年収ダウン、どれくらいまで耐えられる? 「50万未満」が7割近くに

2009/03/14 18:40

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給与イメージNTTデータ経営研究所は2009年3月13日、正社員の「企業での就労」に関する意識調査の結果を発表した。それによると何らかの事情で年収がダウンせざるを得ない場合、どの程度の額まで耐えられるかという問いに対し、調査母体の中では「50万円未満」という回答がもっとも多く全体で7割近くに達していた。雇用調整の問題などとあわせ、手取りの削減が企業側としても真剣に検討しなければならない課題の一つとなりつつあるが、やはり正社員の立場からすれば「ダウンは出来るだけ少ない方が良い」という当然至極の思いを持っているようだ(【発表リリース】)。



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今調査はインターネット経由で2008年12月24日から26日にかけて行われたもので、有効回答数は1069人。男女比は82.8対17.2で、年齢階層比は20代11.7%・30代37.6%・40代34.1%・50歳以上16.6%。

昨年後半からの加速度的な景気悪化と一部マスコミによる扇情的な報道が拍車をかけ、雇用情勢は急速に悪化しつつある。非正規雇用者はいうまでもなく、正社員たちにまで解雇、あるいは手取り減少の荒波が押し寄せている。また、仕事の作業量が減少する状況下で雇用数を確保するための一つの手段として「ワークシェア」という考え方が論議されているが、こちらも(作業量が減るのだから当然)手取りも少なくなる。

ワークシェアの導入にせよ業績不振による給与削減にせよ、手取りが下げられる可能性が「今、そこにある危機」状態にあるわけだが、それでは実際、具体額として年収が最高どこまで下げられても我慢できるだろうか。全体としては「50万円未満」がもっとも多く68.7%を占めていた。

あなたは年収が最高金額としてどれくらいダウンするまでは耐えられるか
あなたは年収が最高金額としてどれくらいダウンするまでは耐えられるか

実はこの設問、大きな手落ちがある。結果と赤色の補助線を見れば分かるのだが、「年齢が上がるほど」「正社員より管理職ほど」「企業規模が大きいほど」許容額が大きくなっている。これは要するに「元々もらえている金額に対してどのくらいの”割合まで”耐えられるか」という観点で考えた場合、手取りの大きい人ほど耐え易いという当たり前の結果が出ているに過ぎない。

例えば年収300万円の新入社員にとっては50万円もの削減は痛手どころでの話ではない(16.7%)が、定年退職も間近に控えた年収1500万円の取締役にとっては50万円など屁でもない(3.3%)、というところだ。これは同時に「今の年収の何%まで」という設問も行うべきだったものと思われる。

一方、「モチベーション(やる気)」と「評価」の項目では、これもある程度予想がつくとおり、「モチベーション」「評価」が高い方が耐えられる手取額が高い結果が出ている。年収の減少分をやる気や周囲の評価が補っているというところなのだろう。

ともあれ、元々の年収による差異はあれども、どのような条件下でも過半数の人が「年収で50万円未満までしか手取り削減は我慢できない」と回答している。会社側の立場としては、「従業員の給与削減に対する耐久力は極めて低い」という再認識が必要になる。



ところで、この設問では「では耐え切れなくなったらどうするの?」という設定は行われていない。しかし別項目で「どのような境遇になったら転職を考えるか」「会社に対して何を強く求めるか」と尋ねている。それぞれにおいて関連しそうな項目をチェックしてみると、前者では「会社の将来に不安を感じた時」が一位・「会社の処遇・勤務条件が悪いと感じた時」が二位、後者では「給与水準が高いこと」が一位を占めており、正社員たちが給与に関して、きわめてシビアでドライな考えを持っているのが分かる。

そして誰も残らなかった場合イメージこれらのデータを見て、「人員を減らす良い機会だし、給与水準を下げよう。それがイヤなら自主退職してもらおう」という安易な考えが会社側に思い浮かぶかもしれない。しかしその判断は諸刃の剣であり、人員どころか「人”材”」が流出し、残るは「人”罪”」ばかり、企業の事業力が一挙にしぼんでしまう可能性も十分にありうる。例えるなら「雑草を取ろうと農薬を使ったら、育てていた野菜ばかりが枯れてしまった」状態になりかねない。

黙っていても経済と共に経営が順調に進む好景気時代から、状況は一変している、会社サイドは、より一層難しいかじ取りを求められることになるのはいうまでも無い。



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