世界の医薬品メーカーの売上高ランキング
2009/06/03 16:00
直前の記事【日本と諸外国の家計における金融資産の構成比率を比較してみる】でデータ作成の際に【社団法人日本経済調査協議会】が2008年3月13日に発表した「人口減少時代の企業経営」を参照したが、そのデータ以外にも色々と興味深い記述をいくつも見つけることが出来た。特に気になったのは世界の医薬品メーカーの売上高ランキング。自分自身がお薬のお世話になっていることもあり、医薬品メーカーの動向は何かと気になるところ。また、「日本の大手医薬品メーカーですら、世界から見れば上位ランクインすら難しい」という話も耳にしていた。そこで再確認のため、あらためてグラフをかき起こすことにした。
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「人口減少時代の企業経営」にもそのままズバリのグラフは掲載されているのだが、少々データが古い。そこでデータの取得元とされる【ユート・ブレイン】で探したところ、2009年の5月20日に【世界の医薬品メーカーランキング2008】を確認。早速データを使わせてもらうことにした。
今データは原則として医療用医薬品売上のランキング。米ドル比較のデータだが、2008年以降は為替の変動が激しいため、イギリスポンドや日本円は2008年の年平均レートで換算している。また、元データでは売上高30億ドル以上のものがリストアップされているが、今回は見やすさのこともあり30位までに限定した(それ以外の日本企業は後ほどフォローする)。
世界の医薬品売上高ランキング(2008年、上位30位)(単位・億ドル)(日本企業は赤で着色)
似たようなグラフは先に小売業の分野で【世界の小売業売上高ランキング(2007年度・最新データ版)】にてグラフ化した。その時のウォルマートの飛びぬけた値と比べればまだおとなしめだが、上位陣に連なる製薬メーカー(いずれもが日本でも著名なところばかり)の売上高が抜きん出ていること、そして小売業同様に、日本企業が国内では超大手といわれていても世界規模で比べれば「まだまだ」の部類である事が分かる。
なおグラフからは外れてしまったが、20億ドル以上の売上をあげている日本企業としては他に田辺三菱製薬、中外製薬、塩野義製薬、協和発酵キリン、大日本住友製薬などが上げられている。
元データのリリースにもあるように、大型医薬品のパテント切れによる影響で売上を減少させているメーカーが見られ、さらにジェネリック医薬品の普及により多くのメーカーが成長幅を縮めている事が分かる。ジェネリック医薬品の普及は今後さらに進むことは確実で、新しい「稼ぎ頭」の新薬開発も規制の強化や新分野の開拓の難しさなどで思うようにいかないのが実情(武田薬品工業が新薬として大いに期待されていた糖尿病治療薬TAK-379について、臨床試験継続のための評価基準を満たさないことが明らかになったため、開発を中止したことは記憶に新しい(【発表リリース】))。
日本に限れば、今後高齢化社会が進行することで、医療費への負担が大きい高齢者人口が増加し、医薬品のニーズも高まる(【孫へのこづかい・医療費負担……高齢者世帯の生活像】)ものの、やはりジェネリック医薬品の普及によりどこまで新薬の需要が拡大するかは不透明な部分も大きい。
人が健康を求める以上、医薬品に対するニーズは尽きることが無い。その観点では医薬品メーカーもまた、ビジネスの機会を失う事はない。しかしジェネリック医薬品の普及、新薬の開発の難しさなどもあり、これまでのような急成長時代は難しいのかもしれない。
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