今年倒産した上場企業(2009年6月30日版)
2009/07/01 07:34
昨年2008年は最終的に33件(上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めると34社)の上場企業の倒産が数えられ、これは1年間の数としては戦後最高数を記録した。不動産関連市場の不調さを筆頭に、多種多様で世界的な規模のマイナス要因が重なったのが主要因とはいえ、急激な株価動向とあわせ「稀に見る事態」であることは誰にも否定できない。さらに今年2009年は現時点において、その前年2008年を上回るペースで上場企業が破たんし、「退場」している。今年第六回目となる「今年倒産した上場企業をグラフ化してみる」においては、期間的に半分に達した時点ですでに前年の半数を超える18社を数えている現実がどのようなものなのか、少しでも把握できるようグラフ化することにした。
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まずは今年に入ってから、5月1日時点の上場企業における倒産企業一覧。1月に4件、2月に7件、3月に3件、4月に2件、5月に1件、6月に1件、合計で18件となる。
2009年における上場企業の倒産一覧(6月30日時点)
なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類してもあまり意味をなさず、まとめた方が状況を把握しやすいというのがその理由。3月以降は不動産業がしばらく連続していたのが確認できる。
次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。
2009年に倒産した上場企業の負債額区分(6月30日時点)
不動産、建設など「不動産・建設」絡みが多いのは周知の事実の通り。6月は幸いにも1件のみで、負債総額も「比較的」小さかったため、全体のバランスとしては先月とほぼ同じ形となっている。「その他」の区分が異様に大きい事情も先月通りで、SFCG(8597)の負債総額があまりにも巨額なのが原因。恐らく今件は、今年の上場企業倒産を象徴する事例として、後々まで語られることだろう。
負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる……というより、昨月からの動きは無し。つまり、SFCG以外がすべて不動産・建設業社なのは先月同様。
2009年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(6月30日時点)
今年も不動産・建設の大型倒産が相次いでいるのは、このグラフを見ても明らかだ。それと同時に、SFCGがいまだに最上位に君臨していることも見逃せない。SFCGの負債規模がそれだけ巨大だったことが改めて分かる。このSFCGの最上位体制が変わらない事態を、「SFCG以上の負債を抱えて破たんした上場企業が登場しない」という観点で見れば、「幸い」と見るべきなのだろう。
続いて月ベースでの上場企業の倒産件数。冒頭で「2008年を上回るペースで」という表現を使ったことが分かるように、先月同様昨年の実測値と並べて棒グラフ化することにした。
2008年と2009年における上場企業倒産件数(6月30日現在)
昨年2008年の上場企業の破たん傾向は、前半こそおとなしかったものの後期から加速化。それが年を改めてからも継続状態なせいもあるが、今年の倒産状況が「季節毎の倒産特性」を超えたものであることが分かる。幸いにも年度が改まってからはおとなしめに推移しているが、今後もこのペースを維持できるかどうかは分からない。
最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)を乗じた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんど無くなり、破産ならほぼ資産価値はゼロとなる。民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止後に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。
そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になるとみなし、そこに投じられた資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは疑いようもない)、計算してみることにした。突然破たんとなれば株主の売りぬけの機会も無く、この値は大きくなる。一方で倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき、手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。
2009年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(6月30日現在)
注目の業種。
・ペースは(前半期は)昨年以上。
・SFCGの影響が大きい。
・この数か月は倒産事例が
少なめで推移。
6月末の時点ですでに18社を数えた上場企業の倒産だが、有価証券報告書提出未了や債務超過などによる上場廃止はカウント対象外となっている(上場廃止=倒産ではない)。去年から「倒産以外の事由による上場廃止」の案件も増えており、6月もJOグループHD・ネクステック・ゴンゾが時価総額未達や債務超過などの理由で上場廃止が決定している。また、上場廃止・倒産と至らなくとも既存株主にとっては100%減資に等しい「事業再生ADR」の申請を行う上場企業も登場しており、状況的には単純に「倒産上場企業数:18件」以上の厳しさであると見ても間違いではない。
【株価低迷で東証が上場廃止基準などを緩和へ】などにもあるように東証側では、全体の株価低迷を考慮して上場基準の一時的な緩和措置を実施中だが、これで倒産事例そのものが減少するわけではない。幸いにも市場環境は「改善化」というよりは「これ以上の悪化は避けられそう」な状況に移行しているため、ここ数か月は倒産による上場廃止事例は少なめになっている。ただし現時点でも「綱渡り」的な状態の銘柄も複数存在しており、今後時間経過や市場環境のぶれと共に、カウント数に加算される企業も出てくることだろう。その「綱渡り的な銘柄」の一部が、倒産ではなく単なる上場廃止や「事業再生ADR」の道を選んだと考えることもできよう。
6月は第一週目で「倒産上場企業がなければ該当月の今記事シリーズは更新ナシ」という夢がはかなくも打ち砕かれてしまった。海外の経済動向や国内の消費者のおサイフ事情(夏のボーナスと住宅ローン)を見ると、今年も後半期以降色々と騒がしい状況になりそうな雰囲気がただよっている。とはいえ、先月でも触れたが今年こそは一度くらい「今月の上業企業の倒産件数はゼロだったので、例のグラフ化してみるシリーズは無しです」と書き込んでみたいものだ。
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