【転送】「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」…あるマンガに見る、情報統制と世論誘導

2008/09/24 00:01

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ふおんコネクト株式市場開催日に毎日書き連ねている「株式市場雑感」の場で、何度か「情報統制に関する興味深い描写をしている漫画」のことを取り上げた。それに少々連想させるような話を【日刊サイゾーの「報道は捏造まみれ......その実態を共同通信OBが暴露!」】の一文「『捏造』には『書く捏造』の他に、『書かない捏造』(ネグる)と『書かせない捏造』があると、私は常々思っている。この『書かせない捏造』こそ曲者だ」に見つけることが出来た。その「漫画」の単行本もようやく手に入ったことでもあるし、簡単にではあるが、その「ある意味”ぞくっ”とした内容」を紹介することにする。



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その漫画のタイトルは『ふおんコネクト!』。ストーリーや描写内の端々に見える深い配慮や演出、小ネタの数々、登場人物の一人が株式投資で「星の世界で使う桁」を運用している関係から、「投資家が取りがちな行動」「資産家になったらやってみたい行動」を見せるあたりが気に入り、該当号を買った後に単行本を購入した次第(ちなみに1・2巻を注文したところ2巻が先に到着し、1巻は2週間を経なければならなかったのは、また別の話……)。

さて問題の号、2008年9月に掲載されていたのは、次のような内容だった。登場人物の一人、境ふおんが部活で撮影したデジカメの写真を提供している新聞部で、次号からウェブに媒体を移行するため、デジカメの写真が不要となる事態になった(ウェブ上で学校内の人物を掲載すると不特定多数の人に見られ、色々と問題が生じるため)。また、紙媒体の新聞をめぐる状況は「紙資源の節約」「若者の活字離れ」などから芳しくなく、単発の良記事くらいでは「紙媒体の新聞存続」は難しい。

「道理を引っ込めるため、逆に考えろ。変えるべきは誌面ではなく、人」イメージそこでふおんが考えたのは、世論(読者)誘導。漫画内の表現ならば「読者の洗脳」。説明にいわく、「道理を引っ込めるため、逆に考えろ。変えるべきは誌面ではなく、人」。理由はともかく、まるでどこかで聞いたような話ではある。

彼女が行った「世論誘導」の具体的手法は次の通り。いずれも皮肉山盛りで、しかも実際に読者が気がつかないうちに使われていそうな話ばかり。

「有作為抽出」
世論調査のアンケートが集まらないことに対し、対象を友人、そしてその友人に書いてもらう。その際に「こちらの立場を理解して」もらうことを忘れない。統計データ上は無作為抽出のように見えて、その実、有作為抽出(作成側の望むようなデータが出るように母体を限定する)の統計結果が完成するというわけだ。

「編集」イメージ選択肢の誘導と「編集」
紙媒体の廃止に関するアンケートの項目を「答えやすい」という大義名分の元に細分化。しかしその項目は「(紙媒体の新聞廃止に)反対」「規模縮小で継続」「壁新聞化して継続」「発行ペースを月刊にする」など、ほとんど実質「存続」を意味するものばかり。その上で集計結果として表示する時には「反対」「賛成」「その他」のみに「編集」する(大義名分は「読みやすく、表現はシンプルに」)。

最近の民間調査会社のアンケートでは、設問用紙・形式を公開するところが増えており、このような意図的「編集」をされるリスクは少ない。ただ、調査機関が発表したデータをマスコミがニュース素材として利用したり、過去のデータを編集して記事のネタにする際には、このような「編集」を見かけることがある。

ちなみに元漫画のタイトル「3つの中の一つ(byマルサス)」とはイギリスの経済学者トマス・ロバート・マルサスの「人口論」における、自分の理論を肯定するための3命題になぞらえたものと思われる。

「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」イメージ「ジャーナリスト宣言」
これもどこかで聞いたようなお題目だが、該当する4コマのタイトルでもある。ここでは先の「日刊サイゾー」でも触れられていた点がさり気なく、しかしよく考えてみれば非常に皮肉った表現で語られている。

自分たちにとって「都合の悪い事」は書かない。「伝える事実を(報道側が)選択する」というもの。極めつけは次の一文。いわく「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」。これが先の「雑感」でも触れた、もっとも「ぞくっとした」表現に他ならない。

イメージアップ大作戦
さまざまな噂を流し、新聞部への好印象度を高めて紙媒体存続をサポートする作戦。口コミ、仮想敵の設定、ビジュアル向上(?)など、マスコミや商品展開、アイドル事務所などが使いそうな手を総ざらい。この作戦を説明しているふおんの顔が「デス・ノート」の某登場人物そっくりに描写され「計画通り!」という言い回しを使っているのはお茶目なところ。

これらの「世論誘導」(最後には放送部まで巻き込み、紙媒体の新聞を残すべきであるという世論を形成している)が功を奏し、紙媒体の新聞は廃止を免れる。しかし策謀者であるふおん自身が、これらの手法が「小細工であり、本質から逸脱している」ことに(友人の三日科交流の言葉で)気づき、落ち込むと共に猛省する……といった形で話は進んでいく(結局どのような形で落ち着くかは、該当号、あるいは単行本に収録された時に各自が確かめて欲しい)。

「報道しないこと」
これがマスコミ最強の力だよ。
(境ふおん)
漫画の中の、「新聞部の紙媒体の廃止」というささいなテーマに対する策謀に過ぎない、といえばそれまでの話。だが、その中には数多くの「マスコミや報道に関する現状と、あるいは行われているかもしれない手法、そしてそれぞれが注意しなければならない点」がパロディなどを交えて語られており、非常に考えさせられるところがあったのもまた事実だ。

繰り返しになるが、当方(不破)が一番(恐れと共に)ぞくっとしたのは「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」という言い回し。そしてその他にも「選択肢の誘導と『編集』」のところで思い当たるフシがあったのも事実。テレビや新聞などで調査機関の調査結果を元に記事が展開される場合には、できるだけその調査機関のサイトなどを探り、元の調査データを参照することにしている。中にはそのニュースが主張したいことが全面に押し出される、あるいは裏付けるために、数字そのものには手が加えられていないものの「項目を編集して印象を違えさせる」部類の編集が幾度と無く見受けられたからだ。それを改めて思い起こさせる内容といえる。

「そこまで考えて描かれたわけじゃないんでは?」と思う人がほとんどだろう。おそらくはそれが正解に違いない。だが少なくとも、当方はこのような印象を受けるだけのものがあった。そしてこの話をきっかけに「気づいた」「再確認した」ことがあったのも、また事実である。

(C)芳文社/(C)Zara

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