2025年3月度外食産業売上プラス7.0%…40か月連続の前年比プラス
2025/04/25 15:00
日本フードサービス協会は2025年4月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2025年3月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス7.0%を示した。月初の降雪で客足を引っ張られる場面もあったが、歓送迎会や春休みの家族需要が後押しした。インバウンド需要も売上に貢献した。他方、物価高騰を要因とすると思われる客足の遠のきも一部業態で見受けられた(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が222、店舗数は3万6405店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は増加、店舗数も増加している。
全業態すべてを合わせた2025年3月度売上状況は、前年同月比で107.0%となり、7.0%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で40か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は変わらず・土曜日も変わらずで、売上の観点ではプラスマイナスゼロ。気象環境では雨天日は東京・大阪ともに少なく、平均気温は東京は・大阪ともに高め。客足への影響判断はプラスと判断できる。
新型コロナウイルス流行に関しての5類移行やインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これらが外食需要の高まりとともに売上増につながっている。今回月でも訪日外客需要は旺盛なままで、これも客足をけん引した。また、年度末ということもあり、歓送迎会や春休みの家族需要も売上にはプラスに働いている。
結果として客数は全体では前年同月比でプラス2.5%を示した。一方で客単価はプラス4.4%となり、結果として総合売上はプラス7.0%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で49か月連続のプラス(プラス7.5%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「定番の季節商品や期間限定の新商品、値引きキャンペーンなどが好調」と説明されている。
なおマクドナルド単体の2025年3月における営業成績はプラス5.1%(売上、既存店、前年同月比)を示している。客数はプラス4.8%、客単価はプラス0.3%。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス0.8%、客単価はプラス10.0%となり、売上はプラス10.8%。麺類は客数プラス3.0%、客単価はプラス5.5%となり、売上はプラス8.7%。麺類は「春休みの家族需要と、割安感のある商品が消費者に支持」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス5.6%。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス2.8%、客単価はプラス4.1%、売上はプラス7.0%。「月初の降雪などが客足に影響したところもあったが、春休みや卒業シーズンで家族客のハレ需要が堅調、また低価格業態が引き続き好調」との説明がある。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラスマイナスゼロ%、居酒屋の売上はプラス1.3%。部門全体では売上はプラス0.8%を示した。「歓送迎会需要はそれなりにあったものの、法人を中心に大きめの宴会が戻りはじめた前年に比べて、今年は小規模宴会のほうが多く、月初の降雪で予約のキャンセルもあり、客数が減少」とある。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス6.4%、客単価はプラス0.5%で売上はプラス7.0%を示した。「花見シーズンと過去最高のインバウンドで、都心部を中心に需要が引き続き好調、また卒業シーズンと春休みが重なり、お得感のあるランチメニューが家族連れなどに好評」との説明がある。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2025年3月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2025年3月)
春休みの家族需要
インバウンドが奏功。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比でプラスを示している。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとはうって代わり、低迷感が否めない状態となった。中食に多分に客を奪われている感はあった。もっともこの数年でその苦境からは脱しているようにも見受けられる。
現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が展開している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。
新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続していた。しかし業界側では2024年7月発表分で「2019年同月比につきましては、新型コロナの5類移行から満1年が経過したため、2024年5月度を以て掲載を終了いたしました」とコロナ禍前との比較値を非公開とし、それが今回月も継続している。少なくとも数字の上では、状況は改善しているようだ。解説コメントにもそれを裏付ける文言が踊る。
次回月の2025年4月分では、今回月に続き行動制限などは無く、平均気温はほぼ全国的に高めで、特に東日本で高い。降水量は中部から東日本で多く、関東と西日本で少ない。客足はある程度伸びることだろう。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、また人員数不足も深刻化しており、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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