高齢化で進むバリアフリーの普及率は過半数へ、手すり実装住宅は4割超(最新)
2020/02/20 05:28
単純に高齢者人口の増加に留まらず、その中でも足腰が弱った人の数が増え、平均世帯人数が減少、さらには既存住宅の建て替えやリフォームへの動きの活発化など、多様な条件の重なりから、高齢者などに配慮した住宅設備、いわゆる「バリアフリー」への注目が集まっている。総務省統計局が2019年4月26日に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果によると、何らかの形で「バリアフリー」を備えた住宅は2726万9600戸となり、居住者のいる住宅に占める割合は50.9%に達していることが明らかになった。5年前の2013年時点における同様調査の結果50.9%と比べると同率となる。ただし項目別に精査すると、手すりの普及率は向上しているものの、浴槽への配慮や室内の段差の措置などでは普及が遅れている、あるいは以前から比べて普及率が後退した状況も見受けられる(【発表ページ:平成30年住宅・土地統計調査】)。
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手すりは高めだが…主要項目別整備率
今調査の調査要項は先行記事【住宅の空き家率は13.6%で過去最高に(最新)】を参考のこと。
社会構造全体としての高齢化に伴う、世帯主自身あるいは構成員の高齢化で、新設住宅にバリアフリー(今件では「高齢者が難儀をしなくても住宅内設備を活用できるような配慮を施した設備や仕組み」を指す。グラフの項目では「高齢者などのための設備」)を施すものが増えている。また、リフォームで既存の住宅にバリアフリー設備を取り入れる需要も増加している。気軽に設置できるスタイルのものも多いため(ささいなミスや不具合が大きなトラブルを巻き起こす可能性もあるため、確かな品質のものを正しい施工の上で設置することが求められる)、ネット通販や日曜大工工具店でも、関連商品を多数見つけることができる。
それでは実際に、どの程度バリアフリーは浸透しているのだろうか。2018年の時点では現在居住者がいる住宅(空き家などは含まない)のうち、50.9%で何らかのバリアフリーが導入されているとの結果が出た。
↑ 高齢者などのための設備がある住宅の割合
主要項目別に見ると、手すりの普及率は比較的高く、これが全体のバリアフリー率を押し上げていることが分かる。一方で浴室への配慮や段差の無い屋内は2割で前回調査分からは減少。車いすに関する配慮の浸透割合は1割台でしかない。
高齢化に伴う肉体の衰えによって、自分の想定していた動きよりも鈍い反応しか身体が動かず、思わぬトラブルを引き起こすことは多い。ほんのわずかな段差でも、乗り越えられると思い普段の歩きのようにその場を通り過ぎた際に、つまづいてしまうこともある。そして転倒などによる骨折リスクは、高齢者の方がはるかに高い。
車いすへの配慮は利用している高齢者などそのものが少ないがための低い値とも考えられるが、浴室や段差への配慮は高齢者などがいるならば大抵の場合において必要な設備となる。もう少し高い整備率への上昇を望みたいところ。
住宅の建て方別で大きく異なるバリアフリー整備率
一方、バリアフリーの整備率を住宅の建て方別でみると、大きな差異が確認できる。
↑ 高齢者などのための設備別住宅の割合(住宅の建て方別)(2018年)
一戸建てでは今やバリアフリーがセールスポイントの一つとして業者側も必死にアピールしていることもあり、全体と比べて普及率が高めなのは理解できる。また既存の一戸建て住宅の保有者も、自分の家だからこそ(容易に移転するとの選択肢は取れずに)リフォームなどで対応する事例が多く、また将来も現在の住宅に住み続けることから、前もって整備をしておくことも多々ありうる。例えば「同居している祖父の足腰が少々心配になってきたので、早めに廊下や階段、トイレやお風呂などに専用の手すりを備え付けておこうか」といった具合である。
長屋建てや共同住宅などの賃貸系住宅では、導入が立ち遅れている。エレベーターがある、比較的高層の共同住宅では普及率がやや高いのが幸い。これは高層共同住宅=新設住宅が多い=高齢者への配慮があるといった、連動性によるところもある。
気になるのは「高齢者対応型共同住宅」とうたっている共同住宅で、実際に設備が備わっているのは3/4足らずに過ぎない実情。例えば浴室への配慮が4割足らずなど、「名前に偽りあり」と指摘されても仕方のない共同住宅が多数確認できること。「高齢者対応型共同住宅」の明確な定義はなく、あくまで住宅側でそのセールス文句を使っているだけで、実際には高齢者などのための設備は無いとの住宅が26.3%にも達しているのは、「看板に偽りあり」と評されても仕方がない。確率論的に3/4ほどのくじで住宅を選択するのは、少々リスクが高い感はある。
仮にそのような必要性に迫られたとしても、単に「高齢者対応型共同住宅」的な表記だけで飛び付くことなく、その内情を精査し、必要十分な設備が備わっていることを確認した上で、選択肢に加えるようにしたいものだ。
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