博報堂最新データから広告売上の変化(2009年2月度版)
2009/03/13 05:00
【博報堂DYホールディングス(2433)】は2009年3月11日、同年2月の主要グループ会社における売上高を発表した。それによると主要3広告会社の売上高は前年同月比18.8%減の652億6300万円にとどまったことが明らかになった。急速な景気後退が足を引っ張る形で既存四大メディアとされる新聞・雑誌・ラジオ・テレビいずれも前年同月比で約-8--40%強ほどの規模縮小を見せる一方で、新メディア媒体の売上高は5%近い伸びを見せるなど、「時代の流れ」を感じさせるデータとなっている。今回は以前[電通(4324)]で行ったのと同じ方式で、博報堂の広告費の流れをグラフ化してみることにした。
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先に【博報堂の2009年2月の売上高】で示したように、博報堂DYホールディングスから発表されたのは、同グループの主力広告会社である博報堂、大広、読売広告社それぞれの広告費。今回はその3社の中でももっとも大きな売上をあげている博報堂本体のデータを参照する。
まずは2月の各業態別売上高。テレビの売上がもっとも大きく198億8400万円を占め、テレビという媒体が(既存四大メディアの中でも、そして全体においても)いかに大きなメディアであるか、そして多くの広告費を展開しているかが分かる。全体の広告費の約4割が、テレビからによるものという現実があらためて確認できる。
博報堂・2009年2月単月度売上高(億円)(既存四大メディアは赤で着色)
ちなみにいくつか解説を加えておくと、
・「アウトドアメディア」……屋外広告、交通広告、折込広告等の掲出料および制作費などの合計
・「クリエイティブ」……「新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット」の広告表現立案および広告制作、広告出演者の契約料など
・「マーケティング/プロモーション」……マーケティング、コミュニケーション、ブランド領域におけるコンサルティング、プランニング、調査業務等に関する取引およびSP、イベント、PR、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)などのコンサルティング、プランニング、実施作業に関する取引など
・「その他」……スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどに関する取引
である。
2月単月となるが、全体に占める各項目の売上構成比を見ると、テレビだけで約4割、既存四大メディアが合わせて6割を占めているのが、より一層分かりやすく把握できる(56.5%)。テレビの広告費の大きさは「広告代理店にとってテレビは運命共同体・一蓮托生である」ことが再確認できる。このあたりの事情は電通と何ら変わるところはない。
博報堂・2009年2月単月度売上高(全体に対する構成比)(既存四大メディアはチェック模様)
印象的には既存四大メディア3・その他メディア2といったところで、新メディアに該当する「インターネット」(携帯電話とパソコン)などはけし粒程度にしか見えない。しかしこのデータを、同時に公開されている前年同月比で見ると、違った印象を受けることができる。
博報堂・2009年2月単月度売上高(各項目ごと・前年同月比)
既存4大メディアはいずれも前年比で大きな減少を見せている。そしてその他メディアも減少は免れていないが、インターネット部門だけが前年同月比でプラスを示している。
そしてさらに、過去二年間分のデータをさかのぼり、業務別の前年同月比比較をグラフにしてみる。
博報堂・業務別前年同月比推移(過去二年分)
博報堂・業務別前年同月比推移(過去二年分、全体と四大既存メディアのみ抽出)
現在の日本においては、大型媒体の広告のほとんどのやりとりが広告代理店経由で行われる。そして博報堂は電通に続き、日本国内では第二番目に大きな広告代理店。会社毎の付き合いや特性もあるが、博報堂の広告動向は電通と同じく、日本国内における広告動向にほぼ連動する(というより大きな影響を与える)ものと見て良い。その上で(博報堂の傾向を通して)見直してみると、色々な広告事情が見えてくる。
・2007年8月のいわゆる「サブプライムローン・ショック」の影響を受けて、2007年9月から数か月の間、広告費が急速に落ち込んでいる。しかしその後、オリンピック特需などもあり、やや持ち直している。2008年3月は企業の年度末調整もあり、大きく伸びている。
・2008年4月以降は景気後退が顕著化し、広告費の削減が顕著なものとなっている。
・「インターネットメディア」「マーケティング/プロモーション」は、景気後退と共に広告費が減少している2008年春先以降も堅調に推移。しかし「マーケティング/プロモーション」は2008年10月のいわゆる「リーマンズ・ショック」を境に大きく減少する傾向に転じてしまっている。
・「新聞」の減少はこの2年間においては、「2007年8月」(サブプラショック)「2008年4月」(年度切り替え)の2回の節目でそれぞれ大きく減少する傾向がある。そして直近の2009年2月は3回目の節目になる気配を見せている。
・「雑誌」は2008年8月以降は一様に低迷している。
・「テレビ」は起伏を繰り返しつつ少しずつ低下を見せている一方、「ラジオ」は下げ幅を最小限に留め、2008年4月以降はほぼ横ばいで推移している。
・博報堂においては、明らかなオリンピック特需はあまり見られないようだ。
特に「雑誌」「新聞」の売上減は無視できないものがある。管理を行い中間マージンを取る博報堂などの広告代理店はもちろん、最終的に広告を発信して広告料をいただく新聞・雑誌自身にとっても頭の痛い問題に違いない。中でも新聞は、この2年の間に2回も急落するポイントを見せており、四大既存メディアの中ではもっとも優先順位が低い=経費削減のタイミングで最初に広告費を削られているのではないかと推測される。
また、売上構成比で4割を占める「テレビ」も状況はあまり思わしくない。当サイトでも何度か記事にしているが、本事業である放送事業による広告収入が首も回らない状態となり、それはそのまま博報堂などの広告代理店の収益にも連動している。唯一今後も伸びが期待できるインターネットや携帯電話関係の広告は、伸び率は先が期待できるが、規模はまだまだこれから成長過程にある段階で、「テレビ」などの他メディアの損失分を穴埋めするにはケタ違いに規模が足りない。
財務状況の悪化が、今後の
広告費の配分を一層シビアな
ものにしていく。
特に新聞は「真っ先に切られる」
ターゲットに認識されている
当然、広告宣伝費も全体額は来年度以降大幅な(現在よりも、だ)削減が行われることだろう。そしてその矛先は真っ先に(絶対額が大きく、削減余力のある)既存四大メディアに向けられる。各メディア、とりわけテレビ・新聞・雑誌への広告出稿費の変化も、これまで以上にシビアなものとなり、それは博報堂など広告代理店の売上にもダイレクトに響いてくるだろう。
博報堂と電通両者の広告費売上の動向については、メディア全体の動きを知る良いバロメーターともいえる。今後とも折を見て、データを追加して流れを見ていく予定である。
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