株主優待制度は「株式の長期保有」を促進するか
2009/04/05 09:30
【野村證券(8604)】の金融経済研究所は4月2日、個人投資家の投資動向に関するアンケート調査とその結果の分析報告レポートを発表した(【ノムラ個人投資家サーベイ・2009年2月計測分、PDF】)。それによると、調査母体の中では「株主優待制度のある企業に対する投資方針」としては、株価水準をあまり意識せずに、長期で保有するとの回答がもっとも多く約4割を示していた。優待制度の導入は、ある程度株主の足を留める効用を果たしているようだ。
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今調査は1000件を対象に2009年3月20日から23日に行われたもので、男女比は70.7対29.3。年齢層は40歳代がもっとも多く35.4%、ついで30歳代が25.7%、50歳代が23.0%など。金融資産額は1000万円-3000万円がもっとも多く25.6%、200万円以下が21.2%、200万円-500万円が19.9%と続いている。1銘柄あたりの保有期間は2年から5年未満がもっとも多く34.4%を占めている。次いで5年以上が21.4%、1年から2年未満が15.8%。投資に対し重要視する点は、安定した利益成長がもっとも多く51.5%と過半数を占めている。ついで配当や株主優待が25.5%となっており、テクニカルや値動き、高い利益成長といった項目より安定感を求めている。なお調査母体においては、年齢層が比較的高めで、投資スタンスが中長期傾向にあることを念頭においておく必要がある。
株主優待制度は企業の事業内容を商品の提供で知ってもらうと共に、配当とは別の特典を設けることで、(出来れば企業側に好意的な)安定株主になってもらいたいという意図もある。【株主優待制度充実へ・過去最高、買収防衛の側面も】などにもあるように、【カゴメ(2811)】の事例などが有名だ。
それでは投資家の立場から見て、株主優待制度のある企業の株式への投資方針はいかなるものだろうか。調査母体では1銘柄あたりの平均保有期間は「2年-5年未満」がもっとも長いのだが、「優待制度がある」という条件付けをしたところ、40.2%の人が「株価が上下してもそれを意識せず、長期で保有する予定」と回答した。企業が求める理想的な「株主優待制度導入の効用」は最大で4割ほどの株主に対して効いているようだ。
株主優待制度のある企業の株式への投資方針
「保有していない」は別にして、株価の上下の度合い次第で売り抜ける人は26.0%、「ケースバイケース」が28.3%とそれぞれ3割近くを占めている。企業側にすれば株価がどのように変動しても、「売りたくなるような状況」が生じても株主でい続けて欲しいというのが本音だろうが、優待制度でハートをつかめる人の割合は最大でも4割程度に留まることになる。
これが優待制度の成果として十分なのか、それとも不足しているのかは企業毎の判断によって違ってくる。また、優待制度の内容によって、その銘柄を売るか売らないかという判断も大きな変化を見せるだろう。例えばちょっとしたプリペイドカード程度なら「株価が上がったから売ってしまおう」という人は多いだろう。一方、「株主だけのコンサート」「自社新商品の試食会」「特製・非売品のプレミアアイテムの提供」などの優待なら、それこそ「株価がどんなに変動しても売らない」人の割合は大きく上昇するに違いない。
「最大4割」はあくまでも一般論ということで、より具体的な値はまさに「ケースバイケース」になる。が、株主優待制度そのものの全般的な効用という観点では知っておいても損ではない結果といえよう。
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