【転送】アメリカ雑誌の広告売上の変化
2009/01/18 12:00
欧米、特にアメリカのメディア情報をチェックするには欠かせない「メディア・パブ」で、先日衝撃的なニュースが掲載された。欧米、特にアメリカの新聞の(財務的な)凋落振りは周知の通りだが、雑誌においてもその傾向が見られ始めたのだという。同記事ではアメリカの雑誌発行媒体の団体【全米雑誌協会(MPA:Magazine Publishers of America)】発の資料と共に、2008年におけるアメリカの主要雑誌に掲載された広告ページ数や広告売上が掲載されていたが、確かに一部紙を除いてダイナミックなまでの下げが確認できる。今回は日本の雑誌業界の動向の参考にもなりうるということもあり、これらのデータの一部をグラフ化してながめてみることにした(【元記事:米雑誌の広告売上,新聞と同じく急降下】)。
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大本のMPAの資料には、アメリカで発売されている多数の雑誌のデータが掲載されている。とはいえ、日本人の我々にとってはほとんど見聞きしたことのないものばかり。メディア・パブでは広告ページ数ベスト20のリストが掲載されているものの、日本でもお馴染みの経済誌やビジネス誌以外は初めて聞くものばかり。逆に考えれば、日本にはビジネス・経済誌以外のアメリカの一般誌はほとんど入っていないということにもなる(例えば「プレイボーイ」などの例外もあろうが、あれは実質的に別物)。
そこで、メディア・パブ側ではニュース・ビジネス誌のみを抽出してリストを再構築しているが、ここではそれをグラフ化してみることにした。
アメリカ主要ニュース・ビジネス紙の広告売上と広告ページ数前年比(2008年)
いずれも名だたる、そして日本でも馴染み深い、あるいは日本版が発売されているものばかりだが、少なくともアメリカではほとんどのニュース・ビジネス雑誌が苦戦しているのが分かる。
雑誌の収入は主に「雑誌そのものの売上」「広告費」でまかなわれている。他に関連アイテムの販売やタイアップ企画、寄付などもあるが、いずれも微々たるもの。そして雑誌の販売部数が落ち込めば売上は落ちるし、「効果薄」と判断されて広告主からも値切られたり打ち切りを宣告される羽目になる。また、売上自身に変化はなくとも、広告効果が低いという結果が見られたり、広告主のおサイフ事情が厳しくなっても、広告費が削減される場合がある。
グラフを見ると、「エコノミスト」「フォーチューン」などのビジネス誌はそれなりに健闘しているが、「ニューズウィーク」をはじめとしたニュース誌の旗色が非常に悪いのが確認できる。ニュースのニーズが(速報はもちろん分析記事などにおいても)雑誌からネット媒体に移りつつあることの現われかもしれない。特に「ニューズウィーク」は広告ページ数減少率よりも広告売上減少率の方が高く、「上得意様」(ページ単価の高い)の広告主が抜けてしまった可能性を示唆している。
続いて、全雑誌における「分野別」広告売上と広告ページ数の推移。すべての項目で前年比がマイナスとなり、グラフがマヌケな体裁になってしまった。
分野別広告売上・広告ページ数前年比推移(2008年)
アメリカの自動車産業の不調ぶりは他の記事でも繰り返し伝えているが、その影響は雑誌の広告出稿にも現れているようだ。
また、すべての分野において「ページ減少率>広告費」という傾向が見られるので、各企業は「広告は出し続けたいけど予算は限られている。それなら、単価が低くてあまり効果が見られないモノクロ、ミニスペースの広告を止めよう。目立つものをドン、と大きく掲載して一点集中突破だ」的な発想をしている様相が想像できる。特に「小売」は広告費がさほど減っていないのにページ数が大きく減少していることから、その傾向が強いことが見て取れる。
元記事では「広告ページ数で前年比が11.7%減、2008年第4四半期だけだと17%減。広告出稿が日増しに減っており、2009年はさらに状況が悪化する」という推測を立てている。アメリカの景気動向とインターネットの普及・ネット広告へのスライド化を見る限り、その推測は正しいものとなるだろう。
・広告主のおサイフ事情
→各業界のすう勢とも関連
・広告媒体の媒体力低下
(絶対的・相対的)
・広告主側の雑誌側への
注意傾倒度合いの変化
また、このグラフを日本のテレビ局に対する各企業が出稿しているスポット広告の割合を示した【テレビ局からスポット広告を減らした業種を調べてみる(2009年3月期第2四半期編)】と比較すると、日米それぞれの国内における産業の動向と違いが見えてくるだろう。少なくとも今後、日本でもアメリカ同様に雑誌における自動車産業の広告ページ・広告売上が大幅に減少することは避けられないものと思われる。
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