【転送】「日本などG8は悲観的」「BRICsなど新興国は楽観的」経済見通しの違い
2009/01/24 12:41
日本リサーチセンターは1月23日、金融(工学)危機に関する国際比較世論調査の結果を発表した。それによると、日本をはじめとしたG8などの先進諸国は悲観論が多くを占めているものの、BRICsに代表される新興国の多くでは、全体的な経済や個々の今後の収入において楽観的な見通しを立てている傾向が強いことが明らかになった。また、例えばアメリカ人は「今後の収入が増加する」と考えている人が「減少する」人よりも多いなど、国毎の特性も色濃くにじみ出ている結果が出ている(【発表リリース】)。
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今調査は2008年11月から12月にかけてG8各国((日本、米国、カナダ、フランス、英国、ドイツ、イタリア、ロシア)やBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)など主要国の国民に対して行われたもので、有効回答数は合計1万4600人ほど。調査方式は国によって異なり、インターネット・電話・面接方式に分けられている(詳細は元資料を参照のこと)。また集計結果には各国の人口数要因を反映させたウェイトをのせて集計を実施している。
調査結果では大きく経済関連、不動産関連、金融危機の三つの観点からの設問が用意されている。今回はこのうち経済関係にスポットライトを当ててみる。今後三か月において、それぞれの国の経済は現在よりも良くなると思うか、悪くなると思うか、つまり「直近の経済先行き見通し」について尋ねたところ、全体では「よくなる」と答えた人はわずか12%で、半数近い49%が「悪くなる」と回答している。庶民の経済マインドは悪化傾向にあると見てよい。
今後三か月で自国経済はどうなるか、その見通し
グループ別で見ると、BRICs諸国では「よくなる」「悪くなる」がほぼ同数を占めており、先行きに対する意見が分かれている。しかしG8に限ると「悪くなる」が6割と圧倒的多数を占めており、悲観論が支配的な状態にあることが分かる。先進諸国の方が経済状態を冷静に見極めているのか、それとも経済の悪化度が深刻なものなのか、どちらかは分からないが、少なくとも国民のマインドが冷え込んでいることは確かだろう。
日本やヨーロッパで「悪くなる」は
高い値を示している。
しかしアメリカでは比較的冷静な意見が多い。
経済全体の見通しはこのような形だが、それでは個々の経済、具体的には自分の世帯収入はどのように変化すると考えているだろうか。こちらはもっと国民性が色濃く出る結果となった。
今後1年間の収入の見通し(これまでの1年と比べて)
経済全体への見通しと比べて、個々の収入においてはやや楽観視する向きが多い。これは多分にインフレーションの懸念をも含めているものと思われる(手取りは増えるが物価も上がり、生活は苦しくなる)。
G8諸国がほぼ「変わらない」(「増える」と「減る」が同数)と回答しているのに対し、BRICs諸国では「増える」が過半数近くを占めるなど、楽観視する向きが強いのが特徴的。とりわけブラジルの「増える」が79%に達しているのは注目に値する。また、「当事者」であるアメリカ自身も、「増える」が「減る」の2倍近くを示しており、楽観的な考えを持つ人が多数見受けられる。一方、日本やアイスランド、韓国では悲観的な見通しを持つ人が多い。
調査方法が各国によって異なること、経済の実態指標に基づいたものではなく個々の「マインド」が結果に反映されていること、金融危機で大きな痛手を受けた人たちが今回のような調査を受ける可能性が低いことを考えると、今回の回答がそのままそれぞれの国の経済の実情を丸ごと表しているとは考え難い。とはいえ、概要的な・雰囲気としての個々の国民性・消費者の心境をつかみとるには十分すぎる内容といえる。
冒頭やタイトルでも触れているように、先進諸国、特にG8の一部やEU諸国が深刻な心境上の深手を負っていること、そして新興国が比較的楽観的な見通しを持っていることが印象的ではある。そしてそれと共に、最大の責任者でもあるアメリカ自身が、他の先進諸国と比べて悲観的ではないことも分かる。これを「無責任」と取るのか「ポジティブな考え方」と取るのかは解釈が難しいところだが、少なくともアメリカの国民性を反映していることだけは間違いあるまい。
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