/08/06 14:30
先の震災以降住宅設備の中でも特に注目を集めるようになったのが、太陽光を利用した発電機器。発電効率はまだ低く、住宅内で使うすべての電力を恒久的にまかなうには至らず、また初期導入費用の高さや耐久年数との兼ね合わせを考慮した上でのコストパフォーマンス、生産状況まで考慮した場合の環境負荷など、多種多様な問題提起がなされているが、利用時における電力の節約が出来るとの魅力は大きく、新築住宅を中心にこぞって導入が進めれられている。この太陽光発電機器の導入状況について、総務省統計局が2014年7月29日に発表した、2013年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果から確認をしていくことにする(【発表ページ:平成25年住宅・土地統計調査】)。
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太陽光発電設備の普及率は3.0%
今調査の調査要項は先行掲載した記事【住宅の空き家率は13.5%で過去最高に】を参考のこと。
太陽エネルギーを活用して住宅内に取り入れる仕組みとしては、以前は費用対効果・技術上の面から温水機器が主流を占めていた。しかし昨今の技術革新により、太陽電池の電力変換効率と低価格化が進み、補助金制度も整備されることで、太陽電池設備の設置の意義・有効性が高まりつつある。特に震災以降は電力需給問題も絡み、世帯ベースでも積極的な導入が推し進められ、住宅供給側でもセールスポイントの一つとして重要視している。
それでは実際に、太陽光発電による発電機器が設置された居住用住宅はどれ位存在しているのだろうか。戸数でカウントすると2013年時点で156万8000戸。全体(居住者が常時いる住宅に限る。別荘のような一時的住宅や空き家は除く)に占める比率では3.0%との状態である。
↑ 太陽光を利用した発電機器がある住宅数(万戸)
↑ 太陽光を利用した発電機器がある住宅(割合)
「低価格化・効率向上はこの数年の話なこともあり、普及率はまだまだ低レベルにとどまっている」とは2008年時点のデータが確認された時のコメント。冒頭でも触れた通り、その後震災という特殊起因が大きく影響し、太陽光発電機器の普及は大幅に促進されることとなった。同じ5年間の伸び方を見ても、2003年から2008年までと、2008年から2013年までにおける違いが、一目で分かるグラフとなっている。無論この類の技術・普及は通常の状態でも累乗的・加速度的に推移するものだが、震災が大きな後押しのきっかけとなったことは、誰もが否定できまい。
しかし一方で、それでもなお総数で160万戸足らず、全住宅比率で3%に留まっている現状を見るに、こちらも冒頭で解説した通りさまざまな問題がハードルとなっている実態を改めて認識させる。一部では「一度取り付ければフリーメンテナンスで永久に電力が低コストで沸いてくる」と誤解されがちな太陽光発電だが、そのような領域に達するまでにはまだまだ技術の進歩が足りなさすぎる(。加えて「フリーメンテナンス」なる設備が存在するのはゲームの中だけの話)。
太陽熱温水機器や二重サッシなどはどうだろうか
比較的容易な技術で作られており、太陽光発電機器が普及を始めるまでは「太陽エネルギーを取り入れる装置」として重要視されていた「太陽熱を利用した温水機器」については、普及率は太陽光発電装置より高い。しかし太陽光発電機器の普及と相反する形で、利用率は漸減している。
↑ 太陽熱を利用した温水機器などがある住宅数(万戸)
↑ 太陽熱を利用した温水機器などがある住宅(割合)
明確な言及は資料上には無いが、太陽光発電機器も太陽熱温水機器も同じ屋根につけることが一般的であることから、新設住宅においては「太陽光発電機器」が優先されるのと同時に、既設住宅における「太陽熱温水機器」から「太陽光発電」へのシフトが起きているものと思われる。
また、太陽光発電機器などと同じように「住宅に設置する消費電力をはじめとしたエネルギーの節約の仕組み」としては、「二重サッシ・複層ガラス」が代表的。これについては、全体で1/4、持ち家に限れば3戸に1戸の割合で導入されていることが明らかになっている。こちらは震災の影響はあまりなく、順調に、一定割合ずつで増加しているように見える。
↑ 二重サッシ又は複層ガラスの窓がある住宅数(万戸)
↑ 二重サッシ又は複層ガラスの窓がある住宅(割合)
部屋の密閉性による結露の問題もあり、すべての住宅で導入するわけにはいかないが、太陽光発電機器との競合性は無いので(二重サッシは屋根にはつけない)、今後も同様のペースで順調に整備浸透は進みそうだ。
気になる動きとしては、今回取り上げた3項目すべてにおいて、「持ち家」に比べて「借家」の普及率が低いという実態。貸し手からすれば「余計な費用がかかる設備をつけると、空き家状態におけるリスクが高まる」とのデメリットがあるからなのだろう。しかし居住者の視点で考えると、エネルギーの節約≒光熱費の節約は、それだけ賃貸住宅としての魅力を増すものとなる。
現状においてすでに賃貸住宅の客取り合戦が激化している状況を鑑みるに、賃貸住宅でも省エネ部門の充実が、十分以上に検討する必要が出てくるに違いない。
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