信用取引利用・希望者でロスカットルールを定めている人は3割足らず
2009/07/08 07:43
【野村證券(8604)】の金融経済研究所は2009年7月2日、個人投資家の投資動向に関するアンケート調査とその結果の分析報告レポートを発表した(【ノムラ個人投資家サーベイ・2009年6月計測分、PDF】)。それによると、調査母体においては現在信用取引を行っている人は約1割に留まり、利用経験者・今後行いたい人をあわせても3割程度しかいないことが分かった。また、それら「信用取引利用者・予備群」のうち、損切りライン(ロスカット・ルール)を定めている人は3割に満たず、追加保証金とのにらみ合いで取引をする(つもり)であることも判明した。信用取引の使い方としては、ややリスクが高いようにも見える傾向といえる。
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今調査は1000件を対象に2009年6月22日から23日に行われたもので、男女比は71.6対28.4。年齢層は40歳代がもっとも多く31.8%、ついで50歳代が22.3%、30歳代が24.9%など。金融資産額は1000万円-3000万円がもっとも多く25.1%、200万円-500万円が20.5%、500万-1000万円以下が19.8%と続いている。1銘柄あたりの保有期間は2年から5年未満がもっとも多く33.4%を占めている。次いで5年以上が21.7%、1年から2年未満が16.8%。投資に対し重要視する点は、安定した利益成長がもっとも多く47.2%と過半数を占めている。ついで配当や株主優待が31.6%となっており、テクニカルや値動き、高い利益成長といった項目より安定感を求めているのはこれまでと変わりなし。
「信用取引」とは現金や持ち株を担保にして、資金を借りてさらに株を買ったり、株式を借りてその株を売るという、いわば「借金をして投資をする」手法。利子を支払う必要はあるが銀行などで借り入れするよりも利子率は低く、手持ちの資金・資産の何倍(通常は3倍前後)もの資産運用が可能になる。特に手持ちに無い株式を借りて最初に売り、値が下がったらその株式を買って返却したり現金払いをする「空売り」は、下げ相場において重宝される手法といわれている。
現時点で信用取引を行っている人は、全体の11.9%。過去に行ったことがある人、将来行いたい人も合わせた「信用取引経験者・予備群」は全部で31.1%となった。逆にいえば、信用取引を過去も現在も未来も行わない「現物主義者」は7割近くに達することになる。
信用取引の利用状況(2009年7月)
信用取引は運用資金の幅が広がる、将棋でたとえれば「持ち駒が増える」わけだが、その分リスクも高くなる。そのリスクを管理する上で筆頭に挙げられる「損切りラインの決まり」こと「ロスカット・ルール」については、どのように考えているだろうか。「信用取引経験者・予備群」で、しっかりとロスカット・ルールを定め、それに従って取引をしている人は3割足らずでしかなった。むしろ追加保証金(追証。担保評価額が下がり、追加の担保を求められるような事態)をロスカット・ルール代わりにしている傾向がある。
評価損に対する対応方針(2009年7月)
追証をロスカット・ルール代わりに使っていることも心配だが、それ以上に心配なのは「特に方針無し」という人が3割近くもいること。「状況次第で判断」の「判断」が適切に出来れば良いが、大抵においてはずるずると損を拡大してしまい、気がつけば後戻りが出来なくなるというもの(そもそも論として確固たる意思があれば、何らかのルールを定めているはず)。現物取引は最悪手持ち資産のみしか失わないが、信用取引はそれ以上の資産を失う可能性がある。「買いは家まで、売りは命まで」と言われるゆえんでもあり、くれぐれも注意してほしいものだ。
一方、含み益への対応は意外にもたん白なものだった。過半数が2割未満で利益確定と答えている。
評価益に対する対応方針(2009年7月)
今回の調査では尋ねていないが、数割の利益でさっさと利益確定をする傾向が強いところを見ると、少なくとも調査母体では「信用取引≒短期売買の手法」と考えている向きが強いようだ。
繰り返しになるが、信用取引は上手に使えば投資の幅を何倍にも広げられるだけでなく、投資手法も増やせるため、色々な戦略を立てられるようになる(空売り、両建てなど)。しかしその一方、リスクも大きくなり、それに伴いリスク管理も重要になる。あくまでも信用枠(信用取引で使える額)は「借りている額」であり、自分自身の資産「そのもの」では無いことを忘れてはならない。
その確認を怠れば、たちまち大ヤケドを負う羽目になることだろう。
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