今年倒産した上場企業(2009年2月28日版)

2009/02/28 12:00

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倒産イメージ(2009年2月28日版)昨年2008年は最終的に33件(上場廃止後に倒産したエー・エス・アイを含めると34社)の上場企業の倒産が数えられ、これは戦後最高数を記録した。不動産関連市場の不調さだけでなく、さまざまな、世界的な規模のマイナス要因が重なった不運があるとはいえ、株価動向とあわせ常軌を逸している。しかも今年は前年2008年を上回るペースで上場企業が破たんし、「退場」している状況にある。今年で第二回目となる「今年倒産した上場企業をグラフ化してみる」において、期間的にはまだ一年の1/6しか経過していないのにすでに11社を数えている現実がどのようなものなのか、少しでも把握できるようグラフ化することにした。



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まずは今年に入ってから、2月28日(早朝、以下同)時点の上場企業における倒産企業一覧。1月に4件、2月に7件。合計で11件となる。

2009年における上場企業の倒産一覧(2月28日時点)
2009年における上場企業の倒産一覧(2月28日時点)

なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類してもあまり意味をなさず、むしろまとめた方が状況を把握しやすいからである。

次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。

2009年に倒産した上場企業の負債額区分(2月28日時点)
2009年に倒産した上場企業の負債額区分(2月28日時点)

不動産、建設など「不動産・建設」絡みが多いのは周知の事実だが、今回のデータでは「その他」の区分が異様に増加しているかが分かる。これは後述するがSFCG(8597)の負債総額があまりにも巨額で、大きな影響を与えているからに他ならない。

負債総額の上位10位を並べてみても、不動産業界の苦境が見て取れる。ただし前回のデータとは幾分状況が異なる。

2009年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(2月28日時点)
2009年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(2月28日時点)

11社のうち建設2社・不動産3社と、不動産・建設関連が半数近くを占め、それらがいずれも上位に顔を見せている。今年も不動産・建設の大型倒産が相次ぐであろうことを予見させるグラフである。それと同時に、筆頭に躍り出てしまったSFCGの巨額さにも驚きを隠せない。それもあわせ、不動産関連企業の資金ショートだけでなく、他の業種にも状況の悪化が浸透しつつあることが分かる。

続いて月ベースでの上場企業の倒産件数。冒頭で「2008年を上回るペースで」という表現を使ったことが分かるように、昨年の実測値と並べて棒グラフ化することにした。

2008年における上場企業倒産件数(2月28日現在)
2008年における上場企業倒産件数(2月28日現在)

昨年の上場企業の破たん傾向が後期から加速化したことを考慮しても、今年の状況が「季節毎の特性」を超えたものであることが分かる。むしろ昨年9月-10月の状況が再来したかのようだ。

最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)を乗じた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんど無くなり、破産ならほぼ資産価値はゼロとなる。民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止後に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。

そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になると仮定し、そこに投じられた資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは疑いようもない)、計算してみることにした。突然破たんとなれば株主の売りぬけの機会も無く、この値は大きくなる。一方で倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば、投資家はそれに気づき、手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。

2009年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(2月28日現在)
2009年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(2月28日現在)

・今年も「不動産」が
注目の業種か。
・SFCGの与えた影響が
桁違いに大きい。
・今年は多業種に
展開!?
去年と同じく、そして前回2月5日の記事にも増して「その他」セクターの比率が異様に高い。これは繰り返しになるが2月23日早朝に民事再生を出したSFCG(8597)の発行株式数・株価が共に大きく、時価総額が約158億円に達していたため。なお同社は民事再生発表の直前(正確には最終営業日の昼間)に代表権を持つ社長兼会長が突然代表権の無い会長に退いたり、臨時株主総会決議で取締役の報酬上限をこれまでの2倍である2億円以内に引き上げることが決まった直後に今回の破たんを表明するなど(この定款変更に基づいて報酬が支払われたか否かは定かではない)、何かと疑問視される動きが指摘されている。



2月末の時点ですでに11社を数えた上場企業の倒産だが、有価証券報告書提出未了などによる上場廃止はカウント対象外となっている。去年から「倒産以外の事由による上場廃止」の案件も増えており、例えばオックスホールディングス(2350)は有価証券報告書の提出が遅れたこと、OHT(6726)は粉飾決算が明らかになり、その影響が重大であると東証が認定したためなど、不祥事や問題決算で監査人のチェックが通らないことによる「退場」が次々とリストアップされているのが分かる。

これらは「司法当局や取引所のチェックが厳しくなり化けの皮がはがれた」「監査人の了承を得られないような問題会計が露呈した」など、半ば自然淘汰的な結果といえなくもない。そして現在似たような状況にある上場企業も複数確認されており、「倒産以外の上場廃止企業」も今後増えることは間違いない。

昨今の上場企業の倒産・上場廃止が各社の自責によるものなのか、経済の悪化ゆえのものなのか、それとも中長期的に見た景気変動の波の中で起きうる自然淘汰的なものなのか、それを判断するすべは無い。ひとつ確かなのは、今後「今年倒産した上場企業」記事の中で「その他」区分をいくつか再分化する必要が出てきたということである。あまり細かく分類するとかえって見づらいので、見極めが大切だが、恐らくもう1-2業種は独自の項目を設けなければならなくなるだろう。



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