2024年9月度外食産業売上プラス8.2%…34か月連続の前年比プラス
2024/10/25 15:00

日本フードサービス協会は2024年10月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2024年9月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス8.2%を示した。日どりや厳しい残暑、インバウンド需要が売上を後押しし、堅調さを維持することができた(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が215、店舗数は3万5717店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は減少、店舗数も減少している。
全業態すべてを合わせた2024年9月度売上状況は、前年同月比で108.2%となり、8.2%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で34か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は1日多く、土曜日は変わらないため、売上の観点ではプラス。気象環境では雨天日は東京は多く、大阪は少なく、平均気温は東京は低く、大阪は高く、客足への影響判断はプラマイゼロと判断できる。ただし、西日本の全域で残暑による高温が生じており、大きな影響を与えている。
新型コロナウイルス流行に関しての5類移行やインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これらが外食機運の高まりとともに売上増につながっている。今回月では円安による訪日外客需要は旺盛なままで、これが客足をけん引した。
結果として客数は全体では前年同月比でプラス4.0%を示した。一方で客単価はプラス4.0%となり、結果として総合売上はプラス8.2%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で43か月連続のプラス(プラス6.9%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「月見シーズンの定番メニューが各社で好評」と説明されている。
なおマクドナルド単体の2024年9月における営業成績はプラス2.8%(売上、既存店、前年同月比)を示している。客数はプラス0.2%、客単価はプラス2.7%。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス5.6%、客単価はプラス5.2%となり、売上はプラス11.0%。麺類は客数プラス2.4%、客単価はプラス8.2%となり、売上はプラス10.8%。麺類は「雨天が少なく人出が増え、サイドメニューの売れ行きも好調」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス5.1%。「CMが奏功し新商品が好調のうえ、地方にも波及した訪日外客需要」とある。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス8.3%、客単価はプラス2.9%、売上はプラス11.5%。洋風では「フェア商品やタレントを起用した秋のキャンペーンのCMなどで集客」との説明がある。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス4.2%、居酒屋の売上はプラス4.1%。部門全体では売上はプラス4.2%を示した。「初旬に台風の影響を受けるも、それ以降は2度の3連休(シルバーウィーク)でインバウンドなどの集客堅調、季節の新メニューの好評、引き続き好調なビールの売れ行き」とある。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス6.9%、客単価はマイナス1.2%で売上はプラス5.6%を示した。「集客は順調に増加、底堅い訪日外客需要とあいまって」との説明がある。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2024年9月分)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2024年9月)
人流活性
訪日外客需要強し。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比でプラスを示している。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとはうって代わり、低迷感が否めない状態となった。中食に多分に客を奪われている感はある。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続していた。しかし業界側では2024年7月発表分で「2019年同月比につきましては、新型コロナの5類移行から満1年が経過したため、2024年5月度を以て掲載を終了いたしました」とコロナ禍前との比較値を非公開とし、それが今回月も継続している。少なくとも数字の上では、状況は改善しているようだ゜。
次回月の2024年10月分では、今回月に続き行動制限などは無く、平均気温は平年より非常に高く、降水量は北海道と九州、中国で多い。冷え物は伸び、客足も期待できる(10月における「平年より非常に高い気温」は、外出しやすい気温と判断できる)。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、また人員数不足も深刻化しており、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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