「所得が低いと子どもを持てない」傾向

2009/05/12 12:05

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子どもイメージ先に【各国の「子どもの割合」】で総務省統計局のデータを元に、主要国の「総人口に占める子どもの割合」をグラフ化した。その記事で「日本の少子化の原因」を箇条書きにした際に見つけたデータを元に、「所得が低いと未婚率が高い」傾向がある、というのをグラフ化したのが直前の記事。さらに今回はそれをさらに一歩推し進め、元記事の主要テーマである少子化に関係する「年収が低いほど、子どもがいる世帯の割合が少ない」傾向についてグラフ化してみることにする。



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これは総務省から2006年に発表された【中小企業白書】中の【少子高齢化・人口減少社会における中小企業】にあるもので、大もとは2002年の【就業構造基本調査】のデータを利用している。

該当文面に掲載されていた、2002年における世帯主の年収と年齢、配偶者及び子どもがいる人の割合についてグラフ化したのが次の図。

配偶者と子どもがいる人の割合(2002年)
配偶者と子どもがいる人の割合(2002年)

直前の記事同様に、20代後半から30代前半にかけて、高所得層の「ためらい」データが確認できるが、それをのぞけば全般的に「高所得ほど子どもがいる世帯の割合が高い」ことが確認できる。

これも最新の「就業構造基本調査」(2007年)のデータを元に、類似のグラフを作り直し、現状に近い状況を把握することを試みる。具体的には【平成19年就業構造基本調査のe-Stat(主要統計表)内該当データ】に納められている【全国編 世帯単位で見た統計表】から、第188表 一般・単身世帯,世帯の家族類型,世帯主の年齢,世帯所得別世帯数」を選択。「夫婦と子供」の数と「夫婦、子供と親」の数を足して「子どもがいる世帯」とし、「全体」で割って割合を算出する。

上記の2002年のものとは少々算出方法が異なるし、この場合は「三世帯家族(祖父母・両親・子ども)」も含まれることになるが、「夫婦が子どもを持てるか否か」が問題なので、今回はあえて三世帯家族もカウントすることにした。また、先の記事同様に収入区分においては2002年のデータより細分化している。

配偶者と子どもがいる人の割合(2007年)
配偶者と子どもがいる人の割合(2007年)

全体的な傾向としてはさほど2002年と変わりが無く、

・30代前半までは年収500万円を超えると「子ども持ち」の割合が横ばいになる。
・30代後半になると年収の増加と「子ども持ち」率がほぼ比例関係となる。
・年をとっても年収が低い場合は「子ども持ち」率は低いまま。

などの傾向が見られる。特に年齢が経過しても年収次第で子どもがいる割合が低いままなのは、直前の記事で「年収が低くても年を経ればある程度婚姻率が上がる」という結果とあわせて考えると「年収が低い場合婚姻はできても子どもを持てずに夫婦のみの世帯が多くなる」傾向があることを表している。

また今回のデータは上記にあるように、元々の主旨から「三世帯家族」の場合も含めている。仮に祖父母を含めない「二世帯家族」のみに限定すれば、経済的な理由からもっと子どもがいる割合は下がるものと思われる(それを算出するだけのデータが用意されていないので、今回はグラフ化できなかった)。



先の記事同様、今データはあくまでも「年収が高いほど子どもを持つ婚姻世帯の割合が増える」「年収が低いと晩婚世帯でも、子どもがいる割合は低いままに留まる」傾向があるという、子どもがいる婚姻世帯割合と年収における相関関係を示しているに過ぎない。つまり「年収が高いのが子どもがいる割合を上げる原因」、言い換えれば「各世帯の年収を上げることが、少子化を防ぐポイントとなる」といった因果関係を示すものではないことを書き記しておく。

とはいえ、収入、つまり金銭的な余裕が結婚世帯において子どもを持つか(持てるか)否かにおいて、少なからぬ影響を及ぼしているのは間違いないともいえる。【「年収300万円以下の低所得者層」と「2000万円以上の超高所得者」の増加……二極化する給与実態】あたりの記事とあわせて考えると、色々と考えさせられるものがあるといえよう。

中長期的に見れば、少子化問題を打開することが国を富ませる大きな要素となることを考えれば、「一人一人、世帯世帯を豊かにすることが、人口を増加させ、活力を増やし、国そのものを富ませることにつながる」(あるいは出産・育児制度の拡充が必要)ということになるのではないだろうか。



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