石炭価格の下落で年間7000円家計が助かる!? 企業も1.5兆円の増益見込みか

2009/04/10 04:25

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石炭イメージレバレッジ取引の暴走で商品先物市場が大混乱におちいり、資源価格が暴騰を続けた昨年後半までの勢いとはうって変わり、資源価格は急落を極め、最近になってようやく落ち着きを見せるようになってきた。「景気後退」「資源消費量減少」「供給過多」「資源安」という循環、あるいは「経済の見えざる手」がうまく作用し始めた結果といえる。ガソリン価格の下落は身近なところでもっとも実感しているところだが、一方で普段世間一般にはあまり見かけない石炭価格の下落が、景気にとってプラスの波及効果を生み出すであろうとのレポートが【第一生命経済研究所から2009年4月7日に提示された(PDF)】。興味深い内容であるので、ざっとかいつまんで紹介してみることにする。



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ダウ・ジョーンズの石炭先物指数
ダウ・ジョーンズの石炭先物指数

冒頭でも触れたように、2007年夏のサブプライム・ローンショックをきっかけに急落した株式市場から逃れた資金が商品先物市場になだれ込んだため、それ以降2008年夏まで資源価格は暴騰。その後、過熱感からの売りや証券市場の損失穴埋め・ファンド解約用の資金確保などの理由から一斉に売り込まれ、一時期はオーバーシュート的な下落を見せた商品市場だが、現在は金(ゴールド)以外は落ち着きを見せつつある。商品種類によって違いはあるものの、価格はほぼ直近最高値の数分の一の水準にまで落ちている。

さらに石炭に限って言えば、中国やインドの景気後退で需要が減り、一方で主要産出国オーストラリアの供給量増加で需給バランスが崩れ、石炭価格は2008年度と比べてほぼ半額にまで落ち込んでいるという。

石炭は石油と同様に「燃料」として用いられる。今や石油にお株を奪われているかのような印象もあるが、舗装材料や火力発電所、鉄鋼関連、化学製品や肥料など多くの場面でいまだに大活躍をしている。これらの分野において石炭価格が半減することは、企業の負担を大きく減らすのと同時に、商品価格の値下げも大いに期待できる。レポートでは「石炭価格が5割減」「そのうち半分が製品価格の値下げに結びつく」と仮定した場合、家計の負担減少額は年間7016円と算出している。とりわけ電力の負担減が大きい

石炭価格が半減した場合における家計の1年当たりの負担減試算
石炭価格が半減した場合における家計の1年当たりの負担減試算

さらに、価格に直接反映されなかった(と試算している)「残り半分」によって、産業全体では約1.5兆円の増収要因となるという。もちろん石炭と関連の深い業界の方が影響も大きく、トップは「電気・ガス・熱供給」の約3000億円となっている。

石炭価格半減・負担減の半分を商品価格に反映させた場合の、各部門の増益額
石炭価格半減・負担減の半分を商品価格に反映させた場合の、各部門の増益額

そしてこれらが波及効果を生み出すことで、GDPも2009年は0.08%・2010年は0.10%・2011年は0.08%上乗せされるというシミュレーション結果を伝えている。

これらの状況を前提に総合的に見て、石炭価格の下落に関してレポートでは

特に部門別に見れば、「電力」「石炭製品」「鉄鋼」「窯業・土石製品」「建設」といった部門の大きな増益要因となる。また、我々の日常生活に関連する分野としては、電気料金や小売・飲食店・娯楽サービス等の値下げを通じて購買力を向上させる可能性もある。従って、石炭価格の下落は景気底打ちの局面にある日本経済に対する大きな支援材料になると考えられる。


国内需要の殆どを輸入に依存する石炭価格が下落するということで、日本経済はその恩恵を受けやすい環境にあるといえる。世界経済が停滞する中で、石炭のような輸入に依存する資源の価格が下がれば、資源の多くを輸入に頼る日本経済にとっては海外への所得移転の減少を通じて大きな支援材料となる。

とコメントしており、景気回復の足がかりの一要素になりうるとまとめている。



先に発表された【最新の景気ウォッチャー調査】でも、雇用関連指数はまだ厳しい状態が続いているが、小売や企業関連では明るい兆しを予見させるようなコメントもちらほら見え始めている。少なくとも数字は数か月前の最悪期を脱していることは覆しようも無い。また、【3月23日に発表された内閣府のレポート】でも、資源価格そのものの値下がり、さらには円高が物価を押し下げていることを報告している。

石炭採掘イメージ雇用の面においては同じく第一生命経済研究所の別レポート【平成21年度における家計収支の変化(PDF)】にもあるように、「物価が下がって政策が打ち出されても、それ以上に賃金が下がったら帳消しになってしまう」という懸念もある。今件で言えば「石炭価格の下落で物価が下がって企業の収益が改善されても、手取りがそれ以上に減ってしまうと購買意欲があっても『無い袖は振れない』よ」ということだ。

今回取り上げられた「石炭」はもちろん、石油や小麦など(【小麦の政府売り渡し価格、4月からは14.8%引き下げ】)、生活に直接結びつくような資源も下落し、それに連動する形で商品価格も落ち着きを見せつつある。原材料の価格下落スピードと比べて商品価格の下落速度・率が少ないとはいえ、徐々にその効果も浸透してくるだろう。少なくとも「右を見ても左を見ても不景気な話ばかり」という状況からは、あるいは脱しつつあるのかもしれない。



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