「百貨店でモノを買う理由は?」を考えてみる
2009/03/31 04:35


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今調査は2009年3月1日から5日の間にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1万5606人。男女比は46対54で、年齢階層比は30代36%・40代29%・50代以上19%など。
百貨店、そしてほとんど同義で使われているデパート・スーパーなどのチェーンストアでは、現在衣料品や住関品の売れ行き不振が大きな問題となっている。その「売れ行き不振」の原因は、別記事で挙げたように「他の業態店舗にお客が逃げていく」現象が起きているから。ではなぜお客が逃げていくのか。行き先の店の方が百貨店よりもメリットがあるのがその理由だが、逆に考えればその点において百貨店にはデメリット、つまり不満点があることになる。
その「不満点」を尋ねたところ、もっとも多いのは「価格が高い」で全体の75.1%もの人が同意を示していた。実に4人に3人は百貨店に対して「価格が高い」と考えていることになる。

百貨店に対する不満点
多種多様な選択肢が用意されていたが、目立った回答はトップの「価格が高い」と第二位の「店員がわずらわしい」。事実上この2つが「百貨店の問題点」と見なして良いだろう。
では逆に、百貨店のメリット・魅力とは何だろうか。こちらは多少分散しており、「高級感がある」「商品の品質が良い」「付帯設備が充実している」などが上位についている。

百貨店に対する魅力
●不満点と魅力が分かった。ではそこから何が考えられるか
不満点・魅力の双方を挙げた上で、これらの項目から、百貨店の問題点を探ってみることにしよう。まずは両グラフで赤く着色した部分を再度確認してほしい。これらは不満点・魅力共に、「百貨店ならではの特徴」に他ならない。つまりハイソ感・リッチ感のある、きめ細やかなサービスや商品の提供に(とりわけ)該当する。センスや品揃えは他の業態でも可能であるし、ポイント制度の充実や雰囲気などは小売業全体で対応できるレベルの、ごく当たり前の話。
その上で、「価格が高い」という不満点について考えてみる。この不満点の詳細を数字からだけで推し量ることは難しいが、「サービスなど二の次で良いから、とにかく安いものが欲しい」「それなりに代金は出せるが、この品質・サービスでは割が合わない」の2通りが考えられる。前者の場合は百貨店という業態では対応しきれないので、インターネット通販やアウトレットモールに移行してしまっても仕方が無い。高級レストランで立ち食いそばを求められても応じきれない、ということだ。
うざがられている。
↓
接客態度・教育・方針の問題?
その推測を裏付けるのが「店員がわずらわしい」の値が高いこと。本来百貨店では店員が店舗内を巡回し、「適切な」サポートをお客にすることが特徴の一つ。いわば店内に居るだけで、お客は無料でサービスを受けられるわけだ。本当に店員の「声かけ」が不必要なら、わざわざ百貨店におもむく必要はないのだから。緻密な店員のケアが百貨店のメリットでもある。
ところがそれを「邪魔」と考えているお客が多いということは、それだけ「適切なタイミング」での「声かけ」が出来ていないことを意味する。一言で表現すれば「接客のまずさ」。
魅力のポイントを見返してみれば分かるように、物理的な品揃えはもちろんだが、それ以上に「高級感」「設備充実」「接客」など、直接の商品以外の特徴を百貨店来訪者は気に入っている。ここに百貨店が、ライバルたるインターネット通販や各種モール、ショッピングセンターでは提供し得ない長所であり特徴がある。
このあたりは【消費スタイル調査から読み解くデパート不調の原因】の後半部分でも触れているが、「商品を単に買うだけでなく、専門家のきめ細やかなサポートで得られるプラスαのサービス」こそが百貨店、そしてデパートにお客が求めている点であり、今現在において「不足している」とお客に思われている点ではないだろうか。
もっとも昔と違い、さまざまな手段で情報化が進んだ現在においては、専門家の意見に近い情報をインターネットや専門書で気軽に手に入れることができる。あるいは情報化社会の進展が、専門家による「きめ細やかなサービス」をセールスポイントとしている百貨店を不調に追い込んでいるのかもしれない。簡単に言いまとめると「百貨店の店員(専門家)に聞かなくてもネットで調べるから、あとは探したものを安い店で買おう」という具合だ。

しかし「百貨店のお客が魅力として感じているポイント」の上位項目が、その類のサービスを求めることを肯定している。費用対効果の面などクリアしなければならない問題は多いが、一考に価するものと思われる。
……なんかごちゃごちゃして分かり難い、という場合「百貨店にはリッチな商品・リッチなサービス・ゴージャスでプロのアフターケアを求める客・ニーズが多いのだから、その期待に応えるだけの品・サービス・アフターケアを提供できる体制作りが必要」「費用対効果を考えると、セレブ相手のビジネス中心にならざるを得ない」と書き直せば分かるだろうか。イメージとしては『王様の仕立て屋』の主人公が顧客に行う「仕立てを中心にした、お客そのものを満足させるサービス」(の高級版)というところか。
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