【更新】海外主要新聞社サイトの読者数など
2009/06/02 05:00


スポンサードリンク
対象とした新聞社サイトは【欧米主要六紙に見る「新ブラック・マンデー」の衝撃】で取り上げた6誌。すなわちThe Wall Street Journal、USA TODAY、The New York Times(以上アメリカ)、Financial Times、BBC、Mail Online(以上イギリス)。なおグラフの並びは内容と比較しやすいように、「欧米主要六紙に見る-」で紹介した順とした。
これらサイトを運営する新聞社自身にとっても、読者層や読者数は非常に気になる値に他ならない。ページビューやユニークユーザー数はそのまま紙媒体の新聞の購読者数と同じくらいの重み(影響力・権威など)があるし、出稿する広告の多少にも影響する。年齢階層などは、サイトの質や記事内容などにも影響を与えるだろう。そして読者の側にしてみても、それぞれの新聞社サイトの立ち位置を知ることができ、非常に興味深い。さらに今回は、すでに日本の主要新聞社のデータは掲載済みなので、それと比較することもできる。
それではまず最初にユニークユーザー数とPV(ページビュー数)。言及無き限り、(現時点で取得できる最新データの)2009年3月のデータのもの。また、英語圏のサイトということもあり、ページビュー数などは世界規模のデータを採用している。

推定ユニークユーザーとページビュー(単位・万/2009年3月)
何度か確認をしたのだが、BBCとTheNewYorkTimesのページビュー数が言葉通りケタ違いに大きい。何しろ表示形式が他のものは「M」(ミリオン・100万)なのに対し、これら二つは「B」(ビリオン・10億)なのだ。【アクセス数前年比300%増し-金融危機で大いに注目を集める金融新聞系サイト】で、FinancialTimesが爆発的にページビュー数を伸ばしたことを伝えたが、それでも大手他紙と比べればまだまだ少ない、ということになる。
続いて月あたりの平均来訪回数と1来訪あたりの滞在時間。先の記事の日本の主要紙と比べてほしい。

来訪回数(月あたり)

滞在時間(分)
一番短いMailOnlineですら、先の記事において「日本主要紙では一番滞在時間が長い」日経の7分50秒とほぼ同じ。TheWallStreetJournalにいたっては20分近い結果が出ている。それだけ「じっくりと読ませる記事」が多く、さらに関連する他の記事への誘導にも優れていることが分かる。
このあたりのデータなら普通のアクセス解析サービスでも取得できる(もちろんサイト運営者側にしか閲覧できず、通常は公開されない)。今サービスが際立っているのは読者の年収や年齢層までが分かること。各種データから導き出した推定値ではあるが、参考になることに違いはない。ただし今回は年収については掲載を取りやめた。各国で為替レートの違いなどがあるため、先の記事のような単純比較が難しいからだ。

読者推定学歴
先の記事の展開後、いつのまにか項目にSomeCollege(学士でない普通の大学卒)が加わり、単純比較が出来なくなってしまった。ただし、「高卒未満」「高卒」の部分だけを比較してみると、日本の各紙と比べて高学歴者の割合が多いことが分かる。特にTheWallStreetJournalなど、大卒以上で9割に達している。
読者の年齢階層では一つ大きな特徴が見受けられる。

読者推定年齢階層
The Wall Street Journal、USA TODAY、The New York Timesは35-44歳の層が最多層。それに対してFinancial Times、BBC、Mail Onlineは25-34歳層が最多層か、あるいは最多層とほぼ変わらない値を示している。実はこれ、前者はアメリカ発・後者はイギリス発の雑誌という区分でもある。たまたまデータの取得の都合上(つまり参考にした統計データ上)このような結果が出てしまったのか、それとも本当に「イギリスのオンライン新聞サイト読者の方が平均年齢が低い傾向にある」のかまでは断定できないが、興味深い傾向には違いない。
ちなみに日本新聞社の比べると、海外紙では高齢層にも多数の読者がいることが分かる。逆に考えれば、日本の高齢者は海外と比べて、オンライン新聞に対する抵抗感が強いということだろうか。
最後に、ある意味もっとも気になる「読者の推定年収」……は先に説明した通り省略するので、代わりとして読者の性別区分を紹介する。男女分け隔てなく読まれる新聞こそ、公共紙としてふさわしい、はず。

読者推定性別(2009年3月)
日本の新聞社サイトの場合は、大体男性6割強・女性3割強というのが平均的な形なのだが、今回取り上げた海外紙ではいずれもその比率より女性の割合が高い。特にBBCとMailOnlineにいたっては女性の方が多い、という結果が出ている。先の「イギリス紙の方が若年層の割合が高い」こととあわせて考えると、(ガチガチの経済紙であるFinancialTimesをのぞいた)イギリス紙には、若年女性が大勢集まっている、と推測できることも可能だ。幅広い層に向けて読者を増やすという意味では、成功しているといえる。
前回の日本紙と比べると(対象を全世界にしているということを考慮しても)多くの新聞社サイトにおいて、より多くの読者を集めていることが分かる。特に「滞在時間」「来訪回数」「1ユニークユーザーが閲覧するページ数(ユニークユーザー数とページビュー数で逆算できる)」いずれもが多いということは、海外紙が日本紙と比べて「読み応えのある記事が多く、質が高い」ことを意味する。
ただし「じっくり読める記事が多い」ことがそのままイコール「新聞社サイトとして良い事」とは限らない。読者にとっての新聞社サイトの立ち位置として「さっと読めてすぐに別のサイトに移れる」ものを求めているのなら、むしろ日本紙のスタイルの方が「読者ニーズにマッチしている」といえるからだ。【ウォールストリートジャーナル、SBIと合弁会社設立・年内に日本語版ウェブ開設へ】にもあるが、年末までにはTheWallStreetJournalのオンライン日本語版が登場する予定。このサイトが日本の新聞社サイトにとって黒船となるのか、それとも「単に毛色の違う一サイトの登場」に留まるのか、注目したいところだ。
最後に気になったことを一つ。今サービスでは日々のユニークユーザーの推移をグラフ化して知ることもできるのだが、その値を見ると各紙それぞれ違った傾向を見せているのが分かる。

Financial Timesのユニークユーザーの推移
上記FinancialTimesの場合は先の記事にもあるように、2007年夏口以降の金融危機(特にリーマンズ・ショック)を受けてアクセスが2倍くらいに増えているが、その後は反動で落ち込み、2008年初頭の水準にまで押し戻されている。他紙の場合、The Wall Street Journalは漸増、USA TODAYとThe New York Times、BBC、は下落、は35-44歳の層が最多層。それに対してMail Onlineは順調な伸びを示している。欧米では日本以上に新聞社が苦戦しており、オンライン展開でどうにか起死回生を図ろうとしているものの、多数のライバルの登場や景気後退による広告費の削減で、首が回らない状態(参考:【アメリカ有力紙NYTが「聖域」の1面広告を解禁】)。
海外のネット動向はしばらくして日本でも同様の事象が起きることが多い。これら海外紙の傾向が日本の新聞社サイトにも浸透していくのか、注意深く見守りたいところではある。……恐らく海外紙のように「じっくりと読ませるタイプの新聞社サイト」は、日本独自のものは生まれ難いだろうけれども。
スポンサードリンク
