熊本地震の影響あるも中東情勢改善期待で景況感底上げ…2026年7月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇
2026/08/10 15:00
内閣府は2026年8月10日付で2026年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる45.7を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して45.8となったが、基準値の50.0を割り込む状態は継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを中心に影響が残るものの、持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、中東情勢による不透明感が残ることに加え、令和8年熊本地震の影響に対する懸念もみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和8年7月調査(令和8年8月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。スポンサードリンク
現状は上昇、先行きも上昇
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2026年7月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは45.8。
→詳細項目は「サービス関連」が前月比変わらず、それ以外はすべて上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。
・先行き判断DIは前回月比でプラス0.1ポイントの45.8。
→原数値では「変わらない」「やや悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは45.5。
→詳細項目では「サービス関連」「非製造業」「雇用関連」が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2026年6月では、2026年2月28日に始まったアメリカ合衆国・イスラエルによる対イラン攻撃と、その後のイランによる報復攻撃の前兆的な緊張と、実際の攻撃、さらにホルムズ海峡海峡閉鎖問題を受け、原油や関連商品の価格が急騰、物資そのものの不足の懸念もあわせ、景況感の足を引っ張っている。一方で、その中東情勢の先行きが見えてきたような雰囲気から、企業の活動の活発化の動きがあり、また半導体関連の動きの好調さもけん引し、結果として前月比ではプラスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2026年7月では現状判断同様に物価高や中東情勢への懸念が足を引っ張っているものの、その中東情勢の緩和への期待、秋の旅行シーズンにおける観光需要への見込みなどを受けて、前月比でプラスを示している。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2026年7月)
今回月では猛暑や中東情勢の改善、ハイテク関連の業態の好調さを受け、企業動向関連の双方などで前月比プラスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は無し。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2026年7月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は無し。秋の行楽シーズンへの期待や、物価上昇の落ち着きなどを受け、上昇項目が多くなっている。
中東情勢と秋の行楽と半導体関連の堅調さと
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・梅雨明け以降の急激な猛暑により、エアコンを始めとする、季節商材の販売が急激に伸びている(家電量販店)。
・中東情勢の影響による価格上昇に落ち着きがみられるようになったことで、国内外を問わず、夏休みに向けた予約が少しずつ増えている(観光型ホテル)。
・物価高による買い控えが続くなか、連日の猛暑により、商店街では朝一番に生鮮食料品を購入する客は午前中には帰宅するため、午後の商店街は閑散としている。特に物販の小売店では、朝の短時間の商売では売上が上がらない(商店街)。
・中東情勢の不透明感や原油価格高騰の影響による物価高が止まらず、消費マインドが向上しない(その他小売[ショッピングセンター])。
■先行き
・9月の大型連休を始め、秋の行楽シーズンの先行予約が好調である(都市型ホテル)。
・台風などの天候次第では、短期的に来場者数が左右される可能性があるが、秋に向けて猛暑が落ち着けば、増加が期待できる。インバウンド需要も戻ってきているため、プラス要因になるとみられる(ゴルフ場)。
・一旦落ち着くかとみられた中東情勢が長期化する可能性が出てきており、先行きの不透明感が強くなっている(百貨店)。
・多くの取引業者からの値上げ要請が続いており、販売価格に転嫁せざるを得ない。値上げをすれば、売上に影響することは避けられず、ますます身の回りの景気は落ち込むとみている(住宅販売会社)。
猛暑が景況感をけん引する場合と、足を引っ張る場合があり、世の中の難しさを再認識させられる。暑さのせいで午前中に客が引いてしまい、午後の客数が減るという実情に、ビジネスの仕組みの奥深さを覚える人もいるだろう。エアコンのセールスの好調さは前回月でも言及されており、相当量が売れているものと思われる。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・北米地域への半導体関連での設備投資の勢いが衰えない(一般機械器具製造業)。
・取引先の中小企業は、借入金の金利上昇や中東情勢に伴う原材料価格の高騰で利益が圧迫されており、業績は改善できていない(金融業)。
■先行き
・取引先での商品の値上げも一段落し、価格の動きが落ち着き始めたため、延期になっていた仕事が再開される。さらに、厳しい暑さで社員の健康のために断っていた仕事も、今後は徐々に受けられるようになる(輸送業)。
・中東情勢の影響を受け、各住宅メーカーが販売価格を値上げしている。販売棟数の減少が懸念される(木材木製品製造業)。
半導体関連の堅調さは各報道で既知のものとなっており、昨今の株高の主要因でもあるのだが、現状でも先行きでも景気のよい話ばかりが出ている。他方、軟調さが続く住宅関連の項目は、値上げによるものとの推測ができる話が出ている。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・求人掲載企業のなかに、少しではあるが新規事業や規模拡大を見越した募集を出すところがみられるようになったため、景気は下向きではないとみる(求人情報誌製作会社)。
■先行き
・採用が順調に推移している企業も多くあり、人員体制の地固め、組織基盤の強化づくりができている(民間職業紹介機関)。
企業側に業務拡大の意図があることをうかがわせる意見が複数見られる。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
ともあれ、景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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