【転送】「研修や公園掃除」自動車市場が不調なアメリカ、日本車工場の従業員への対応は?

2008/12/30 08:32

このエントリーをはてなブックマークに追加
自動車工場イメージ先に【直前で決裂したビッグ3救済案の経緯を時系列化する】で参照した自動車業界のニュースサイト【Autoblog】において、日米それぞれが抱えている問題を象徴するようなニュースが掲載されていた。情報の元ソースが【NewYorkTimesの12月23日付け記事】とまだ新しいもので、現在進行形の状況とも思われることもあり、非常に興味深い内容でもあるのでここに紹介しておくことにする。その内容とは、「自動車産業の急激な軟調化で、アメリカ国内の海外自動車工場はどのような姿勢を示しているか」というものだ。いわく【日本の工場にジョブズバンクが無いなどと言ったのはどこの誰だ(Who says the Japanese don't have a jobs bank?)】



スポンサードリンク


Tundraイメージジョブズバンク(Jobs Bank)」とは、【アメリカの自動車産業に従事している人の数や年収】などで指摘しているように、アメリカの自動車業界労組である全米自動車労働組合(UAW)と例の「ビッグ3」(ジェネラル・モーターズ、クライスラー、フォード)との間に数十年前に締結された労働協約による制度。一時解雇の期間中も組合員には通常賃金の85%が保障されるというもの。これがビッグ3の赤字を積み増しし、負担を増加させる要因の一つにもなっている。もちろんビッグ3に就業しているUAW組合員以外は対象外であり、アメリカに工場を持つ他国企業は該当しない。

ではアメリカ国内にある諸外国の工場はどうなのだろうか。元記事ではトヨタ自動車がアメリカに持つ工場のうち、TundraとSequioa(SUV車)を生産する工場に関する事例を紹介していた。

・2008年夏にガソリンが急騰し1ガロン4ドルという高値をつけたとき、自動車、特にトラックの販売台数が落ち込んだため、トヨタではTundraとSequioaの生産工場を3か月間完全に停止することを決定した。しかしトヨタはよく言われるような一時解雇はしなかった。
・派遣、一時労働者は直ちに解雇された(Temporary workers were released)。
・正社員は毎日工場に出勤し、訓練(研修)を受けることで給金を通常通りもらい受けることができた。
・訓練する内容がまったくない時でも、周辺地域に公園を掃除したりすることでしっかりと給金を受け取れた。
・生産ラインは3か月後に再開されたが、自動車の販売台数は思わしくないため稼働率はこれまでの半分に減少。しかし正社員は給金をちゃんと受け取れた。

「ジョブバンク」がないトヨタ自動車の工場で、実質的にジョブバンクと同様、それ以上の待遇が行われたことに対し、驚きの声を挙げた人たちの声を代弁し、元記事では「日本の工場にジョブズバンクが無いなどと言ったのはどこの誰だ」というタイトルがつけられたわけだ(ちなみにジョブバンク制度下でも一時労働者などは組合構成員ではないため、ジョブバンクの対象外となるため、トヨタ自動車の工場が一時労働者などを解雇してもジョブバンクより劣るということにはならない)。

工場研修イメージこれに対して元記事のコメントでは「トヨタは税金を使って『ジョブバンク』まがいのことをしているわけではなく、自社の余力を用いてやってるだけの話(税金を使っているわけではない、と暗にビッグ3を非難している)。しかも経営側から自主的に行っており、労働組合側からの突き上げによるものでもない。この措置は慈悲深い温情によるものではなく、経営状態が改善されるまで熟練労働者を維持しておいた方がよいという経営判断によるもので、市場の悪化が長引けば結局トヨタ側も解雇に踏み切らざるを得なくなるだろう」「トヨタだってアメリカのビッグ3のように、日本政府に対して援助を求めるかもしれないじゃないか」「そんなことはトヨタ内部でリストラクチャリングをしてからの話であるし、それが万一なされたとしてもアメリカの税金を直接使うわけではない」など、多種多様で興味深い意見交換がなされている。中には「日本の工場では一時解雇の時に、周辺地域の掃除をして地域に貢献してるんだって?」などと驚きの声を挙げている人もいる。

労使関係がアメリカとは異なる日本で同じような状況が生じるとは限らない。しかし少なくとも「状況悪化の際には派遣・一時雇用者が真っ先に解雇対象となる」「正社員(特に技術を持つもの)は会社において維持されるべきものと判断されている」という認識があることに、大きな違いは無いようだ。

なお日本では「ジョブバンク」の制度はないものの、企業側は経営困難などで正社員に自宅待機などを命じる場合(解雇ではない)、労働基準法第26条の定めにより平均賃金の60%「以上」を休業手当として支払う必要がある。85%とまではいかないが、最低限の保障は行われていることに留意しておくべきだろう。



スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|X(旧Twitter)|FacebookPage|Mail|RSS