新聞を 読まない人の その理由 「テレビで十分」 若きはネットも
2009/03/16 04:40
財団法人新聞通信調査会は2009年3月6日、「メディアに関する全国世論調査」の結果を発表した。それによると、調査母体の中で新聞を読まない人が、その理由として最も多くの人が挙げた選択肢は「テレビを中心とした他の情報で十分」で6割近くを占めていた。年齢階層別では全年齢層でテレビの影響が大きい一方、若年層ではインターネットも大きく影響していることが見て取れる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2008年12月に住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の男女個人3000人に対して専門調査員による訪問留置法で行われたもので、有効回答数は1906人。男女比は47.7対52.3で、男女比は30代以上が10歳ごとにほぼ均等割当、18-19歳と20代はやや少なめとなっている。(18-19歳が44人、20代220人など)。
【新聞を毎日読む人6割強、二十歳以下では3割に達せず】にもあるように、新聞を週一以上読む人は8割を超えている。逆に週一回以上読まない人は14.5%に達している。この14.5%に「なぜ新聞を読まないのか」について、複数選択式で尋ねた結果が次の通り。「テレビを中心とした他の情報で十分」がもっとも多く、6割近くを数えた。
新聞を読まない理由(複数回答)
このデータからは「新聞の最大のライバルはテレビ」であることが分かる。とはいえ、大抵の新聞社はテレビ局と一体化しており、ある意味内部矛盾を抱えた存在になりつつあるともいえる。
一方、テレビからはやや落ちるものの、「インターネットを中心とした他の情報で十分」という回答も4割に達している。元リリースにもあるが、インターネットの浸透が新聞離れの一因と考えることもできる。
これらの「新聞を読まない派におけるその理由」の回答を、男女別・年齢階層別に見ると、ある意味興味深い、ある意味納得の行く結果が見えてくる。
新聞を読まない理由(複数回答、性別・年齢階層別)
男女別ではやや女性の方が「テレビ」を理由にしているのが分かる。それより注目すべきなのは年齢階層別。テレビによる影響力がほぼ全年齢層にいきわたっているのに対し、若年層ではインターネットを理由にしている人も多いのが確認できる。さらに20代までは、「新聞を読む習慣が無い(から新聞は読まない)」とする人も4割を超えている。
他の調査機関のデータなどから、一般的に若年層がインターネットに深い興味を持っているのは周知の事実。また、【新聞社のウェブサイトを見る人、全体では3割近く・30-40代は4割前後にも】にもあるように、新聞社のウェブサイトも若年層-中堅層の閲覧率が高い。選択肢は「インターネットを中心とした」ではあるが、回答者の少なからずが「(新聞社提供のウェブサイトなど)インターネットを-」という心境で回答しているものと思われる。言い換えれば「新聞社自らのサイトで情報入手できるから、わざわざ新聞買うまでもないネ」ということなのだろう。
一部新聞社をのぞけば、公式ウェブサイトに掲載されている記事は新聞掲載分のうち断片的なものに過ぎない。また、ウェブ上には掲載されない記事もたくさんある。さらに新聞には「ざっと読みができる」「探すのが面倒くさい」「地方・地元情報が豊富」というメリットがある。現時点ではインターネットが完全に新聞にとって変わることはないだろう。
しかし例えば【当日の新聞を朝刊配達時に! 産経新聞がiPhone向け新聞配信サービススタート】のように、両者のメリットを活かそうという試みも行われている。そして「地方・地元情報がインターネットには少ない」というニーズに対しては、新聞と地方情報のコミュニティをうまくリンケージさせることで、新たなメディアを生み出す可能性を問題提議しているともいえる。
インターネットという新しいメディアの登場で、既存メディア間も含めたメディア同士におけるパワーバランスが大きな変化を見せている。この変化そのものと、それに応じる読者層のニーズを適切にとらえられる能力と戦略を持った媒体だけが、今後の競争に生き残り、支持を集めていくに違いない。
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