【更新】人口の高齢化、割合が高いのは西日本南部、では「高齢者人口」が多いのは……?
2009/03/29 16:00
総務省統計局では定期的に多種多様なデータを公開しているが、時として単にデータだけでなくそのデータからつかみとれる事象、あるいは「見せ方」を明らかにしてくれる。先日公開された【統計Today No.4 地域の高齢化の実態を「見える化」する】もその1つで、国勢調査のデータを元に地域の高齢化がどのような状態にあるのかを、日本地図上に投影して認識するという主旨のものだった。出てきた結果が非常に興味深いものだったので、ここで見直しをしてみることにする。
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資料として用いられたのは[2005年の国勢調査の結果(PDF)]。これを市区町村区域と1キロメートル四方のメッシュ(四角形の区切り)の2通りで、「65歳以上の人口割合」と「同人口(数)」それぞれについて地図化している。ここではより細かく状況が把握できるメッシュの地図をピックアップしてみよう。
65歳以上人口の「割合」が50%以上の地域
50%の割合、ということはその地域四方1キロ以内において住んでいる人を数えたら、そのうち半数以上が65歳以上という計算だ。仮に周囲四方に自分の一家しか住んでおらず、自分自身の家族に65歳以上がいなければ「該当せず」となる。自分ともう一世帯しかおらず、その「もう一世帯」が65歳以上なら「1÷2=0.5」なので「該当する」という計算。100人いたらそのうち半数である50人が65歳以上でなければ「該当する」にならないので、案外ハードルは高そうに見えるが、結果を見ると山間部、特に九州南部・中国・四国地域に多いことが分かる。あとは中部の山間部にもやや多めの地域があるが東北部は点在、北海道は分散しているようにも見える。
しかしこれを「人口(数)」、つまり人数そのものの多い少ないで見ると、まったく別の結果が出る。図では同じく1キロ四方において65歳以上の人が400人以上いる場所を「該当する」としたところ、都心部に「該当する」地域が集中していることが確認できる。
65歳以上人口の「人数」が400人以上の地域
先の「割合」の例なら、1キロ四方に65歳以上が399人・65歳未満が1人という、超高齢化地域(99.75%!!)だったとしても、400人以下なので「該当せず」になってしまう。逆に団地などの人口密集地帯で高齢者が多い場合、5000人のうち400人の65歳以上人口が確認されれば、例え割合が8%に過ぎなくとも「該当する」となってしまう。
つまりこの地図の場合、「高齢者の比率はまったく関係がなく、純粋に人数を調べたい時には役立つ」ものの、「地域の高齢者の割合を調べたい時には無益」の地図となってしまう。
例えば高齢者向けの商品を展開したい場合、対象の絶対数(お客予備軍)が多い方が良いので、都心部に重点を置いた方が無難ということになる。逆に、行政機関が「冬の雪おろしはお年寄りだと大変なのでボランティアを派遣したい」という場合には「お年寄りの割合が高い地域」に派遣した方が、より多くのニーズに応えられるだろう(高齢者の人数自身が多くとも、それ以上に中堅・若年層が居れば、彼らによる手助けが期待できるからだ)。
高齢者問題というと真っ先に山間部における過疎地域が頭に思い浮かぶが、「絶対数」から見ればむしろ都心部で状況は進展している。「割合」と「数」を混ぜることなく、別々の問題として取り扱い、どちらの視点を重視すべきか考えた上で判断をすべきという良い事例といえる。
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