未上場で有名な企業の業績……(1)文教堂リリースからの出版社

2009/03/11 19:40

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グラフイメージ先に【講談社・徳間書店・旺文社の業績】【文教堂HD(9978)】の第三者割当増資のリリース(【第三者割当による新株式発行に関するお知らせ、PDF】)をもとに、3出版会社の業績をグラフ化したところ、「他社のは無いのか」という意見をいくつか頂いた。そしてその記事中でもコメントしていた『会社四季報 未上場会社版』も最新版が手元に届いた。そこで今回から何回かに分けて、(主に当方の興味が沸いた)未上場で有名な企業の業績をグラフ化することにした。なお各種データは基本的に文教堂リリース、あるいは「会社四季報 未上場会社版」からのもので、各社が自ら公開したものではないため、前者はともかく後者についてはその確かさを検証する手立てが無い。実際のデータとは差異が生じている可能性があることをあらかじめ書き記しておく。



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今回は文教堂の第三者割当増資のリリースで掲載された企業のうち、「前回取り上げた企業以外」で、「講談社・徳間書店・旺文社以外」「売上高、営業利益、経常利益、純利益すべてが公開されているところ」に限定する。売上高のみなど、一部情報のみ公開しているところもあるが、それらまで対象にすると、チェックには材料不足であるのと同時に、他社との差別が生じてしまうからだ。

�探(えい)出版
まずは順番に�探(えい)出版。バイクや自転車をはじめ、各種趣味系の雑誌を出しているところだ。

�探(えい)出版(単位:億円/売上高のみ10億円)
�探(えい)出版(単位:億円/売上高のみ10億円)

頼もしくも売上は毎年堅調に伸びているが、2007年期で業績が一時悪化している。営業利益から減少しているので本業で何かあったように見受けられるが、会社の履歴を見ると、この年に台湾に子会社を設立している。この費用が減少の理由だろう。出版そのものが低迷した、というわけでもなさそうだ。

笠倉出版
ボーイズ系ノベルや女性コミック、パズルやギャンブルなど多種多様にわたるエンタメ系雑誌を発売する出版社。

笠倉出版(単位:億円/売上高のみ10億円)
笠倉出版(単位:億円/売上高のみ10億円)

売上はやや横ばい。それに対して各種利益が急降下で落ちている。同社は書籍以外にビデオやDVDも手がけているが、そちらの部門に何かあったのかもしれない。売上が変わらないのに利益が落ちているということは、どこかで余計に経費がかかってしまっていることに他ならないからだ。

技術評論社
ビジネスやITなど、主に技術系の書籍を出版するところ。言語系の解説書やSoftwareDesignなどで有名。

技術評論社(単位:億円/売上高のみ10億円)
技術評論社(単位:億円/売上高のみ10億円)

売上がさほど変わり無い、というより減少傾向すら見られる中、本業で大きな赤字を出していた体質が2008年期で大きく改善され、これが経常・純利益の黒字転換をもたらしている。会社案内には一切掲載されていないが、この3年間でダイナミックな体質改善が行われたのだろう。

ゴマブックス
ビジネス、自己啓発、スポーツ、参考書など多種多様なジャンルをカバーエリアに持つ出版社。DVDや映画、ネットなどさまざまなメディアにも展開している。

ゴマブックス(単位:億円/売上高のみ10億円)
ゴマブックス(単位:億円/売上高のみ10億円)

業界全体が斜陽ではないかとまでいわれている出版社の業績とは思えないような、健全な成長振り。この3年間で売上、営業・経常・純利益がほぼすべて伸びを見せている。いわゆる追い風が吹いているのかもしれない。

祥伝社
一般書、実用書、文庫などを発売しているが、どちらかというとやや堅めのイメージが強い。

祥伝社(単位:億円/売上高のみ10億円)
祥伝社(単位:億円/売上高のみ10億円)

今回取り上げた他社と比べ、売上高の割に各種利益の割合が小さいのが分かる。いわゆる「売上高営業利益率」が低い。同社が主に発売している書籍の性質上、費用はかかるし、大ヒットセラーも狙い難いところがあり、色々と難しいのかもしれない。

辰巳出版
「スコラ」や「ペンギンクラブ」など、成人向け漫画などで知られている。最近は同じ大人向けでもパチンコや釣りなど、趣味方面にも進出し、書籍などを刊行している。いわゆる「オトナの出版社」。

辰巳出版(単位:億円/売上高のみ10億円)
辰巳出版(単位:億円/売上高のみ10億円)

売上はほぼ横ばい、各種利益はやや減少気味。製作コストが上がっているのか、販売促進費が上乗せされているのかは不明だが、台所事情はあまり堅調ではないようだ。2006年に純利益が大きくマイナスに振れていることから、この年に本業以外で何かを実施したのかもしれない。

永岡書店
児童書や実用書、文庫本などが中心の硬派な出版社。

永岡書店(単位:億円/売上高のみ10億円)
永岡書店(単位:億円/売上高のみ10億円)

売上高はわずかに上昇しているが、利益の伸びがそれに追いつかない。2008年は何か大きな費用がかかることを本業でしたのかな、という感もある。

三笠書房
最後に三笠書房。ビジネス誌や雑学、実用書、教養書などを手がける。若年層向けと壮齢層向けではまったくイメージが異なる書籍を出すのも特徴。

三笠書房(単位:億円/売上高のみ10億円)
三笠書房(単位:億円/売上高のみ10億円)

売上高のみ1/10にしているので絶対額の比較はできないが、相対的な比率として売上高に対する各利益の大きさが見て取れる。要は「利益率の高い事業を行っている」「儲けを得やすいビジネスを展開している」ということになる。もっともこの3年の間は、やや苦戦を強いられているようだ。



以上、前回掲載しなかった出版社のうち、各種項目が揃って公開されていた8社についてグラフを生成し、そのグラフからつかみとれる概要をコメントしてみた。今年度、つまり2008年から2009年にかけて押し寄せている景気後退の波に、どれだけ影響を受けているのかまでは把握し難い面もあるが、少なくともここ数年の「出版不況」と言われている世情においても、個々奮闘している様子が分かる。

またこの8社は業績のグラフ上からは「出版不況などどこ吹く風」「ちょっと厳しいナ」「業績は横ばいだけど景気が悪くなってきたせいか業績もちょっと……」という3パターンに区分できる。どの会社がどこに属するかは各自判断してほしいが、「出版不況などどこ吹く風」に該当する出版社のビジネススタイルや取り扱っている書籍の傾向を見れば、「出版不況の中でも、このようなやり方をしているところなら、荒波を乗り越えそうだ」というイメージは沸いてくることだろう。



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