【転送】倒産件数実情

2009/01/28 10:30

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内閣府は1月26日、【「倒産件数の動向」に関するレポート】を発表した。それによると2008年は不動産市況の低迷による不動産・建設業において件数が増加していること、資源の価格下落による倒産は減少傾向にあるものの売上減少による中小企業の倒産が増加する傾向にあり、今後は資金繰り悪化と伴ってさらに増える可能性が示唆されている。ただし当レポートでは倒産件数推移が前回の金融恐慌真っ只中の2002年以降のものであり、それ以前からの動向が気になるところではあった。そこで今回は、帝国データバンクの公表資料を元にグラフを作成することにした(【資料該当場所】)。



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まずは内閣府のレポートを簡単に箇条書きにまとめてみる。

・燃料費の高騰で運輸業、改正建築基準法や金融工学危機などで建設や不動産業において倒産件数が増加した。
・資源高のピークは過ぎたものの、景気後退で売上高が減少。中小企業は金融機関からの貸付額が減少している傾向(=貸し渋り・貸しはがし)にあることから資金繰りが悪化している。今後はさらに増加する傾向を見せるかのうせいが高い。
・上場企業の倒産が増加しており、雇用情勢に与える影響も懸念すべき。


倒産が増加している主な業種
倒産が増加している主な業種

また、不動産や建設業の倒産はひとまず山場を迎えたようにも見えるが、その一方で製造業や運輸・通信業の倒産が(売上減少により)増加する一方であるのが気になるところ。

同レポートでは倒産件数推移もグラフとして表記されているが、2002年までのもので冒頭でも触れたようにそれ以前の傾向が気になるところ。そこで帝国データバンクから公開データを抽出して作成したのが次のグラフ。なお帝国データバンクでは負債額1000万円以上についてカウントしていること、内閣府が作成したグラフのデータ元である東京商工リサーチとは把握した数字が異なるため、多少違いが生じることをあらかじめ書き記しておく。

まずは倒産件数の推移。

倒産件数推移(1998年5月-2008年12月負債総額1000万以上)(赤線が実線、水色が三か月移動平均線)
倒産件数推移(1998年5月-2008年12月負債総額1000万以上)(赤線が実線、水色が三か月移動平均線)

確かに2008年後半はある程度淘汰が進んだせいか、資源高が一段落したからなのか、やや減少の傾向を見せている。それよりも気になるのは、前回の金融危機、さらにはそれ以前のITバブル期における倒産件数よりも現在の倒産件数の方が少ないことだ。これから増加するのか、それとも大騒ぎしているだけなのか、このデータからだけでは分からないが、件数そのものは前回の金融危機と比べてはるかに少ないのは事実である。

それでは負債総額はどうだろうか。似たように実線と三か月移動平均線をあわせてグラフ化したのが次の図。

倒産負債総額推移(1998年5月-2008年12月負債総額1000万以上)
倒産負債総額推移(1998年5月-2008年12月負債総額1000万以上)

何か所か、大きく上ぶれしている場所があるが、直近のはいわずもがなリーマン・ブラザーズ証券の破たんによるもの。そしてグラフ範囲内で最大の2000年10月は協栄生命保険、千代田生命保険の相次ぐ破たんによるもの。2000年7月はそごうが該当している。特に協栄生命保険は負債総額4兆5297億円と戦後最大の倒産を記録し、グラフをゆがめる要因にもなっている(現在のそごうは再生後によるもの)。

大きく跳ねている部分はいずれも大手の倒産によるもの。それを考慮すると、倒産による負債総額も前回の金融危機と比べればやや少なめに見える。

ちなみにこちらが、一件あたりの負債平均額。大きな倒産案件がある場合跳ね上がってしまうためあまり意味がないが、平均的には2002年前後の金融危機とほぼ変わらないように見える。

1件あたりの負債平均額(1998年5月-2008年12月、負債総額1000万以上。単位は億円)
1件あたりの負債平均額(1998年5月-2008年12月、負債総額1000万以上。単位は億円)



中小企業の売上判断イメージグラフなどをみる限りでは、倒産件数の観点では(上場企業のそれはともかくとして)前回の金融危機とさほど変わらない、むしろ抑え目であることが把握できる。世間に広まるマインドとは相容れない、というより違和感すら持たざるを得ない状況といえよう。

ただし内閣府のレポートでも触れているように、特に中小企業の売上が減少していること、そしてそれらの企業への貸付が大幅に減っていることも事実。今後景気状況に変化がなければ、資金繰りの悪化でこれら企業の破たんが増加する可能性はある。

内需・外需共に冷え込んでいる昨今、資金繰りの調整と共に、いかに売上を伸ばしていくかが今後グラフを上向かせないためには必要となるだろう。



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