10代男性4割・女性7割近くは「ケータイ小説読んだことアリ」-広まりを見せる携帯小説(2009年)
2009/06/28 09:41
メディア環境研究所は2009年6月23日、毎年2月に実施している「メディア定点調査」の最新版「メディア定点調査・09」の抜粋編を発表した。それによると、携帯電話を使った小説の提供という新しい媒体スタイルである「携帯小説(ケータイ小説)」が若年層の間に広く浸透している状況が改めて確認された。その一方、この分野で先行していた10代・20代の女性において浸透度が昨年と比べてやや減少しており、ピークを過ぎた感もある状況が見受けられる(【発表ページ】)。
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今調査は郵送調査方式で行われ、2009年2月6日に発送、2月19日投函を締め切りとしたもの。東京・大阪・高知の三地区を対象にRDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15-69歳の男女に対し調査票が計2204通送付され、1919通が回収された。デジタル手段ではなく、郵送方式で調査が行われたこと、調査実施期日が今年の2月であることから、比較的片寄りの無い、昨今の状況を表したデータといえる。なお、特記無き限りデータは基本的に東京地区のものである。
画面もワイド化・細密化することで表現力が大きく向上した携帯電話。単純なテキスト(文字列)による文章だけでなく、挿絵や効果的描写を使って「演出」が施された小説や、さらには限られた画面の面積を逆手に利用して独自の表現方法を用いたコミックなど、「携帯電話ならでは」のスタイルが日々模索改良されながら確立しつつある。そしてパケット定額制(要するにインターネットに関する通信費がいくらアクセスしても定額)の普及で、通信料(量)をさほど気にしなくてもよい環境が普及しつつあることが、携帯小説を後押ししているともいえる。
このような状況の中、携帯小説を利用した経験があるかどうかについて性別・年齢階層別に尋ねたところ、「男性よりも女性」「壮齢・高齢層よりも若年層」という傾向が如実に現れる結果が出た。去年のデータと比べると、浸透年齢層の幅が広まっている様子が分かる。
携帯小説利用経験(時系列・性別)(2007年は携帯コミック含む)
2007年においては小説とコミックを分派させていなかったので「あわせて」という形ではあるが、3年の間における変化もある程度推し量ることができる。特徴などを箇条書きにまとめると次のようになる。
・男性10代、女性30代・40代で利用率が大幅に伸びている。女性から男性へ、若年層から中堅層へ波及の傾向か。
・女性10代-20代の普及率の高さはこれまで通り他の階層に比べ抜きん出ているが、いずれも2009年は2008年より減少。この層での「飽き」が見えているのかもしれない。
・2008年に見られた女性の「20代と30代の断絶」は解消されている。
2008年においてはある意味「若年層、特に女性」の間でのみ流行る、特異的なコンテンツともいえた「携帯小説」が、2009年になると少しずつ周辺階層にも広がりを見せている様子が分かる。一方で流行の中心だった10代・20代の女性における普及率がやや減少を見せており、ピークが過ぎたような雰囲気も見られる。
【ケータイ小説、読む時間は1日45分】【ケータイ小説+220%、一方で着メロは-34%・変わるモバイルコンテンツ市場】などにもあるように、若年層(とりわけ女性)には携帯小説は「携帯電話による意思疎通の延長」と「小説・物語」を融合した立ち位置にあるようで、それこそ携帯電話でメールによる友達との「おしゃべり」の内容を読むような感覚で読み進める傾向がある。携帯小説の作者が、まるで自分のお友達の一人であるかのような感覚を持っているようだ。
「10代特異のカルチャー」から
「若年層全体の文化」へ
さらに【ケータイ小説、出版化されれば7割が購入】でも調査結果が出ているが、携帯小説は携帯電話上にとどまらず、紙媒体上の出版にも活力を与える可能性を秘めている。今後若年層(特に女性)を対象とした、「携帯上の小説によるコンテンツの展開」はそのニーズに応えるべくますます活性化していくだろう。
特に今年のデータからは、若年層から少しずつ上の層にも広がりを見せる傾向が見られている。中心となる女性10代・20代が減少し、女性30代・40代に広まる状況は、まさに「流行(ブーム)から普及へ」の流れに他ならない。来年にはどのような浸透を見せるのか、そして流行の中心だった女性10代・20代の利用率はどのように変化するのか、早くも今から来年の調査結果が楽しみでならない。
■関連記事:
【10代女性の7割は「ケータイ小説読んだことあるヨ」-若年層、特に女性に強い携帯小説・コミックたち(2008年分データにおける同様の分析記事)】
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