中東情勢で景況感低迷…2026年5月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇
2026/06/08 14:00
内閣府は2026年6月8日付で2026年5月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる43.6を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して40.7となったが、基準値の50.0を割り込む状態は継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを中心に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる。先行きについては、中東情勢による不透明感がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和8年4月調査(令和8年6月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。
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現状は上昇、先行きは上昇
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2026年5月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは43.1。
→詳細項目は全項目が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。
・先行き判断DIは前回月比でプラス1.3ポイントの40.7。
→原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは40.9。
→詳細項目では「雇用関連」が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は無し。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2026年5月では、2026年2月28日に始まったアメリカ合衆国・イスラエルによる対イラン攻撃と、その後のイランによる報復攻撃の前兆的な緊張と、実際の攻撃、さらにホルムズ海峡海峡閉鎖問題を受け、原油や関連商品の価格が急騰、物資そのものの不足の懸念もあわせ、景況感の足を引っ張っている。一方で、半導体をはじめとするハイテク関連の業態では好調が続き、さらに観光関連の人の動きもよい。結果として前月比ではプラスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2026年5月では現状判断同様に物価高や中東情勢への懸念が足を引っ張る形。一方で夏に向けた人やモノ、お金の動きに期待する声が多く確認できる。ハイテク関連の業態におけるさらなる躍進にも注目が集まる。結果として、前月比でもプラスを示している。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2026年5月)
今回月では前月の下落の反動と思われる底上げや、ハイテク関連の業態の好調さを受け、全項目で前月比プラスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は無し。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2026年5月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は無し。現状判断同様、中東情勢で生じる影響への懸念がすべてを押しつぶしている感はある。ただし中東情勢の沈静化への期待や、きたる夏へのさまざまな思惑があり、「雇用関連」以外で前月比プラスを示している。
中東情勢と夏に向けて
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・エアコンの新たな省エネ基準に加え、5月にもかかわらず夏日の日が出てきたことで、エアコンの販売が急拡大している(家電量販店)。
・中東情勢や円安傾向などによりよくない経済状況が続いているが、一旦は落ち着いている様子である。特にゴールデンウィーク期間は、旅行や外食を控える傾向もなく、消費
者は活発に動いていた(一般レストラン)。
・現時点では中東情勢や日中関係の影響は余りないが、今後が不安である(テーマパーク)。
・石油を原料とする製品の値上がりなど、様々な商品の物価上昇により、特に生活必需品以外は買い控える傾向が続いている(商店街)。
■先行き
・これから夏に向けて、様々なイベントが開催されるため、客の購買意欲が上向くと期待している。そのため、今後の景気は徐々に上向くことになる(百貨店)。
・2〜3か月先の予約や問合せが増えてきている上に、夏に向けて暑気払いなどの宴会が動くのではないかと予想している(一般レストラン[居酒屋])。
・中東情勢の影響により更に不景気になり、買い控えに拍車が掛かる(一般小売店[酒])。
・金利の上昇や中東情勢による資材不足、工事費の高騰など、不動産の開発環境は厳しくなっているため、調整局面を迎えると思う(住宅販売会社)。
中東情勢による悪影響は継続しているが、主に夏に向けた動きでポジティブなものが多い。実際にその動きを確認しているところもある。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・北米と東南アジアでのAI関連の設備投資の勢いが衰えないままである(一般機械器具製造業)。
・製造業は中東情勢の緊迫化に伴う受注面への大きな影響はみられないが、サプライチェーン上の供給不安やマインド悪化がみられる。非製造業は物価高に伴う消費者の節約意識の高まりや中東情勢による住宅資材などの供給不安もあり、業況感が悪化している(金融業)。
■先行き
・半導体製品の開発数が拡大しており、取引先の要求どおり製品開発から量産を達成できれば、景気は更によい方向に向かう(電気機械器具製造業)。
・資材調達の見通しが不透明であることに加え、価格上昇基調がやむを得ない状況であり、今までのように受注を確保することは困難とみている(建設業)。
AI関連への資金流入の著しさは各報道で既知のものとなっており、昨今の株高の主要因でもあるのだが、現状でも先行きでも景気のよい話ばかりが出ている。他方、中東情勢の悪影響は企業動向でも複数確認できる。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・新規求人数は前年比では減少傾向が続いているものの、3か月前と比較した人手不足感に大きな変化はみられず、募集人数を大幅に削減する動きは確認されていない(職業安定所)。
■先行き
・中東情勢による物価上昇が顕著であり、今後の人員計画が不透明になる可能性が高い(人材派遣会社)。
やはり中東情勢による業績の悪化で採用を絞る企業が見られる。他方、状況に変化は無いとの話もある。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
ともあれ、景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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