企業社員がおススメするバラエティ番組ランキング
2009/06/19 05:02
[トヨタ自動車(7203)]や【東京電力(9501)】など大手企業26社から構成される「優良放送番組推進会議」は2009年6月18日、独自に参加企業の社員に対して行ったアンケートの調査結果による「第3回アンケート調査結果・バラエティ番組ランキング」を公表した。それによると、トップについた番組は回答者数・合計点ではテレビ東京(系列、以下略)の「出没! アド街ック天国」、平均点では日本テレビの「ザ! 鉄腕! DASH!!」であることが明らかになった。第三位までには「秘密のケンミンSHOW」や「行列のできる法律相談所」、そして「SMAP×SMAP」などが入っている。今回の「バラエティ番組ランキング」では対象番組数は59に登ったが、最下位にはすべての項目で「ホンネの殿堂!! 紳助にはわかるまいっ!」がついている(【発表リリース】)。
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「優良放送番組推進会議」とは大手企業(要はテレビ放送のお得意様的スポンサーとなりうる企業)から構成されている団体。設立主旨は「日本の混迷状態の一因は、世界の情勢から大きくかけ離れているテレビ放送にある。しかし単純に良し悪しを判断すると表現の自由にかかわる問題となる。そこで『良い番組』を推挙すれば、番組の向上に役立つだろうと判断。放送番組動向に関心のある企業が調査に協力して世間に結果を公表することで、間接的にテレビ放送に対する『意見具申』をして優良な番組展開が期待できる」というもの。
今調査は参加企業の社員448人に対し、2009年6月1日から7日に放送された59のバラエティ番組(時間帯は19時-22時台に限定、クイズ番組・音楽番組は除く)に対し、任意に番組を選んでもらい、5段階評価(3:とても興味深く推薦したい、2:興味深く推薦したい、1:普通、0:特に感想が無い マイナス:マイナス評価(集計上はゼロ扱い))を依頼し、その平均得点で順位を決定する。選択されない番組は「見向きもされない」「知らないので評価できない」ということでゼロ扱い。年齢階層、男女比などは非公開だが、各番組への投票結果では20代から60代以上まで20歳くぐり・男女別の区分(m1-m3、f1-f3)が内部的に行われていることが確認できる。
詳細な一覧はリリースにあるが、ここではいくつかの要素を抜き出してみることにする。まずは全番組の平均点順位、回答者数順位の上位5位をグラフ化する。
平均点順位
回答者数順位
平均点は「投票した人の」点数平均。知名度の高さとはまた別で、評価した人の評判の良し悪しを示す。極端な話、一人だけしか投票せずに「3」の評価を入れればその番組は「3」の平均点を確保できる。
一方「回答者数」は448人のうち何人が投票したか。いわば良し悪しを別にした「知名度」(どれだけ知られているか)とほぼ意味を同じくするということになる。もちろん回答者数が多くても評価が低いのなら得点は低くなるので、平均点は下がる。回答者数上位に入っていて、平均点上位に姿を現していない番組は、評価の内容が幅広い(良い評価もあれば悪い評価もある)ことを意味する。
今回も最低回答数が37人とやや少なめで、「ぶれ」が懸念されたが、番組数が59あること、投票者数が448人と多めであることもあわせ、「回答者数が少ないのに高評価をつける人が多く、支持者絶対数が少ないのに平均点で上位に来てしまう」という問題となるような上位番組は見られなかった。
「評判」と「知名度」、双方を加味するには「多くの人からたくさんの点数・高評価をもらえたかどうか」、言い換えれば「得点総数」を見る必要がある。知名度が高くても各回答者数の評価(得点)が低ければ得点総数は低くなるし、評価が高くても知名度が低ければやはり得点総数は上がらないからだ。その得点総数こと「合計点」の表が次の図。
合計点順位
合計点では「出没!アド街ック天国」が群を抜く323ポイントでトップ。ついで「ザ! 鉄腕! DASH!!」「行列のできる法律相談所」がそれぞれ271・257ポイントで第二位・第三位についている。ドキュメンタリー番組を対象にした【企業社員がおススメするドキュメンタリー番組ランキング】と比べると、特定少数番組が突出しているという現象は無く、片寄りのない見られ方をしているのが分かる。
