物価高への懸念は強く継続中…2025年1月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2025/02/10 14:00

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内閣府は2025年2月10日付で2025年1月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落となる48.6を示し、基準値の50.0を下回る状態は継続することとなった。先行き判断DIは前回月比で下落して48.0となり、基準値の50.0を下回る状態は継続することに。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、緩やかな回復が続くとみているものの、価格上昇の影響などに対する懸念がみられる」と示された。ちなみに2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【令和7年1月調査(令和7年2月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2025年1月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス0.4ポイントの48.6。
 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは45.5。
 →詳細項目は「サービス関連」「製造業」で上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス1.4ポイントの48.0。
 →原数値では「よくなる」「ややよくなる」「悪くなる」が増加、「変わらない」「やや悪くなる」が減少。原数値DIは47.9。
 →詳細項目は「飲食関連」「製造業」が上昇。基準値の50.0を超えている詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」。

冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が行われている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを作成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2025年1月では物価高騰の影響が強く出る形で、前月比ではマイナスの結果となった。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。

直近の2025年1月では現状判断同様に物価高騰への影響や、米国の新大統領就任に伴う関税の問題への懸念が強く、前月比では下落した。

現状判断DI・先行き判断DIの実情


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(〜2025年1月)
↑ 景気の現状判断DI(〜2025年1月)

昨今では人流増加のプラス影響が力強いものはあるが、マイナス要因の筆頭としてロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響で生じているコスト上昇や、それが主要因の物価高が景況感への大きな足かせとなり、今回月では多数の部門で前月比マイナスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「サービス関連」「非製造業」。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(〜2025年1月)
↑ 景気の先行き判断DI(〜2025年1月)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」。物価上昇が多方面で足を引っ張っているが、特に食料品や燃料費の価格高騰が大きな影響を与えている。

どこもかしこも物価高


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・インバウンド売上が好調を持続している。海外のブランド品や高級腕時計、化粧品がよく売れており、春節が近いことで、特に中国からの旅行者が増えている(百貨店)。
・1月は寒さが強まったことから、暖房商品の販売が好調で、来客数は前年比107%となり、来客数、客単価ともに前年を上回った。主要大型商品の売上も増加している(家電量販店)。
・野菜や卵などが高くなったという声が多い。98円均一セールなどの商品に魅力がなくなっていることから、客の買物かごの中身が減ってきている(スーパー)。
・新年の営業開始がいつもより遅かったため、開店以来最も悪い状態で、赤字である。客からはインフルエンザによる高熱で来店を控えていたという話や、中小企業の経営者から景気が悪くなっているという話を聞く。また、物価高で外出しづらくなっている客の様子もうかがえる(スナック)。

■先行き
・物価高により、ハレの日消費の後はリバウンドで節約傾向が続いてきたが、冬休み消費後のリバウンドは小さく収まり、物価高への慣れが感じ取れる。そうしたことから、2-3か月後の新生活、ゴールデンウィーク消費においてもリバウンド節約は少なく、月を通して安定した購買活動が期待できる(百貨店)。
・大阪・関西万博も開幕し、国内外から多数の客を迎える状況となるため、宿泊部門は今以上の売上が見込まれ、宿泊客によるレストランの利用も期待できる(都市型ホテル)。
・今年は、食料品、燃料費などの多くが値上げするとの予想が消費者に浸透しているため、財布のひもは固くなる一方である(衣料品専門店)。
建築資材が高騰しているため、物件の売値も比例して上がり、今後の売行きに影響が出ることが不安である(住宅販売会社)。

インフルエンザやインバウンド、大阪・関西万博といった具体的な固有名詞の事象による景況感の上下も見られるが、多くは物価高を起因とするもの。物価高に慣れてしまったのではないかとする意見すら出てきている。

企業動向では景気のよい話と悪い話の両方が出ている。

■現状
・国内建設投資は公共投資も民間投資も堅調に推移している。効率化や価格適正化に向けた動きも着実に進展している(その他サービス業[建設機械リース])。
・価格転嫁の話題が取り上げられる機会が増え、運賃値上げの気運が高まってきている感はあるが、実現には至っていない。燃料を始めとした資材価格の高騰が止まらないなか、人手不足が更なる状況悪化を招き、厳しい環境下にある(輸送業)。

■先行き
・食品業界においても、給与が5%以上増加する可能性が高くなった。また、原料費、燃料費、最低賃金の上昇を含む経費の増加に伴い、商品価格の引上げも確実に進んでいる。物価高に追い付く給与の引上げの機運が醸成されつつあるとみられる(食料品製造業)。
・米国向けの製品を多く輸出しており、大統領交代により関税の問題が起きることが予測されていることから、出荷量への影響を懸念している。また、国内においては賃上げの流れはあるものの、市場全体の景気は停滞しており、一般客向けの製品の販売が鈍い(一般機械器具製造業)。

投資が堅調、給与のアップなど頼もしい話もあるが、物価高や米国の大統領交代という不確定要素が足かせとなっているようだ。

雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。

■現状
・求職者が少ないほか、高い時給を求める傾向にあるため、マッチングに苦戦している(民間職業紹介機関)。

■先行き
・人手不足ではあるが、原材料、エネルギー、人件費などのコスト増加の影響で求人を控える企業もあるため、求人数の増加は見込めない(職業安定所)。

人材不足は相変わらず。その一方で、求職側と求人側のミスマッチがコスト面で生じている。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスの流行だが、感染症法上における5類感染症への移行によって、世間一般では沈静化に向かっているとの認識が強い。しかし現状では感染者数は沈静化と認識できるほどの減り方はしておらず、むしろ増加の傾向にあると表現してもよいのが実情。後遺症のリスクも含め、感染しないように十分な注意をしなければいけない状態に変わりはない。すでに世の中は「そうなってしまっている」、それにもかかわらず、その現実を認めたくない人が多すぎるのが実情ともいえる。

さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できる類のものではない。食料品や電気料金をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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