共働きか否かを問わず増加する夫の育児時間
2017/11/11 05:00
共働き世帯の増加と共に、注目を集めているのが夫の家事、特に育児への(さらなる)参加。夫側の就労上の事情も多々あるが、国際比較の上でも日本において夫の育児時間は短いとの指摘があり、妻の負担減のためにも夫に今まで以上の育児への参加を求める声が挙がっている。それでは実情として、夫の育児時間はどのような実情にあるのだろうか。総務省統計局が2017年7月14日以降順次結果を発表している2016年社会生活基本調査の結果を基に確認していくことにする(【平成28年社会生活基本調査】)。
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今調査の調査要綱は先行記事【ボランティア活動の実態】を参照のこと。
今調査では生活様式に関して「睡眠」「身の回りの用事」「食事」「通勤・通学」「仕事(収入を伴う仕事)」「学業(学生が学校の授業やそれに関連して行う学習活動)」「家事」「介護・看護」「育児」「買物」「移動(通勤・通学を除く)」「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「休養・くつろぎ」「学習・自己啓発・訓練」「趣味・娯楽」「スポーツ」「ボランティア活動・社会参加活動」「交際・付き合い」「受診・療養」「その他」の20に区分している。
今回はこの中で「家事関連」(「家事」「介護・看護」「育児」「買物」の合計)と、その中の1要素「育児」を単独でそれぞれスポットライトを当て、経年推移を確認していく。
まずは包括的な家事全般を意味する「家事関連」の時間に関し、夫婦それぞれにおける1日あたりの生活時間の変化を、共働きか夫有業・妻無業(妻が専業主婦、専業主婦世帯)かで区分した上で、その推移を見たのが次のグラフ。
↑ 共働きか否か別・生活時間の推移(妻)(家事関連)(一週全体、一日平均)(時間:分)(夫婦と子供の世帯)(1986-2016年)
↑ 働きか否か別・生活時間の推移(夫)(家事関連)(一週全体、一日平均)(時間:分)(夫婦と子供の世帯)(1986-2016年)
妻は「家事関連」では専業主婦世帯・共働き世帯共に微増の動きを示している。一方で夫は妻の就業状況に関わらず増加。時間数そのものは妻の数分の一でしかないが、夫は30年の間に共働きで3倍強、妻が専業主婦の夫では3倍近くに増加している。妻の家事を夫が肩代わりというよりは、家事全般に必要な時間が増え、その増加分のうち少なからずを夫が負担している感が強い。
「家事関連」の中でも特に多くの時間を必要とし、環境で大きく時間が変化する、そして夫婦間での負担が問題視されているのが「育児」。そこで「家事関連」のうち「育児」要素を抽出し、同じように経年変化を見たのが次のグラフ。
↑ 共働きか否か別・生活時間の推移(妻)(家事関連のうち育児)(一週全体、一日平均)(時間:分)(夫婦と子供の世帯)(1986-2016年)
↑ 共働きか否か別・生活時間の推移(夫)(家事関連のうち育児)(一週全体、一日平均)(時間:分)(夫婦と子供の世帯)(1986-2016年)
専業主婦を持つ夫はややイレギュラーな動きを示しているが、概して夫婦・共働きか否かを問わず、育児時間は1996年までは横ばい、今世紀に入ってからは漸増の動きを示している。伸び時間そのものでは妻は30年の間に専業58分・共働き37分と、夫をはるかに上回る伸び時間を示しているが、伸び率では夫の伸び具合が著しい。
一部グラフ化は略するがこの30年の間に、
・夫……家事関連増加、「家事」増加、「育児」増加
・妻……家事関連増加、「家事」減少、「育児」増加
●専業主婦世帯
・夫……家事関連増加、「家事」増加、「育児」増加
・妻……家事関連増加、「家事」減少、「育児」増加
のような動きが確認できる。つまり、夫が妻の家事関連を少しずつサポートするようになり、その分妻の「家事」を減らせたが、「育児」への手間が増えたため結局家事全体の時間が増えてしまう構造が見えてくる。
「育児」時間の増加そのものの理由は、今調査結果では何も語られていない。報告書では「育児時間は、共働きか否かにかかわらず,夫妻共に増加傾向となっている」とあるのみだ。単純に「子供を世話することの重要性」への認識が深まり、より一層時間をかけるようになったからかもしれない。
一方で夫婦以外に任せる機会が減った可能性も考えられる。【仕事を持ち乳幼児がいる母親、日中は誰に育児を任せる?】でも解説している通り、日中の保育を行う立ち位置の人・組織は父母以外に、祖父母や幼稚園・保育園などがある。核家族化の進行で祖父母に「育児」の一部を任せることが可能な人が減ったため、夫婦の負担が増えたと考えれば、道理は通るというものである。
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