物価高の影響懸念あるも持ち直しの動き…2025年10月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇
2025/11/11 14:00
内閣府は2025年11月11日付で2025年10月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる49.1を示したが、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で上昇して53.1となり、基準値の50.0を上回ることとなった。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響などを懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和7年9月調査(令和7年11月11日公表):景気ウォッチャー調査】)。
スポンサードリンク
現状は上昇、先行きも上昇
調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。
2025年10月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。
→原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは48.5。
→詳細項目は「飲食関連」「住宅関連」以外の項目が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。
・先行き判断DIは前回月比でプラス4.6ポイントの53.1。
→原数値では「よくなる」「ややよくなる」が増加、「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは52.1。
→詳細項目では全項目が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は全項目。
冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2025年10月では大阪・関西万博の盛り上がりや、国内外問わずの消費者の動きの活性化、さらに急激な寒さの到来に合わせて冬物商品などの需要拡大が生じた。結果として前月比ではプラスの結果となった。
先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。
直近の2025年10月では最低賃金の引き上げや、株価の上昇による景況感底上げへの期待、IT系を中心とした需要拡大の見込みなどを受け、前月比では上昇した。
現状判断DI・先行き判断DIの実情
それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2025年10月)
昨今ではマイナス要因の筆頭としてロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響で生じている物価高があるが、消費拡大の動きを受け、詳細項目において「小売関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」が前月比プラスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。
続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2025年10月)
今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は全項目。物価高が多方面で足を引っ張っており、特に食料品や燃料費の価格高騰が大きな影響を与えているが、最低賃金の引き上げや株価の上昇の影響による消費の拡大、IT系を中心とした需要拡大への期待、インバウンド需要の活性化など、先行きを楽観できる要素は多い。詳細項目では全項目で前月比プラスを示している。
年末に向けた動きと、物価高へのさまざまな反応と
発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での総括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。
・大阪・関西万博の盛り上がりに合わせて、10月は来客数が前年よりも大きく伸びた。閉幕後の落ち込みを懸念していたが、前年比での伸び率は低下したものの、プラスの動きは維持しており、国内客、インバウンドともに売上は堅調である(百貨店)。
・最近急に寒くなり、ニットやコート等の高単価な商品が稼動し始めている。また、旅行や商戦需要も増えている(衣料品専門店)。
・好調だった予約が減少傾向にあり、来客数も昼夜共に減っている状況である。客との会話でも来店控えの傾向がうかがえる。10月からの各種値上げが影響していると考えられる(一般レストラン)。
・10月も中旬を過ぎ、本来なら暑さもなく過ごしやすい季節で絶好のゴルフシーズンである。しかし、急激な気温低下や天候不良が多く、思うようには来場者が増えてこない(ゴルフ場)。
■先行き
・最低賃金引上げもあり、年末年始に向けて少しでも景気が上向くことを期待したい(スーパー)。
・今後は株価の上昇が続くことで、更なる消費の増加が見込まれ、市場の活性化につながることが予想される(乗用車販売店)。
・送料の値上げなどがあり、贈答品が減少するとみられるため、やや悪い状況がしばらく続くと考える(一般小売店[精肉])。
・最低賃金の引上げ分や人件費の上昇分を吸収するには、商品の価格を上げるしかない。商品が値上がりすることで、客の節約志向が一層強まることになる(スーパー)。
大阪・関西万博の恩恵や冬に向けての気候の動きにのった冬物商品の活性化など、景気のよい話が多々見られる。他方、値上げや天候不順で客足が遠のき、売上が落ち込んでいるとの話もある。他方、株価の上昇や最低賃金の引き上げなど具体的な要因で消費が活性化するとの期待があれば、その最低賃金の引き上げでまわりまわって消費が減少するのではとの懸念も確認できる。
企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。
・受注に関しては順調である。他社の手持ち工事も多くあるとみている(建設業)。
・新築戸建て住宅の着工棟数について、前年を下回る状況が続いている。パネルヒーターの出荷台数もそれに比例して減少傾向で推移している(金属製品製造業)。
■先行き
・最先端の半導体向け電子材料薬品の需要増加は今後も継続する見込みである。年明け以降、更に増量が見込まれる(化学工業)。
・年末に向かい、特に冬物家電、こたつ、石油ヒーター、電気カーペットなどの暖房器具、白物家電、寝具、衣料などは前年並みの物量を確保予定である。しかし、円安による燃料価格の高騰やドライバー不足による車両確保のコスト高により、利益は薄くなりそうである(輸送業)。
日銀の政策金利の引き上げや改正建築基準法施行で、4月以降新設住宅戸数は大きく減少をしており、それが住宅に関連する備品の出荷にも影響しているとの言及が確認できる。先行きについては一部業界で来年以降も含めた盛況ぶりを予想する声があれば、コストの上昇で利益が圧迫されるとの声も見受けられる。
雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。
・企業の採用意欲に大きな変化はみられない。人手不足感はあるが、新規採用を積極的に拡大する動きは見られず、当社に対する求人数も横ばいである(人材派遣会社)。
■先行き
・製造業では受注量が増えており、観光サービス業界でも集客は順調であり人手不足は継続するが、景気としてはややよくなるとみられる(四国=求人情報誌)。
人手不足は相変わらず深刻だが、一方で人件費の上昇に頭を痛めている経営者も多そうだ。あるいは派遣ではなく正規雇用をしようとの動きなのか。最低賃金の引き上げもあり、人件費問題は今後しばらくは話題の中心となりそう。
多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。
世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。
リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。
さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できるたぐいのものではない。食料品や電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。
景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。
■関連記事:
【人手不足というけれど、原材料不足とどこが違うのだろう】
【原油先物(WTI)価格の推移(最新)】
【政府への要望、物価対策に景気対策(最新)】
【「税抜き価格表示」消費者の支持は2.3%のみ、一番人気は「税込価格・本体・消費税」の現行スタイル】
【24.3兆円、消費税率1%につき約2.4兆円の安定税収…消費税と税収の関係(最新)】
【電気代・ガス代の出費性向(家計調査報告(家計収支編))(最新)】
スポンサードリンク

最新情報をRSSで購読