アメリカの「単純失業率」と「広義失業率」を示した地図
2009/07/30 07:45
先日巡回サイトの一つ、【ZAR大好きの忘ビロク2-金鉱株で恐慌突破】にて、【NewYorkTimes(NYT)】で2009年7月15日に掲載された、アメリカの各州毎の「単純失業率」と「広義の失業率」を示すマップが掲載されていた。アメリカの失業率についてはすでに【20%超えの地域も! アメリカの失業率現況を図で見てみる】やその後の各種報道などで伝えられているように、2桁に迫る勢い、とされている(5月時点で9.4%)。今回NYTで提示されたマップは、地域毎の失業率の違いや、計測方法の違いで失業率の値は大きく異なってくることが分かるものとして、チェックしておきたい内容といえる。
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まずは「単純失業率」。2009年4月から5月にかけての値。色が濃い週ほど、失業率が高い。
単純失業率
「20%超えの地域も! アメリカの失業率現況を図で見てみる」でも触れているが、昨今の普及は主に工業など第二次・第三次産業に大きなダメージを与えている向きが強い。とりわけ工業に強い地域(太平洋岸、五大湖周辺)で失業率が高めなのが見て取れる。
それに対し、もう少し「失業率」の定義を緩やかにした「広義の失業率(Broader definition unemployment rate)」で生成されたのが次の図。上の図と比べ、失業率そのものがかさ上げされていることや、工業地帯での失業問題の深刻さが改めて把握できる。なお計測時期は上記と同じ。
広義の失業率
元図の説明によれば、「単純失業率」は「過去4週間のうちに職探しをした人」から算出されるのに対し、「広義の失業率」は「フルタイムの仕事を探しているパートタイマー」「過去1年間に1度でも職探しをした人」も計算に含まれる。当然後者の方が「失職者」の勘定に含まれる数が増えるわけだ(求職断念者は計算には含まれない)。
詳しくは元図で確認してほしいが、たとえば例のカリフォルニア州では「単純失業率:11%」「広義失業率:20%」、五大湖の工業地帯を抱えるミシガン州では「単純失業率:13%」「広義失業率:22%」など、工業地帯や財政危機度の高い州で広義失業率が単純失業率の2倍近い値に跳ね上がっているのが分かる。
日本を対象にした数字でも良く話題にのぼるのだが、仕事のスタイルが多様化した現在において、「失業率」はその定義によって大きく結果が変わってくる。一部には「算出方法が違う、こちらの計算だともっと値が高い。だから実情を隠ぺいしている」という陰謀説を振りかざす人もいるが、そもそも論として過去のデータと比較する際に出来得る限り計算方法を踏襲していくのは当然の話であり、「この計算方法だと数字が高まるからこっちを使うべき」という考えは、それはそれで問題がある。
今件のNYT掲載の失業率マップにしても、「単純失業率」「広義失業率」それぞれの数字を認識した上で、どちらか一方に片寄って意識するのではなく、むしろ例えば「広義の失業率が単純失業率よりかなり増加しているので、フルタイムの仕事が本当に少なくなっている」「職探しそのものを半ばあきらめて、過去一か月は求職活動をしていない人が多いのかもしれない」という状況把握の材料としてみるべきである。
なお【masayangの日記】の解説によれば、アメリカには失業保険給付について3段階の用意がなされており、一般の雇用統計で発表されるのはその第一段階であるという。現時点で約半数が第一段階の給付切れを迎えており、その後第二段階(緊急失業給付金・EUC: Emergency Unemployment Compensation)の受給者は過去最高を記録中、第三段階の「延長給付・Extended Benefits」も過去最高の受給者を記録中。それ以降は公的な失業手当を得る手立てはなくなるとのこと。
「単純失業率」「広義失業率」がそれぞれ10%・20%に達しようとしている現状で、第三段階目までの失業保険給付を受けざるを得なかった人たちが、新たな職につける可能性は残念ながら高くはない。失業率そのものの押し下げを図れるような経済・産業の活性化が無いと、状況の改善は見られそうになく、むしろ今後悪化する可能性の方が高い。第三段階を終えた失業者の数が今後増加の一途をたどるにつれ、アメリカの情勢がどのように変化するのか。経済の需給バランスの自動調整が働き、事態が改善に向かうのか、それとも…。今の時点では予想することは難しい。
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