物価高の影響あるも持ち直しの動き…2026年2月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落
2026/03/09 15:00
内閣府は2026年3月9日付で2026年2月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる48.9を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で下落して50.0となり、基準値の50.0と同値となった。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は「景気は、持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和8年1月調査(令和8年3月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。
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現状は上昇、先行きは下落
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2026年2月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは48.2。
→詳細項目は「非製造業」以外の項目が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「製造業」。
・先行き判断DIは前回月比でマイナス0.1ポイントの50.0。
→原数値では「よくなる」「ややよくなる」が増加、「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは51.8。
→詳細項目では「サービス関連」「非製造業」「雇用関連」が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2026年2月では物価上昇の影響による節約志向が足を引っ張っているものの、その上昇に慣れたことで結果として客単価が向上したなどの意見もあり、またデジタル系の業界では投資の積極化が見られ、さらに1月の大雪の反動もあり、結果として前月比ではプラスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2026年2月では新年度における需要拡大を期待する声も多いが、さらなる物価高への懸念も根強く、前月比ではわずかに下落した。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2026年1月)
今回月ではコスト上昇の影響で利益縮小や取引先との価格調整の難航化が問題視されているようで、「非製造業」が前月比マイナスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「サービス関連」「製造業」のみ。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2026年2月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」。物価高の影響はポジティブ・ネガティブ双方確認でき、新年度に関しても需要拡大を期待する声と、新年度を迎えても値上げが続くため消費者マインドは低下していくとのネガティブな思いの声が交差している状態である。詳細項目では「サービス関連」「非製造業」以外で前月比プラスを示している。
新年度で心機一転の一方で物価高の継続懸念も
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・客単価が前年より5000円プラスとなった。値上げで1品単価が上がった影響もあるが、その価格に客が慣れてきている(衣料品専門店)。
・1月の大雪の反動から、今月は隣県からの来客数が多く、特に後半の3連休はゴールデンウィーク並みの集客となった(高級レストラン)。
・物価上昇の影響により節約志向が続いており、不要な支出を控える動きが一段と強まっている(美容室)。
・既存店の来客数減少が顕著である。物価高で、今までコンビニで気軽に購入していた物をドラッグストアなどで購入する客が増えている(コンビニ)。
■先行き
・新生活需要が高まるシーズンに入り、進学や就職による家電需要の伸びが期待される(家電量販店)。
・宿泊部門では桜やネモフィラなど、観光需要があり、料飲部門は歓送迎会や総会シーズンに入るため、景気はややよくなる(都市型ホテル)。
・中国からのインバウンドの減少を、国内旅行客の増加でカバーする状況が続いており、今後も同様の傾向が続くと予想される(高級レストラン)。
・4月以降も値上げは続くため、食料品や生活雑貨等の生活必需品以外は鈍化傾向が強くなることが予想される(その他専門店[酒])。
物価上昇がプラスに働いた面とマイナスに働いた面の双方を目にすることができる。また1月の大雪の反動という特需的な動きもある。コンビニからドラッグストアへの消費者シフトの動きの指摘は興味深い。
新年度の予想はポジティブなものとネガティブなものが揃っており、現状同様に多様な感はある。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・AI関連の投資が好調であり、特に東南アジアでの半導体関連の設備投資が盛んで勢いが衰えない(一般機械器具製造業)。
・引き合いはあるが、見積価格と受注者希望価格に差を感じる案件が続いており、取引業者との価格調整が難航している(建設業)。
■先行き
・新年度の受注は少しよくなる見通しである(金属製品製造業)。
・部材の値上げや労務費の上昇が続いている影響で利益が圧迫されており、改善するとは言い難い(電気機械器具製造業)。
コスト増大に頭を抱えている意見が多々ある一方で、好調な業態もあるようだ。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・求人数は引き続き同程度で推移しているが、求人背景が業務量の増加や事業拡大というよりも、退職や欠員に対する補充ができずにその分の求人が残っている企業が多い(人材派遣会社)。
■先行き
・企業の人手不足が慢性化している一方で、新規投資や採用拡大に踏み切れないケースが多い。求人を出しても、応募が限定的なことから、企業では採用難とコスト増加が進行しており、先行きの回復材料に乏しい。観光や季節需要で一時的な動きはみられるものの、地域経済全体を押し上げるような力強さはみられない(求人情報誌製作会社)。
人手不足は相変わらず深刻。給与をはじめとした労働条件における、雇用する側とされる側におけるミスマッチが多々生じているようだ。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できるたぐいのものではない。食料品や電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。昨今ではさらに、中東情勢も大きな足かせとなりそうだ。
景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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