「ピザ4切れ880キロカロリーです」イギリスで外食産業がカロリー明記を開始

2009/04/14 04:35

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外食店でのカロリー表示イメージ【米マクドナルド、商品の包みにカロリーや栄養成分表示】などにもあるように、海外では外食産業を中心に食品の栄養成分を明記する動きが進んでいる。肥満解消が国家的な問題として浮上するほど深刻になりつつあるというのがその理由。イギリスでも2009年4月6日に、以後数週間以内に大手ファストフード・コーヒーチェーン店が自社メニューにカロリーを表示することになった。しかし一方で専門家は「カロリーだけではなく、脂肪分や砂糖、塩分含有量も表記しなければ意味が無い」と指摘している(【Mail Online】)。



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具体的には18社(有名どころではケンタッキーやピザハット、サンドイッチのサブウェイなど)の企業が「政府の指示に従いカロリー表記を行う」という主旨の署名にサインをし、月末からメニューや陳列棚にカロリーを表示する。6月には450店舗以上がカロリー表記の上、商品を展開する予定。

ただし署名は「あくまでもテストケースとして」という条件付けも行われているため、各企業がいつでもカロリー表記を止めても良いことになっている。政府側としてはあくまでも履行を続けて欲しいし、他の企業にも参加を望んでいる。そしてあまりにも「カロリー表示」を行う企業が少なかったり取りやめる傾向が見られるようなら、強制力のある法律制定をも考えねばならないとしている。健康省のDawn Primarolo大臣も「皆が皆、外食チェーン店で食事をしたりテイクアウトの食品を買うとき、それらにどれくらいのカロリーが含まれているのかを知りたがっている」とコメント。カロリー表示がお客のニーズにもマッチすると説明している。

大臣は続ける。「最初に参加した企業にとってカロリー情報の提供は、お客に健康的なカロリーを提供できるような商品開発を促進させることだろう」。実際、似たような政策がアメリカ・ニューヨーク市で施行されたあと、一人の注文あたり平均で50-100キロカロリーの取得カロリー量の減少傾向が見られたという。

外食店でのカロリー表示(アメリカの事例)イメージ一方、複数の専門家からは、カロリーだけでなくもっと多種の栄養成分の情報を提示すべきだという意見が寄せられている。いわく、スーパーマーケットの買い物客がチェックできる情報と同じ、具体的にはカロリーだけでなく脂肪、砂糖、塩分の含有量も外食において表示すべきとのこと。具体的な例として挙げられていたのが(イギリスの)ケンタッキーフライドチキンのセット。チキン3ピースとフライドポテトのセットは、カロリーにすれば865キロカロリーで男性成人の必要カロリーの大体1/3で済む。しかし塩分は3.5グラム相当で、一日必要摂取量の1/2以上を占めている。そして塩分の採りすぎは高血圧や心臓病のリスクを高める可能性がある。

これらの指摘を受けて健康省側でも「カロリー表記は国民を健康に導くための第一歩として歓迎すべき。ただし今後はさらに企業に『善処』を求めねばならない。脂肪、砂糖、塩分の含有量、さらにはそれらが一日の必要量のうちどれくらいの割合に相当するのかを情報として提供する必要があるだろう」と語り、今後さらなる「指導」をしていくことを表明している。

外食産業側の反応もさまざま。サブウェイのマーティィング部部長のAlex Cacouris氏は「私たちは健康的な食生活を送れるような選択肢をお客に提供するよう心がけている。カロリーなどの栄養成分の表記も、この方針にのっとったものだ。今回の『テストケース』は、栄養成分の明記がお客の商品選択にどれほどの影響を与えるのかを推し量る良い機会になる」と肯定的に受け止めている。

一方で、レストランのレビューサイトを運営するBen McCormack氏は否定的な考えを示している。いわく「ご馳走を食べにレストランに足を運んだ人が、頼もうとした食事が1000キロカロリーもする、と言われたらどうすると思う? ほとんどの人がしり込みしちゃうよ」とのこと。理解できなくもない話ではある。



実はこの元記事、掲載されたのは4月7日。イギリス読者の反応を見た上で紹介しようと思いしばらく待ったのだが、結局2件しかコメントが寄せられなかった。1件は「外食産業は値段ではなくカロリーでもレシートを出すべき」、もう1件は「ドイツではすでに導入されていて、ハンバーガーはもちろんケチャップの袋まで、各種栄養情報が記載されている」というものだった。

日本ではむしろアレルギーに反応する食材(アレルゲン)に対する表記が先行しており、カロリー表記はあまり見られない。もちろん昔と比べれば情報開示という観点では進歩しており、例えばファミレスのメニューを良く見ると、多くの店舗でカロリーと塩分量の表記を見つけることができる。しかし全体的にはまだ未対応の企業がほとんどで、公式のウェブサイトに掲載していれば良い方。カロリー表記のみで、塩分や糖分・脂肪分についてはまったく言及されていないところも多い。

「正直にカロリーなどの情報を提示したら、お客の腰が引ける」。これは一理ある。しかし同時に、「腰が引ける」ものを提供しているという自覚が、企業側には必要。お客の腰が引けるということは、お客のニーズとは食い違いが生じていることを示している。カロリーなどを明記してもお客が敬遠しないようなメニューを創意工夫して生み出す姿勢こそが、これからの外食産業には求められているのだろう。


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