主要テレビ局銘柄の期末決算……(1)スポット広告とタイム広告、業績概略
2009/05/24 19:30
以前【主要テレビ局銘柄の第2四半期決算】などで在京主要テレビ局(キー局)で上場をしている5局の、2009年3月期(2008年4月-2009年3月)の第2四半期(中間決算)における財務・決算を比較した。テレビメディアがかかえる財務的問題、特に広告収入が激減する現状が手に取るように分かり、「これは期末決算は大変なことになるのでは?」というのが率直な感想だった。それから半年が経過した2009年5月、ようやく5局すべての期末決算データが発表された。ここであらためて各局の決算諸表などをまとめて見ることにする。一部は中間決算の文面も流用・重複しているが、サーバー移転前の記事だったこともあり、せっかくだから書き直しも兼ねることにする。
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●「キー局」と「スポット広告」
本題に入る前にいくつか定義・説明を。在京主要テレビ局、すなわちフジテレビ(現在はフジ・メディア・ホールディングス)・日本テレビ・TBS・テレビ朝日・テレビ東京はいずれも民法放送局の系列ネットワークの中心「キー局」「主要局」。上場企業なので財務的な面で偽りの無い情報を公開する義務があり、外部の者でも実情を確認しやすい。だからこそ今件のような記事も作れる。
続いて「スポット広告」と「タイム広告」について。テレビコマーシャル(TVCM)には提供方法で大きくわけてこの2つの方式がある。
「タイム広告」とは「番組提供広告」とも呼ばれ、放送される番組をスポンサード(支援・応援)するもの。番組の最初や最後に「この番組は●×製菓、□▲食品の提供でお送りします」と出るのがその証。広告費をテレビ局経由で番組に提供してその番組を後押しする代わりに、その番組内で自社のテレビコマーシャルを放送してもらう、というもの。一社で独占する場合(かつての「東芝日曜劇場」などが好例)もあれば、複数社で提供する場合もある。放送時間や視聴者性向をある程度絞れるため、効果的な広告展開が期待できるが、人気のある・効果の高い番組の広告費は当然ながら高い。
タイム広告とスポット広告(再録)
一方「スポット広告」とは、番組と番組の間に存在する時間帯(ステーションブレークと呼ばれる)に放送されるもので、どこかの番組に属するものではない。契約上詳しくは「スポット契約」(ある時間枠に放送される)と「フリースポット契約」(時間などは指定されず、一定期間内に指定した本数が放送される)の二種類があるが、どちらにしても「番組との関連性をほとんどもたない、じゅうたん爆撃的な広告」と考えれば良い。その性質上、集中投下したい場合・短期決戦的な広告展開(新製品の発売間近な時、期間限定のキャンペーン)に使われることが多い。詳しくは【テレビ局からスポット広告を減らした業種を調べてみる(2009年3月期第2四半期編)】でも確認してほしい。
●5社中2社が最終赤字、残り3社も厳しい内容
景気後退やテレビメディアそのものの問題が露呈化してきたこともあるが、キー局5局の決算は非常に厳しいものとなった。前年との比較で見れば、その厳しさが分かる。
キー局の連結決算業績(前年比、純利益赤字表記は額がマイナス)
キー局の連結決算業績(前年比)
本業の業績を示す営業利益ではかろうじて全社黒字を確保したものの、最終利益・損失においては【テレビ朝日(9409)】と【テレビ東京(9411)】が赤字に転落している。【フジ・メディアHD(4676)】にしてもライブドアからの和解金受け取り308億9900万円があったから前年比プラスで黒字を維持できたものの、これが無ければ単純計算で140億円ほどの最終赤字に転じていた。
各社の決算短信の業績理由に目を通すと、業績がさえなかった理由は大きく分けて二つ。「景気悪化に伴う広告の減少」「株価下落による保有有価証券の評価損」。中間決算の時から状況は変化していないというわけだ。後者は景気後退に伴う、避けられない事象ではあるが、前者はむしろテレビ事業・業界が抱える問題が景気後退で露呈されただけに過ぎない。
(続く)
■一連の記事:
【主要テレビ局銘柄の期末決算……(1)スポット広告とタイム広告、業績概略】
【主要テレビ局銘柄の期末決算……(2)業績斜め読みとスポット広告の落ち込み】
【主要テレビ局銘柄の期末決算……(3)放送事業と利益、TBSの特殊事情は継続中、そして小まとめ】
【主要テレビ局銘柄の期末決算……(4)主要テレビ局の収益構造を再点検してみる】
【主要テレビ局銘柄の期末決算……(5)主要テレビ局の「スポット広告の減り具合」、そしてまとめ】
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