今年倒産した上場企業(2009年3月31日版)

2009/04/01 12:05

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倒産イメージ(2009年3月31日版)昨年2008年は最終的に33件(上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めると34社)の上場企業の倒産が数えられ、これは1年間の数としては戦後最高数を記録した。不動産関連市場の不調さをはじめ、さまざまな、世界的な規模のマイナス要因が重なった不運があるとはいえ、株価動向とあわせ少々常識から外れていると表現せざるを得ない。しかも今年は現時点において、その前年2008年を上回るペースで上場企業が破たんし、「退場」している状況にある。今年で第三回目となる「今年倒産した上場企業」において、期間的にはまだ一年の1/4しか経過していないのにすでに14社を数えている現実がどのようなものなのか、少しでも把握できるようグラフ化することにした。



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まずは今年に入ってから、3月31日時点の上場企業における倒産企業一覧。1月に4件、2月に7件、3月に3件。合計で14件となる。

2009年における上場企業の倒産一覧(3月31日時点)
2009年における上場企業の倒産一覧(3月31日時点)

なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類してもあまり意味をなさず、むしろまとめた方が状況を把握しやすいというのがその理由。

次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。

2009年に倒産した上場企業の負債額区分(3月31日時点)
2009年に倒産した上場企業の負債額区分(3月31日時点)

不動産、建設など「不動産・建設」絡みが多いのは周知の事実だが、今回のデータでも「その他」の区分が異様に増加しているかが分かる。これは先月コメントしたように、SFCG(8597)の負債総額があまりにも巨額で、大きな影響を与えているからに他ならない。また、昨年のデータの名残で「サービス」が項目化されているが、今後複数社が同一区分内で該当する事態になれば、そちらを独自項目化する予定。

負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる。また、前回のデータと比べると棒グラフそのものが長くなっており、「上位10位」の負債額が増加しているのも分かる。要はところてん式に額の小さな企業が押し出され、上位陣の数字が上がっている状態だ。

2009年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(3月31日時点)
2009年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(3月31日時点)

10社のうち建設2社・不動産6社と、不動産・建設関連が8割を占め、それらがいずれも上位に顔を見せている。今年も不動産・建設の大型倒産が相次ぐであろうことを予見させるグラフである。特に3月は、不動産関連企業が相次いで倒れ、割合を大きく増加させることになってしまった。

それと同時に、先月筆頭に躍り出てしまったSFCGがいまだに最上位に君臨していることも見逃せない。つまりSFCGの負債規模がそれだけ巨大ということだ。

続いて月ベースでの上場企業の倒産件数。冒頭で「2008年を上回るペースで」という表現を使ったことが分かるように、先月同様昨年の実測値と並べて棒グラフ化することにした。

2008年における上場企業倒産件数(3月31日現在)
2008年における上場企業倒産件数(3月31日現在)

昨年の上場企業の破たん傾向が後期から加速化し、それが継続状態であることを考慮しても、今年の状況が「季節毎の特性」を超えたものであることが分かる。むしろ昨年9月-10月の状況が再来したかのようだ。3月は「年度末を越えられずにばたばたと……」という懸念もあったが、3件で事が済んだのが不幸中の幸い(!?)ともいうべきか。ただし、倒産以外の事例で株式市場からの退場を余儀なくされた企業も複数存在している(モック、IBEHD、アーティストハウスHD)ことは知っておく必要が有ろう。

最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)を乗じた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんど無くなり、破産ならほぼ資産価値はゼロとなる。民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止後に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。

そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になるとみなし、そこに投じられた資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは疑いようもない)、計算してみることにした。突然破たんとなれば株主の売りぬけの機会も無く、この値は大きくなる。一方で倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき、手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。最近では特に新興系の銘柄において、倒産事例よりしばらく前に不自然な株価の上下が見受けられ、色々と勘ぐりたくなるような状況が多数報告されている。

2009年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(3月31日現在)
2009年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(3月31日現在)

・今年も「不動産」が
注目の業種に。
・SFCGの与えた影響が
桁違いに大きい。
・今年は多業種に
展開の可能性。
前回2月28日の記事同様に「その他」セクターの比率が異様に高い。これは繰り返しになるが2月23日早朝に民事再生を出したSFCG(8597)の発行株式数・株価が共に大きく、時価総額が約158億円に達していたため。なお同社は民事再生発表の直前(正確には最終営業日の昼間)に代表権を持つ社長兼会長が突然代表権の無い会長に退くなど、何かと疑問視される動きが指摘されている。また、前回と比べて「不動産」の割合が増加しているが、これも繰り返しになるが3月の倒産事例はすべてこのセクターだったため、単純に加算されたことによるもの。



3月末の時点ですでに14社を数えた上場企業の倒産だが、有価証券報告書提出未了などによる上場廃止はカウント対象外となっている。去年から「倒産以外の事由による上場廃止」の案件も増えており、上記に列挙した3月分の3件はアーティストハウスHD(3716)が事実上の業務停止(事業の大半を他社に売却)、IBEHD(2347)は粉飾、モック(2363)は時価総額基準をクリアしなかったことにより上場廃止を宣告されている。

【株価低迷で東証が上場廃止基準などを緩和へ】などにもあるように東証側では、全体の株価低迷を考慮して上場基準の一時的な緩和措置を実施中だが、これで倒産事例そのものが減少するわけではない。多くの企業の期末である3月は無事にクリアできても、期末決算発表と株主総会が集中する月である5月-6月に向けて、企業の内部関係者はもちろん、投資家も引き続き注意深い態度が求められよう。



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