【更新】求人誌からネット求人へ・求人広告の媒体比率など
2009/04/11 17:25
【アルバイトタイムス(2341)】は2009年4月9日、2009年2月期における決算短信を発表した。売上の大幅な減少で最終利益は赤字に転落、次期決算予想も黒字回復は難しいとあり、求人市場の困難さを認識できる決算内容となっている。その[決算短信(PDF)】]において事業環境を説明するため、全国の求人広告件数の推移などが全国求人情報協会の資料を元に作成されていた。その内容が非常に興味深い内容だったので、データを探して詳細なものを生成することにしたわけだが、今回は媒体毎の求人広告の変移をグラフ化することにした。
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元資料は[全国求人情報協会の資料発表ページ]。すでに同ページでは2007年度からの、媒体別のグラフがそれぞれ掲載されているが、ここでは4媒体をまとめ、さらにもっと昔のデータからのものを作ることにする。
まずは単純に4媒体(有料求人情報誌、フリーペーパー、折込求人紙、求人サイト)における求人件数の推移。月毎の特性による凸凹はあるが、有料求人情報誌が減少の一途をたどっていることや、2008年夏以降各媒体とも急速に求人広告数が減少しているのが分かる。
媒体別求人広告構成比(件数)
特に有料求人情報誌はこの5年足らずの間に掲載求人件数が1/4にまで落ち込んでいる。一方で、フリーペーパーのビジネスモデルを支える同紙の求人広告件数は着実に増加していたが、2008年の夏以降は落ち込みを見せているのが分かる。また、求人サイトもしかり。
同じデータを積み上げ型にしたのが次のグラフ。
媒体別求人広告構成比(件数、積み上げ型)
有料求人情報誌の減少分をフリーペーパーがカバーし、求人サイトが全体の求人数を上乗せしていたことや、2008年後半以降は媒体種類の違いに関わらず件数が落ち込み、全体値をも下げているのが確認できる。
件数だけを見ても、求人サイトの伸びが著しい事は分かるが、それをさらにはっきりと認識できるのが、次のグラフ。各月毎の求人件数全体を100%としたとき、各媒体の求人件数を%で表したもの。
媒体別求人広告構成比(比率)
2006年3月まで、つまり2005年度までは求人サイトの求人件数割合は1割にも満たなかった。しかし2006年4月、つまり2006年度から大きな戦略転換が起きたようで、一挙に2倍以上の伸びを見せている。元々この年は求人件数そのものも増加しているが、2倍にまでは増加しておらず(せいぜい前年同月比で3割増程度)、何らかの形で求人業界に大規模な改変が起きたものと思われる。
また、この「2006年4月」は他の媒体同士の関係も変化を迎える時期でもあったといえる。直前で触れたように、2006年4月までは「有料求人情報誌の減少分をフリーペーパーが穴埋めする」形を見せていた。しかし2006年4月以降は「有料求人情報誌の減少分を求人サイトが穴埋めし、残りをフリーペーパーが埋める」形となっている。
原因としては一般の広告業界同様に、求人サイトの方が「安価」「費用対効果が把握しやすい」「手間がかからない」「広告を流す媒体側も経費が少なくて済むので、さまざまなキャンペーンを打てる」などのメリットがあること、そしてこの時期以降インターネットそのものの普及率が高まり、これまで以上に求人サイトの有効性が注目を集めるようになったからだろう。
企業側が人員をできるだけ抑える方向にあるため、昨今の求人広告の出稿状況は非常に厳しい状態にある。企業は求人を行うにしても、経費は可能な限り押さえ、しかも効果が見える実感を望んでいる。そして求職側も一昔前は「求人サイトは便利だが最終的にはやはり有料求人情報誌で」という風潮だったが、今や求人サイトでの求職活動が当たり前の時代になりつつある。
有料求人情報誌が消えてなくなるということは無いだろう。しかし時代の流れは便利な・効果が分かりやすい・安価な求人サイトに向かいつつある。そして昨今の景気後退による求人そのものの減少が、業界への大きなストレステストにもなり、業界全体への大変革を強く求める形となっている。とりわけ求人件数減少に歯止めがかからない有料求人情報誌は、積極的に他の媒体との連動性を模索するなり、有料求人情報誌ならではの特性を活かす工夫をしなければならないといえよう。
……ある意味、一般の雑誌と抱えている問題は同じ、ということだ。
■参考記事(外部):
【アルバイトタイムス 決算(ちぎっては投げ)】
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