また、その他には、
・クイズ番組はクイズそのものがメインのものは評価が低い。取材やレポートがメインのクイズ番組はそれなりに良い評価を受けている。
・芸能人などがメインになって立ち回るタイプのバラエティ番組は押しなべて評価が低い。
などの傾向が見られる。NHKは元々バラエティ番組に弱いところがあり、今回のジャンルではこのような結果が出ても仕方がないといえよう。一方、いわゆる「知的バラエティ」の類は上位につく番組が多く、【「強引な値切りの中止」「派遣などの労働条件改善」を・テレビ制作現場が放送局に直訴】や【テレビ視聴時間の推移】でも触れているように、民放各局が制作費削減のために進めている、「出演料が安い芸人の立ち回り的なバラエティ番組」は一様に評価が低い結果となっている。
さらに、似たような特性(人気のアイドルグループがメインキャラクタとなり番組を構成する)を持つ「SMAP×SMAP」と「ザ!鉄腕!DASH!!」では興味深い違いが見受けられる。具体的には
「ザ!鉄腕!DASH!!」はトップ(1.62)、m1(5位)、f1(1位)、f2(1位)、f3(5位)
「SMAP×SMAP」は23位(1.28)、f2(4位)
・回答者数(観た人の数)……
「ザ!鉄腕!DASH!!」は4位(167人)、m1(4位)、f1(5位)
「SMAP×SMAP」は3位(189人)、m2(5位)、f1(1位)、f2(1位)
※m1……男性20-30代、f1……女性20-30代、f2……女性40-50代、f3……女性60歳以上
のような結果が出ており、それぞれの番組で
・「SMAP×SMAP」……視聴者数は若年から中堅女性を中心に圧倒的。しかし個々の視聴者からの評価はさほど高くない。
という特性が見えてくる。
バラエティ番組は先のドキュメンタリー番組と比べ、単発性による番組毎の評価の違いが出にくく、シリーズ・コーナー全体としての評価がしやすい。そのため、「今回の調査対象となった回がたまたま高評価・低評価」だったという可能性は低い。当記事でリスト化はしないが、下の順位にある番組群を見ると「なるほどな」と納得ができるものも少なからず存在しているのが分かる。
もちろん今回の順位も、あくまでも当会議に参加している企業の社員を調査母体にした結果なので、「テレビ視聴者全体」の傾向とは微妙に異なる可能性は否定できない。どちらかといえば、企業にとって都合の良い、企業情報や関連情報を適切に報じてくれる、あるいは広告展開の際にターゲットを絞りやすい番組と考えることもできる。とはいえ、世間一般にも評価の高い知的バラエティ番組の類の多くが上位についている結果をみると、不特定多数(視聴者全体)の意見と大きな違いはないと見てよいのかもしれない。
【相次ぐメディアの不祥事に広告主団体が「遺憾」声明】でもお伝えしているように、「広告主としての」企業や団体から構成される協会でも、テレビ放送や雑誌媒体に対して昨今の状況を「遺憾な状態」と認知しているという声明を発している。また、【日本テレビのタイム・スポット広告の変化】【サトウ食品、テレビCMの抑制で営業利益3.2倍へ】でも言及しているように、広告主側がテレビという媒体に対しこれまでと同じような広報宣伝媒体としての価値を見出せなくなり、スポット広告だけでなくタイム広告まで減らす傾向が見られる。
そして今件も含め、優良放送番組推進会議がわざわざ定期的なランキングの集計とその公知を通じてテレビ放送に対して「アピール」(一種のプレッシャー)をしなければならないほど、テレビ放送周囲の危機感は高い。これら周囲の意見にテレビ放送・放送局がどのような反応を見せるのか、注意深く見守る必要がある。
なお次回の調査は「音楽番組」を対象としている。一時期と比べると音楽番組数は数をかなり減らしている一方で、【テレビがCD購入に与える影響力はインターネットの2-3倍!】でも明らかにされているように、テレビの音楽番組がCD・DVD売上に与える影響は極めて大きい。テレビ番組そのものだけでなく、音楽CD・DVDとの兼ね合いもあわせ、結果が気になるところだ。
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