戦車の中でも核戦争でも「とりあえずはお茶だ!」-イギリス人の原動力は「紅茶」!?

2009/05/08 04:40

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紅茶イメージ先に【戦車発祥地のイギリスで戦車の生産終了】で、イギリス陸軍の主力戦車の製造がイギリス国内で(現時点では)終了したことを伝えたが、その際に気がかりなことを質問してきた読者がいた。いわく「イギリス国外で生産することになったら、紅茶供給への配慮が無くなるから、もしかしたらイギリス陸軍は骨抜きになるのでは?」というもの。イギリス人の紅茶好きは知識として頭にあったが、そんなバカな……と思って調べてみると、色々と面白いことが分かってきた。



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チャレンジャー2
チャレンジャー2

元々イギリスには緑茶が先に伝えられたが、紅茶は産業革命の過程で労働者階級にも浸透していった。お酒を飲むよりずっと健康的で良い、とのことからだった。さらに砂糖の量産に成功して価格が庶民にも手に入りやすくなるに従い、牛乳と共に砂糖を入れて飲む習慣も広まっていく。

イギリス人の紅茶への執念は、インドを中心とするイギリスの植民地支配・プランテーションシステムによる農場開発を強く後押しすることにもなる(いずれも高品質の紅茶を大量に確保するためだ……もちろんビジネスのためでもあるが)。いわば数世紀にも渡る慣習によって、イギリス人のDNAに刷り込まれたような、飽くなき紅茶への欲求が、イギリス人のメンタリティを形成しているともいえよう。

さて肝心の、イギリスの現行主力戦車チャレンジャー2(Challenger 2)についてだが、写真を見つけることはかなわなかったものの、紅茶にまつわる装備を確認することができた。元々チャレンジャー2は重装甲と共に対NBC(核兵器、生物兵器、化学兵器)戦をも想定し、徹底した戦車兵の保護を前提とした設計が行われている。当然何らかの事情で長期間戦車から外部に出られない場合も想定されているわけだが、そのような事態の際に彼らの魂の源でもある「紅茶」が飲めないのでは一大事! というわけで、「bivvie」と呼ばれる湯沸し器が実装されている(エンジンを止めていても補助動力で稼動可能という優れもの)。

イギリス兵と紅茶イメージこの湯沸かし器、用途はもちろん紅茶を飲むため……ではあるが、他にもレトルト食品を温めることもできる。この仕様はチャレンジャー2に限ったことではなく、センチュリオン(1945年に開発)以降のイギリス戦車・戦闘車両(一部例外アリ)に共通したものとのこと。これはイギリス軍の戦闘車両特有のもので、まさに「紅茶が無ければ生きていけない」彼らの特性を反映しているといえる。

この「イギリス戦闘車両はティーパーティーが出来る設備が整っている」(やや誇張表現)仕様は他国の軍隊から見れば異様でかつうらやましく見られるらしく、2003年のイラク戦争の際に派遣されたイギリス軍の様子を見たアメリカ軍兵士のコメントが【guardian.co.uk】に掲載されている。それによると

「イギリスの戦車や戦闘車両には紅茶やコーヒーを入れたりレトルト食品を温められる湯沸かし器がある。これが我々アメリカ軍を感動させた装備の一つだね。同時に今戦闘において、参加国をより親密にさせた装備でもあるんだ」
「彼らは本当にお茶が好きでね。ヒマさえあればお茶を入れて飲んでいるんだよ。そして私たちにもお茶を誘ってくれるのさ」
「あのお茶こそが、イギリス軍の結束力を高める源に違いないね」

などと、冗談のような話さえ見受けることができる。

そういえば先日【AFP伝】でも、1954年から1956年のイギリス有事対策会議の議事録において「核戦争が起きたら、政府は紅茶不足について最も憂慮すべきである」とし、核による放射能汚染自身の被害よりも、紅茶が不足することに対し「非常に深刻な事態に陥る」と言及されていたと報じられていた。さらに有事対策の食糧備蓄・安定供給リストの中に、パン・牛乳・肉類・油脂類と共に、紅茶と砂糖がリストアップされていたという。

戦車の中にまで紅茶のことを配慮した装備を加えるイギリスの人たち。その紅茶好きの程は世界最強であることはいうまでもない。今後改良・生産されるであろうイギリスの主力戦車においても、仕様要望書に「紅茶が作れる湯沸かし器」が最重要項目としてリストアップされることは間違いないだろう。



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