上場中断は「株価低迷」、断念は「コストと手間がかかる」……上場予定・希望の実状
2009/04/25 11:15
帝国データバンクは2009年4月24日、株式上場予定・希望企業の動向調査結果を発表した。それによると、上場を予定しているが現在中断している企業の多くは「株式市場の低迷」をその理由に挙げていることが明らかになった。一方で「中断」ではなく「断念」した企業の多くは「株式市場の低迷」以上に「コスト・手間の負担」の大きさをその理由に挙げており、上場までのハードルの高さが上場を難しくしている、言い換えれば「ふるいにかけている」ことが分かる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2009年2月17日から3月3日にかけて、各社方法で上場の意向がある・ありそうに見える企業4346社に対して調査票郵送方式によって行われたもので、有効回答社数は1605社。実際に上場の予定・計画・希望があると回答した企業は860社だった。
その860社のうち「上場準備を中断・時期を延期している」238社、860社には含まれていないが「具体的な上場予定があったが断念した」163社にそれぞれその理由を尋ねたところ、前者では「株式市場の低迷」、後者では「コストや手間の負担が経営を圧迫」という回答がもっとも多かった。
上場予定中断と断念の理由
まず「中断・延期」の理由では「市場低迷」「収益悪化」が多くを占めている。景気の後退に伴う市場の低迷が上場メリットを薄め、それと同時に自社の収益も悪化して上場基準を満たせなくなるという、ダブルパンチで上場企業予備軍が「待ち」の状態にあることが分かる。
一方「予定はあったが断念した(上場取りやめ)」では「上場後のコストや手間」を挙げる企業がもっとも多い。いざ上場とばかりに準備はしてみたものの、手間もコストもかかって仕方が無い、メリットよりデメリットの方が多く、上場でかえって損をしてしまうのではと判断したことによる「上場取りやめ」が、多数を占めていることがわかる。「中断」している企業で第三位に入っていたこの項目が、「取りやめ」ではトップに来ているところを見ると、
・ 〃 手間やコストがかかりすぎる……上場を断念
と判断していることが推測される。
【新興市場再生の「五つの提言」をチェックしてみる】でも、元記事で上場企業の「上場コスト」削減をうたっているが、実際にコストが企業の上場において大きなハードルとなっていることが分かる。
とはいえ、そのコストが一概に「悪しきもの」と断じることもできない。公正な市場形成のために用意されたルールを遵守するのに必要な「経費」であって、有象無象に企業が続々と上場して市場を混乱させるのを防ぐハードルの一つとしての役割も果たしているからだ。
2008年の新規上場社数は49社で、これは2007年の121社から半分以下に減っている。50社を割り込んだのは、バブル崩壊後の市場低迷で上場が一時停止された1992年の26社以来16年ぶりだという。それだけ市場・企業業績が冷え込んでいる表れでもあるが、だからといって無理に背伸びして(させて)上場したのではその企業自身、そして投資家にとっても不幸に他ならない。
上場企業の数が減ったからといって規制を無理やりいじり上場数を増やすような、景気の動向に無理に逆らうことはせず、自然に波に乗る形で各企業の判断に任せた方が、中長期的な視点で見れば「不幸な」企業や投資家を増やさずに済むのではないだろうか。
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