物価高の影響懸念あるも持ち直しの動き…2025年11月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落
2025/12/08 14:00
内閣府は2025年12月8日付で2025年11月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落となる48.7を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で下落して50.3となったが、基準値の50.0を上回る状態は維持された。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「景気は、持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響などを懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和7年11月調査(令和7年12月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。
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現状は下落、先行きも下落
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2025年11月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは48.0。
→詳細項目は「小売関連」「サービス関連」「非製造業」の項目が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。
・先行き判断DIは前回月比でマイナス0.4ポイントの50.3。
→原数値では「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」が減少。原数値DIは48.8。
→詳細項目では全項目が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」「非製造業」。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2025年11月では季節商材の売れ行きが伸びた一方で、物価上昇による需要縮小、さらにはインフルエンザの流行による人流の低迷が足を引っ張り、結果として前月比ではマイナスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2025年11月では物価高への慣れや最低賃金の引き上げ、ガソリン暫定税率廃止への期待がある一方、中国問題や為替変動による輸入品高騰、企業のコスト削減に影響した求人減少、不動産の単価引き上げによる需要の不調懸念などがあり、前月比では下落した。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2025年11月)
昨今ではマイナス要因の筆頭としてロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響で生じている物価高の影響からか、詳細項目において「飲食関連」「住宅関連」「製造業」「雇用関連」が前月比マイナスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「サービス関連」「非製造業」のみ。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2025年11月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「住宅関連」「製造業」「雇用関連」以外。物価高が多方面で足を引っ張っており、特に食料品や燃料費の価格高騰が大きな影響を与えている。詳細項目では「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」「非製造業」で前月比プラスを示している。
インフル流行の影響と、価格引き上げによる需要低迷懸念と
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・販売価格を値上げしても販売量が落ちていない(一般小売店[精肉])。
・食品の値上げが一段落したこと、また、前年のように極端に気温が高い状態ではないことから季節商材が伸び、今月は販売数が増加している(スーパー)。
・11月に入っても物価の上昇が続き、高くて買えないという話をよく聞く。また、インフルエンザの流行による学年閉鎖や学級閉鎖で、商店街の人通りも減っている(一般レストラン)。
・熊の出没に関する問合せが多く、予約のキャンセルも若干出ている。物価高とあいまって直近の予約が鈍化している要因とみている(観光型ホテル)。
■先行き
・物価高にも慣れてきており、旅費は高額になるが客層によっては旅行需要も増えるとみられる(旅行代理店)。
・客の様子や話から、最低賃金引上げが消費に良い影響を及ぼすことが期待できる。また、政府の経済対策の効果が現れ始めるとみている(ゴルフ場)。
・現時点では、中国からの影響は受けていないが、今後の計画ではマイナスの影響として仮定せざるを得ない。3か月後に仮定と実態の比較検証を行う予定である(その他小売の動向を把握できる者[ショッピングセンター])。
・分譲マンション、賃貸マンション共に、分譲価格や賃料をこれまで以上に高額に設定しているため、需要が不調となる割合が高まる(住宅販売会社)。
販売価格を上げても販売量が落ちてこないとの話がある一方、高値に価格設定をすることで需要が落ち込むとの懸念もある。商品特性によりけりだろうが。また話題性のある出来事に関しては、インフルエンザや熊出没騒動が景況感において足を引っ張っている実情が確認できる。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・大型プロジェクトなど予定物件でフル稼働の状況が続いている。多少の発注時期の前後はあるが、順調である(建設業)。
・受注量、見積件数共に減少している。前年同期比でも減少傾向にある(電気機械器具製造業)。
■先行き
・ガソリン暫定税率廃止は、運輸業界に良い材料となる(輸送業)。
・為替変動の影響により海外からの原材料価格が高値で推移し、その高騰分を製品価格に転嫁できず利益が圧迫されるとみられる(食料品製造業)。
明暗がはっきり分かれる事例が記されている。ガソリン暫定税率廃止は少なくとも運送業界からは歓迎されているようだ。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・中小企業を中心に人手不足感が強い傾向は変わらない。業種により求人数の増減はあるものの、全体の傾向として大きな変化はみられない(民間職業紹介機関)。
■先行き
・新規求人数が減少傾向にある。企業からは人手不足という声がある一方、物価高の影響により様々なコスト削減を行っているという声がある(職業安定所)。
人手不足は相変わらず深刻だが、一方で人件費の上昇に頭を痛めている経営者も多そうだ。特に最低賃金の大幅引き上げは、求人の躊躇を後押しさせてしまう。人件費を単なるコスト以上のもので勘案できないのは問題なのだが。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できるたぐいのものではない。食料品や電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。
景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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