アメリカで 大いに流行る クーポンは 紙ではなくて デジタル形式

2009/02/26 08:06

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ケータイクーポンイメージ【貯蓄を大いに盛り上げる6つのクーポンなコツ】などで紹介しているように、アメリカでは日本以上にクーポン券を用いた商品の割引き購入がごく普通に行われている。景気後退・収入減退のあおりを受け、それらクーポン券のお役立ち度も増すばかり。【WallStreetJournal】によると、そのクーポン市場にも時代の波が押し寄せているとのこと。いわく、「クーポンが今人気、でも切り抜きのクーポン券じゃないよ(Coupons Are Hot. Clipping Is Not)」とのことだ。



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クーポンイメージ元々割引き・特典配布用のクーポンはお店の客引きや商品購買意欲拡大のため、つまりは「販売促進」(販促)のために企業側が提供するもの。かつては雑誌や新聞に印刷して切り抜いて使用を薦めたり、チラシなどの広告に折り込むなど、紙媒体が主な提供手段だった。しかし今ではインターネット経由やデジタルデバイスによる配布・展開が主流になりつつあるという。

元記事ではいくつかの例が示されていた。ノースカロライナ州に住む二児の母親は、オンライン上で提供されるクーポンや、スーパーが独自に展開している「ポイントカード」に付随しているクーポンを用いて、120ドルの買い物のうち50ドルの節約に成功したという。彼女は語る。「15分から20分、ネットでクーポンを探せば、お金をいっぱい節約できるわよ」「カードに(クーポンを)ダウンロードすればいいから、プリントする必要すらないの」。彼女は2004年からクーポンを使い始め、今では友達やおばにも利用を薦めているとのこと。

調査機関のInmarによれば、ここ数か月でクーポンの利用割合は10%も増加している。さらにその多くはチラシなどの印刷物から切り抜いた旧来のクーポンではなく、オンライン上で表示されたものを出力する、さらには携帯電話や各店舗専用の「ポイントカード」に直接ダウンロードするタイプのものが増えているとのこと。

現在デジタル(オンライン)クーポンはクーポン市場全体(提供されたクーポンすべて)の1%に過ぎない。しかしクーポン市場の中ではデジタルクーポンだけが急速に成長を続けている。昨年は前年比で140%の伸びを見せ、利用率(償還率)も紙媒体のクーポンにおける1%と比べ13%にも達している。しかしながらデジタルクーポンの比率は(現時点では)きわめて小さいため、クーポン市場そのものを活性化するまでには至っていない(1992年に72億件の償還があったクーポンは、2008年には26億件にまで減少している)。

デジタルクーポンのシステムは日々進化している。元記事の事例ではある男性のブラックベリー(小型の携帯情報端末。日本のPDA、あるいは携帯電話に相当する)でチェーダーチーズの割引サービスが受けられるリンクをチェックする様子を伝えている。いわく「このリンクをクリックすれば、自分の『ポイントカード』でチーズを買うと割引きをするようにと、店のコンピューターに伝えてくれるんだ。日曜日にクーポンの山に埋もれて、自分が欲しいクーポンを探すよりはるかに便利だね」とのこと。

他にも「便利なデジタルクーポン」の仕組みや、現在の傾向として次のような事例が語られていた。

・顧客毎の買い物履歴を記録し、その傾向に合わせて割引きを適時提案していく情報端末の提供。シリアルを沢山買っている人には「今ならこのシリアルを買うともう一つがタダでもらえるよ」などのような特典が受けられる場合も。
・Scan It!と呼ばれる専用端末を食料品店で導入したところ、この春には100店舗で利用回数が2倍に増えた。
・Modiv Mediaが開発したシステムでは携帯情報端末上で、顧客の購入記録開示と共に70個以上もの商品の割引きを提案する。お客の買い物時間は12-15分短縮したが、売上は10%伸びた。
・食料品販売店や加工食品会社はデジタルクーポンを「顧客の商品に対する愛着心を増幅させ、より多くの売上をもたらす」と期待している。顧客はクーポンの発行によって対象商品を掘り出し物として認識し、飛びつく傾向があると見なしている。
・ネット上に展開されるデジタルクーポンは、多くの人たちの検索対象となりつつある。ある大手クーポンサイトでは2008年は3億ドル分のクーポンがプリントアウトされたという。それは2007年から140%の増加とのこと。そして今年は景気後退が加速していることもあり、この数は3倍に跳ね上がるだろうと予想している。

成長性や情勢へのマッチ度とあわせ、未来はばら色に見える(デジタル)クーポンだが、問題点がないわけでもない。その最たるものは、クーポン発行による販売促進効果が従来より低下しつつあるということ。以前と比べてクーポンの有効期限は短くなり、クーポンが適用される制限も厳しくなりつつある(※例えば1990年の時には平均有効期限が4.9か月だったのに、現在は2.5か月。それだけ発行側が「早く、たくさん使って」と急かしていることになる。急かして条件をキツくすればクーポンが利用された際の企業側のメリットは大きくなるが、顧客の使用頻度は低下する。例えばいくらコーラが好きだからといって、「2リットルサイズを6ダースまとめて買えば20%引き」などというクーポンを使う人は滅多にいるまい)。

また、デジタルクーポンが急速にその利用度を伸ばしている一方で、従来のクーポンを利用する人も多い。クーポンを切り取ること自身が好きな人もいるという。いわく「クーポンを切りとることで、他人がしていないことを自分自身がやっているんだ、って気持ちになれるね」とのこと。



クーポンイメージ日本では商店街共通の割引券や特定店舗の高額商品に対するクーポン、店舗単位で配布する少額の割引券をのぞけば、紙媒体でのクーポンの利用・普及率はアメリカほど高くはない。しかし「ポイントカード」の普及や、携帯電話を使ったセールスプロモーション(【マクドの携帯サイト会員500万人突破・記念感謝キャンペーン実施中】にもあるようにマクドナルドが先進的な活用例として知られている)が効果を発揮しているとして、注目を集めているのも事実。

消費文化の違いもあり、アメリカほどの普及は難しいだろうが、日本でも携帯電話やポイントカードの活用を中心に、「ポイント使って賢い買い物」の事例が増えていくことになるだろう。企業側も「販促効果」と「割引きによる利益減」との難しいバランス調整に頭を痛めながら、クーポンの供給拡大を進めていくものと思われる。



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