講談社・徳間書店・旺文社の業績
2009/03/08 09:35
【文教堂HD(9978)】は2009年3月6日、第三者割合による新株式発行について発表した。不採算店の閉店費用などに充当するためのもので、調達額は約3.9億円。2009年2月に閉店した17店舗の閉店費用へ主に充当されることになる。今回の第三者割当増資における(本屋ならではの)特徴として、数々の出版社が割当先として名を連ねていることが挙げられる。そして一部の割当先には、非上場ではあるものの直近3年間の業績が公開されていることが確認できた。滅多にない機会なので、いくつか有名どころをピックアップし、3年分ではあるがグラフ化してみることにした。
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非上場企業の財務諸表・業績を調べるには、その会社そのものに問い合わせる・公式ページをあたる他に、EDINETや『会社四季報 未上場会社版』、帝国データバンクなどの有料情報を確認する手がある。EDINETに掲載されていれば儲けモノだが、商法上の大会社で無い限り掲載の義務は無く、ほとんどの会社が該当しない。「会社四季報 未上場会社版」は現在調達中で機会があれば日を改めていくつかをピックアップする予定だが、現時点では調べようもない。帝国データバンクの有料情報は有益だが、当方のような個人ベースで使うレベルのものではないので今回はパス。
というわけで、今回第三者割当増資の関係で業績が確認できたのは、ある意味非常にラッキーともいえる。また、増資先は多数に及ぶが、都合により未掲載の企業もあること、すべてを載せていたのではきりが無いということで、今回は3社に限定する。
まずは以前【集英社・講談社・小学館・角川4出版社の財務状態をグラフ化してみる】でも取り上げた講談社。週刊少年マガジンをはじめとする各種雑誌などで、その名前を知らぬ者はいないほどの有名な出版社である。
講談社(単位:億円/売上高のみ10億円)
売上そのものはさほど減ってはいないが、直近期に大きく利益を減じているのが分かる。特に営業利益の時点で赤字が出ており、主事業の根本的な立て直しが迫られているといえよう。
続いて徳間書店。アニメ雑誌「アニメージュ」などエンタテインメント系の雑誌、徳間文庫やトクマ・ノベルズなどの小説で著名なところだ。
徳間書店(単位:億円/売上高のみ10億円)
売上高の減少が「さほど」大きくないのは講談社と同じ。気になるのは本業部分の営業利益が毎年減少しているにも関わらず、経常利益・純利益が伸びていること。あくまでも数字だけなので詳細は不明だが、出版そのものは不調なものの、出版以外の事業や関連会社の業績が堅調なのだろうか。
最後に旺文社。老舗の教育関連出版社。一時期経営が悪化したが、大規模なリストラを行い、経営再建に成功。現在ではインターネット事業にも力を入れている。
旺文社(単位:億円/売上高のみ10億円)
徳間書店以上に驚いた結果が出ている。売上高は多少落ち込んでいるものの、営業・経常・純利益共にこの3年間は堅調に推移している。本業の営業利益で伸びを見せているのは、出版事業が順調に推移していることを意味する。元々うまく波に乗れば手堅い教育関連を中心に行っているため、その「波」にのった状態なのかもしれない。
今回は知名度が極めて高く以前別系統でチェックを入れた講談社、そして売上高が比較的大きい徳間書店と旺文社の計3社を取り上げた。意外(!?)にもそのうち2社が比較的順調な業績を見せていたことになる。もちろん今回対象外となった出版社の中には講談社同様に大きく赤字を出しているところもあるし、赤字とは言わないまでも売上や利益を落としているところもある。しかし世間一般に広まっているイメージ「出版社は大手も中小も皆赤字かカツカツで大変。耐え切れなくてバタバタ倒れている」との差異を感じたのが、正直な感想。
しかし今件のデータはあくまでも直近のものであり、景気が急速に悪化した2008年後半以降のデータは反映されていないところが多い(講談社は11月末〆なので一部反映されている)。また、文教堂の第三者割当を受けられる余力がある出版社だからこそ、それなりに業績も良いのだから当然、という意見もまた正しい。
ともあれ、紙媒体の出版物は売れない、広告費は削減されるで出版業界が辛い時期にあることに違いはないが、1から10まですべての企業が押しなべて最悪期にあるわけではないことが分かる。それが分かると、ちょっとだけほっとした気持ちになれるのは当方だけではあるまい。
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