2025年7月度外食産業売上プラス8.7%…44か月連続の前年比プラス
2025/08/25 15:00
日本フードサービス協会は2025年8月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2025年7月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス8.7%を示した。記録的な高温を示したことで冷たいメニューや、ビール類などが好評に推移し、夏休みの行楽需要も奏功した。他方、シニア層の客足はマイナスとなったとの記述も確認できる(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が234、店舗数は3万6700店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は増加、店舗数も増加している。
全業態すべてを合わせた2025年7月度売上状況は、前年同月比で108.7%となり、8.7%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で44か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日・土曜日は変わらず、売上の観点ではプラマイゼロ。気象環境では雨天日は東京・大阪ともに少なく、平均気温は東京は低く大阪は高い。客足への影響判断はややプラスといったところ。
新型コロナウイルス流行に関しての5類移行やインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これらが外食需要の高まりとともに売上増につながっている。今回月でも訪日外客需要は旺盛なままで、これも客足をけん引した。他方、「記録的な高温」の影響で冷え物が大きく動いたが、同時に高齢層を中心に客足を引っ張る形となった。結果として客数は全体では前年同月比でプラス4.4%を示した。一方で客単価はプラス4.0%となり、結果として総合売上はプラス8.7%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で53か月連続のプラス(プラス9.7%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「スパイシーな季節メニューや期間限定メニュー、コラボ商品が好調だったほか、冷たいドリンクの値引き販促などが好調」と説明されている。
なおマクドナルド単体の2025年7月における営業成績はプラス11.2%(売上、既存店、前年同月比)を示している。客数はプラス8.8%、客単価はプラス2.2%。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス0.7%、客単価はプラス9.3%となり、売上はプラス10.0%。麺類は客数プラス5.8%、客単価はプラス2.8%となり、売上はプラス8.7%。和風は「引き続き客数が弱かったものの、猛暑日の割引クーポンや新規投入した麺類メニューの人気が続いたほか、うなぎなどの季節メニューにも一定の集客があり」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス3.0%。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス4.2%、客単価はプラス3.2%、売上はプラス7.6%。「猛暑の影響は各社まちまちとなったが、かき氷などの季節メニューに各社力を入れたほか、地域別の販促を展開して集客したところもあり」との説明がある。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス3.5%、居酒屋の売上はプラス3.8%。部門全体では売上はプラス3.7%を示した。「ビール類などの販売好調が客単価を押し上げ」「猛暑で各社ビール類の販売が好調、客数も前月より改善傾向にあり」とある。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス7.0%、客単価はマイナス1.6%で売上はプラス5.3%を示した。「インバウンド需要の勢いは落ち着いたが、引き続きお得感のある平日ランチメニューが好評」との説明がある。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2025年7月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2025年7月)
猛暑が奏功で、行楽需要も活性化。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比でプラスを示している。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとはうって代わり、低迷感が否めない状態となった。中食に多分に客を奪われている感はあった。もっともこの数年でその苦境からは脱しているようにも見受けられる。
現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が展開している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。
新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続していた。しかし業界側では2024年7月発表分で「2019年同月比につきましては、新型コロナの5類移行から満1年が経過したため、2024年5月度を以て掲載を終了いたしました」とコロナ禍前との比較値を非公開とし、それが今回月も継続している。少なくとも数字の上では、状況は改善しているようだ。解説コメントにもそれを裏付ける文言が踊る。
次回月の2025年8月分では、今回月に続き行動制限などは無く、平均気温はほぼ全国的に高く、特に北海道と北日本・関東の太平洋側で非常に高い。降水量は北海道北部と日本海側、九州で多く、それ以外では少ない。客足はある程度遠のきを見せるかもしれないが、冷え物などが売れて客単価は上がるだろう。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、また人員数不足も深刻化しており、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
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