アメリカの金融政策の現状がひとめで分かる写真
2009/02/21 09:40
サブプライムローン問題やCDS問題などに代表される金融危機打開のため、昨年アメリカで可決成立施行された、総額7000億ドルにおよぶ公的な金融救済プログラム(金融危機救済制度)こと「不良資産救済プログラム(TARP、The Troubled Asset Relief Program)」。【一部報道(ロイター伝)】で銀行セクターに注入した投資について、価値がほぼ半減したと伝えられるなど、色々な問題をかもしている。そして全般的には「いくら資金を注入してもきりがない、ますますドツボにはまり、無駄使いになるでは?」という論調も高まってきた。そして公的資金を注入された銀行などで、役員などが多額のボーナス・報償を前倒しで支払っていたことが明らかになり、「公的資金は彼らのあぶく銭のために使われた」という印象がぬぐえず、反発も高まるばかり。このようなTARPをビジュアル的に「ぱっと見で的確に」指し示す、ひとつながりの写真がアメリカの著名ファイナンス系ブログ【Calculated Risk】にて紹介されていたので、ここではそれについて解説を加えてみることにする。タイトルはずばりそのまま「TARP」。
スポンサードリンク
次々に海中に引き込まれるクレーン車たち。それはまるで金融政策のような……
解説するまでもないかもしれないが、「事態を甘く見てギリギリの許容量の作業車両で作業をしていたら、過重に耐え切れずに次々に引き込まれてしまい、どんどん被害が大きくなる」様子を表している。見積もりを甘く見ることの危険さや、戦力の逐次投入がいかに無駄な事態を招くかは、太平洋戦争で日本がしでかしてしまい、アメリカは反面教師としてそれを学んだはずなのだが、それが活かされていないということなのだろうか。
これら一連の写真の元ソースは【snopes.com】から。その記事によると、緑色の大型クレーン車が小さな赤いクレーン車を引き上げるところまでは実際に起きた事件のようだ(2004年9月ごろ、アイルランドで発生した。幸いにも死亡者は出なかったとのこと)。ただし緑色のクレーン車が過重に耐え切れずに落ち、さらに大型の青色のクレーン車に引き上げられようとしているところは完全なコラージュ。よく見ると、単に色を差し替えただけの動画他のクレーン車であることなど、合成の稚拙さでそれが分かる。
一連の出来事をTARPなどアメリカの金融危機対策に例えると、最初は「サブプライムローン問題? そんなの一部の不動産ローンで苦しい人たちだけの問題だろう」とたかをくくっていたのが、証券化商品のダメージであっという間に資産の多くが傷つき、影響が広まり、「いつの間にやら皆が皆、サブプライムな人たち」になってしまい、それでも何とかなるだろうと、甘めに見積もっていたが、銀行やら地方自治体までがばたばたと倒れ、手を挙げ、被害がどんどん拡大していく、という有様というあたりだろうか。どの自動車・クレーン車がサブプライムローンなのか、CDSなのか、銀行なのか、地方自治体なのか、クレジットカードローンなのか、その他諸々なのかはあえて関連付けないが、状況的には極めて分かりやすいはずだ。
このような事態を解決するには、極論として「正確に見積もった上で余裕を持った対処(写真の事例ならクレーン車の派遣)」を行う必要がある。そして「見積もり」には海に落ちた車両のうち、どれを救うのか、どれを放置破棄の決定をするのかも含まれる。
これらの写真を見て「バカみたい、コメディ漫画じゃないんだから」とせせら笑う人がいるに違いない(実際には後半はフェイクだが)。しかし現状における経済問題への対策も、実は似たようなもので、端から見れば「何てバカなことをしてるんだろう、もっとよいやり方があるだろうに」という状況なのかもしれない事実を認識すれば、笑いの口元も引きつることだろう。
スポンサードリンク