【更新】アメリカの主要雑誌の広告費と広告ページの推移
2009/07/26 10:15


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MPAでは所属する雑誌の広告費や広告ページ数などを4半期ごとに公開し、その値の前年同期比も算出して提示している。古くは2000年あたりからデータが用意されているが、今回は件の「金融(工学)危機」による景気後退の影響が出始めた2007年第3四半期(2007年Q3)前後を含む2007年Q1から直近データのものを抽出することにした。
該当する雑誌は全部で11紙。先の「ビジネスウィーク」をはじめ、日本でもよく名を知られている雑誌という条件のもとに当方の独断と偏見で選ばせてもらった(MEN'S HEALTHはウェブ版を当サイトでよくチェックするから、という意味もある)。具体的にはBUSINESS WEEK、COSMOPOLITAN、ECONOMIST、FORBES、FORTUNE、MEN'S HEALTH、MONEY、NEWSWEEK、PLAYBOY、READER'S DIGEST、TIMEである。
まずは先の記事で色々と話題を呼んだ「ビジネスウィーク」を前回の記事の補完の意味もこめて。

BUSINESS WEEKの広告費前年同期比

BUSINESS WEEKの広告ページ数前年同期比
いわゆる「サブプライム・ローンショック」以前から広告ページ数・広告費の減少傾向見られており、金融市場・商品市場への関心が高まる中で少しずつ持ち直しの雰囲気が見られたものの、「リーマン・ブラザーズショック」で大いに打撃を受けてその後は低迷したままであることが分かる。チャート的には株価、というよりは原油をはじめとした各種素材価格の変動グラフに形が近い。
あくまでもこれらは広告費・広告ページの推移であり、雑誌そのものの利益を表しているわけではない。しかし雑誌の収益の大黒柱が掲載広告の広告費であることも事実。それを考えると、先の記事にあったように「1ドルの価値云々」も仕方ない面があるのかもしれない。
次にピックアップした雑誌において、同様に広告費と広告ページ数の推移をまとめて折れ線グラフ化してみる。

アメリカの主要雑誌の広告費前年同期比

アメリカの主要雑誌の広告ページ数前年同期比
雑誌全体の値を太い赤線で記してみたが、各誌毎の特性はあるものの、雑誌全体としては「広告ページ数は以前から減少傾向」「広告費は2008年に入ってから減少傾向」にあることが分かる。当初は「ページ数が減っているのに広告費が増えている」、つまり「小型広告主の撤退」「大型・高額広告への集中化」という、細かい広告がインターネット媒体に移行しつつある状況だった(たとえばカラーの見開き広告などは、非常にインパクトがあり、今だに「紙媒体」でしか得られない効果を期待できる)。しかし景気後退によって広告費が大幅に削減され、そのあおりを受けてさらなるページ数の削減だけでなく、広告費そのものも押し下げられたことがうかがえる。
また、個別でみるとたとえば「ECONOMIST」のように金融危機の発生以降もむしろ広告費・広告ページが拡大を続けていたものの、2009年に入るとさすがに広告主側のお尻に火がつき、勢いよく広告費・ページ数が減少しているものなど、「雑誌すべてが一様に景気後退の影響を同時に受けているわけではない」「個性的な動きを見せているものもある」と表現することも可能だ。とはいえ全般的には「広告の鈍化は2008年以降、特に後半期以降顕著なものになっている」とみることができよう。

情報媒体のオンライン化(効率化・低コスト化)が進むにつれ、既存の紙媒体のビジネスはますます難しいものとなっていく。景気が回復すれば幾分は広告も戻ってくるだろうが、メディアそのものの大きな動きがある以上、以前のような「広告枠が足りないくらい広告申込みが殺到しているヨ!」的な状況は起きにくくなる。
オンラインメディアというライバルが成長を続ける中、紙媒体の雑誌には「紙媒体だからこそできるもの、紙媒体でしかできないこと」を個性・特徴と位置づけ、それを伸ばして活かすような姿勢が求められることだろう。
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