企業社員がおススメするドキュメンタリー番組ランキング
2009/05/21 06:30


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「優良放送番組推進会議」とは大手企業(要はテレビ放送のお得意様的スポンサーとなりうる企業)から構成されている団体。設立主旨は「日本の混迷状態の一因は、世界の情勢から大きくかけ離れているテレビ放送にある。しかし単純に良し悪しを判断すると表現の自由にかかわる問題となる。そこで『良い番組』を推挙すれば、番組の向上に役立つだろうと判断。放送番組動向に関心のある企業が調査に協力して世間に結果を公表することで、間接的にテレビ放送に対する『意見具申』をして優良な番組展開が期待できる」というもの。
今調査は参加企業の社員324人に対し、2009年5月1日から7日に放送された15のドキュメンタリー番組に対し、任意に番組を選んでもらい、5段階評価(3:とても興味深く推薦したい、2:興味深く推薦したい、1:普通、0:特に感想が無い マイナス:マイナス評価(集計上はゼロ扱い))を依頼し、その平均得点で順位を決定する。選択されない番組は「見向きもされない」「知らないので評価できない」ということでゼロ扱い。年齢階層、男女比などは非公開だが、各番組への投票結果では20代から60代以上まで10歳くぐり・男女別の区分が内部的に行われていることが確認できる。
詳細な一覧はリリースにあるが、ここではいくつかの要素を抜き出してみることにする。まずは全番組の平均点順位、回答者数順位の上位5位をグラフ化する。

平均点順位

回答者数順位
平均点は「投票した人の」点数平均。知名度の高さとはまた別で、評価した人の評判の良し悪しを示す。極端な話、一人だけしか投票せずに「3」の評価を入れればその番組は「3」の平均点を確保できる。
一方「回答者数」は324人のうち何人が投票したか。いわば良し悪しを別にした知名度とほぼ意味を同じくするということになる。もちろん回答者数が多くても評価が低いのなら得点は低くなるので、平均点は下がる。回答者数上位に入っていて、平均点上位に姿を現していない番組は、評価の内容が幅広いことを意味する。
今回は最低回答数が31人とやや少なめで、「ぶれ」が懸念される番組もいくつか見受けられる。たとえば「NNNドキュメント」は平均点が1.46と高めの値を見せているが、投票者数は71人と順位ではちょうど真ん中に位置しており、「平均点」「回答者数」のいずれか一方だけでは判断がしにくいことを裏付けている。
「評判」と「知名度」、双方を加味するには「多くの人からたくさんの点数をもらえたかどうか」、言い換えれば「得点総数」を見る必要がある。知名度が高くても各回答者数の評価(得点)が低ければ得点総数は低くなるし、評価が高くても知名度が低ければやはり得点総数は上がらないからだ。その得点総数こと「合計点」の表が次の図。

合計点順位
合計点では「ガイアの夜明け」「NHKスペシャル」がそれぞれ353・349ポイントでほぼ同数。ついで「情熱大陸」が顔を見せている。また、報道番組を対象にした【企業社員がおススメする報道番組ランキング】と比べると、上位三位とそれ以下の番組との差が非常に大きいことが分かる。「回答者数順位」でも同様の傾向を見せており、要は「知られてすら・観られてすらいないドキュメンタリー番組が多い」ことを暗示していることになる。
先の報道番組と比べ、ドキュメンタリー番組は対象番組数が少ない、単発番組が多いなどの違いがある。また、シリーズ・コーナーとしては連続していても、1放送毎の内容や質に大きな差異が生じる場合が多く、今回の調査対象となった回がたまたま高評価・低評価の可能性もあり、一概に「今調査の結果がシリーズ全体の評価」と断じるにはリスクが高い。シリーズものについては、今後時間をおいて再度行われる調査の内容を見て、総合的に判断する必要がある。
もちろん今回の順位はあくまでも会議に参加している企業の社員を調査母体にした結果なので、テレビ視聴者全体の傾向とは微妙に異なる、はず。どちらかといえば、企業にとって都合の良い、企業情報や関連情報を適切に報じてくれる、あるいは役立つ情報を伝えてくれる傾向が強いと考えることもできる。とはいえ、世間一般にも評価の高い「ガイアの夜明け」「NHKスペシャル」が上位を占めている結果をみると、多少の意思相違はあるかもしれないが、一般を対象としたアンケート結果と大きな違いはないと見てよいのかもしれない(このあたりはもう数回調査結果を見て、ぶれがあるのか否かを見極める必要がある)。
【相次ぐメディアの不祥事に広告主団体が「遺憾」声明】でもお伝えしているように、「広告主としての」企業や団体から構成される協会でも、テレビ放送や雑誌媒体に対して昨今の状況を「遺憾な状態」と認知しているという声明を発している。優良放送番組推進会議がわざわざ定期的なランキングの集計とその公知を通じてテレビ放送に対して「アピール」をしなければならないほど、テレビ放送周囲の危機感は高い。これら周囲の意見にテレビ放送がどのような反応を見せるのか、注意深く見守る必要がある。
なお次回の調査は「バラエティー番組」を対象としている。報道やドキュメンタリー以上にテレビ放送の現状を的確に表しているジャンルなだけに、どのような評価が下されるのか、大いに注目したい。
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